31.拙速
「というわけで、義父さま、義母さま。シド……いや、白兎君を私にください!」
「……ええっ?!」
「~♪」
「いや、急過ぎるだろ……てか母さんは口笛噴くな。何でちょっと楽しそうなんだ」
目の前に居るのは突然、俺の両親に、俺が欲しいと直談判した姫様。まぁ、こうなる可能性については予想はしていたが……。
時は少し戻り。場所は吉弔谷家の書斎。俺達が家に着いた時には既に両親は帰宅して、心配そうに子供達の帰りを待っていた。
家までは、結局翠姉ちゃんも着いてきて、俺、愛狗姉、姫様、翠姉ちゃんの大変姦しいメンバーが一堂に会する事になった。
とりあえず、予定通り、今日起こった事の経緯について、うちの両親には姫様に説明させる事にした。それまでは良い。彼女の説明はおおむね分かり易いものだった。
前世の記憶があり、かつては異世界の小国で王女をしていた事。
その時に使っていた魔法が今でも仕えて、今回もその力で危機を脱した事。
今世では霊道家の嫡男、霊道同一の隠し子であるという事。
流石に、前世云々の話については両親も半信半疑であったが、それ以外は意外な程にあっさりと納得してくれた。よく唐突に電撃魔法が云々言い出して動じないな、と聞いた所、
「何、研究所でもっと変な物体ばっかり扱っているから、魔法を使える人間くらいで今更驚かん。何なら、前世が異世界の王女っていう話も、マルチバース仮説の一環として聞いた場合、大変興味深いものだ。笑わんよ」
との事である。ある意味肝が据わっているというか、何というか……。彼女が、あの霊道家の血を引いていて、我が家とは、僅かながら血縁があるというのも、幾らかプラスになったのかもしれない。
さて、両親への説明も済んで一安心、といった所で、前述の爆弾発言を姫様は落として来た。そう言えば、俺との因縁は話していなかったな。
「彼は、私と前世で恋仲だったのです。魂に刻まれた感覚で分かるのです!」
「ええ……マジか。愛狗ちゃん、翠に続いて3人目かよ……お白に惚れた奴」
「モテモテね。学生時代のご主人様よりも、モテてるわよ。今の白」
「姫様……このタイミングで両親にカミングアウトするか」
「このタイミングじゃないと、言いそびれそうだからね。孫子に曰く、兵は拙速を尊ぶ、だ。戦争も片思いも長引かせて良い事は一つもない。ダラダラしてても仕方ないし一気に勝負を……」
「「ふざけるな!!」」
それまで黙って様子を見ていた愛狗姉と翠姉ちゃんが、声を揃えて言う。
「何で抜け駆けしようとするかなぁ。白ちゃんは私のものだよ? 同日生まれの義きょうだいとか、実質夫婦みたいなもんだよ?」
「のぅ白兎ぉ。儂は愛人になっても良い。じゃが、それはあくまで正室が愛狗ちゃんの場合じゃ。こんなぽっと出の奴の後塵を拝するのは嫌なんじゃが」
「お白、先客二人はこう言っているが……」
俺はあくまで、自分の主張は変えない。
「……俺は三人とも手ごめにして、ハーレムを作る!」
「お白……昨日まで愛狗ちゃんと翠の三角関係で悩んで無かったか……?」
「開き直る事にしたんだよ。もう。誰とくっついても禍根になりそうだし。惚れられた責任取って全員俺の嫁にする。親父、うちは少子化とは無縁になるから安心してくれ」
「冷静に見えて、お白が一番暴走してるんだなぁ。あと、悪い事は言わない。学生の身で妊娠出産は本当に止めておけ」
俺達の顔を見比べる両親。俺を含め、全員引く気は無さそうだ。
「……稲。とりあえず、静観が正解なのかねぇ?」
「まあ、誰の肩持っても余計揉めるだろうし。特にご主人様は下手に恋愛絡みで説教すると特大ブーメランになって返ってくるからねぇ……」
「本当にヤバい状態になるまで下手に首を突っ込まない方が、かえって良いのかねぇ……」
恋愛関係の介入はギリギリまでしない。というのがうちの両親の方針という事だろう。つまり、もう高校生なんだから恋愛トラブルなんか当人同士で折り合いをつけろ、という事だ。突き放す様だが一理はある。




