3.我が家の両親は、子供の教育に大変よろしく無い
着替えを終えた俺は、愛狗姉を伴って朝食の席にいる。
目の前では、俺の両親が抱きつきながら口移しでお互いに食事を与え合っている。どう見ても異様な光景なんだが、俺達にとっては最早見慣れた光景で、ツッコミすら入れない。
我が両親、吉弔谷沖と稲。毎朝ラブラブ……というより、ある意味、おぞましい光景を見せつけてくるバカップルである。
なんでこんなにベタベタしているかというと、なんでも、二人は幼馴染同士で、なんやかんやあって恋仲になったのだが、ある時、とある会社の社長が、自分の愛人にならないかと母さんを誘った事があるらしい。
なんだかんだ、母さんは美人だし、若い頃は相当な美少女だったろう。ミュージシャン志望だったから、支援もしてやろう。なんて餌もチラつかされて少し、グラッとはきたらしい。
その時の親父ときたら、怒りと嫉妬心が大爆発。
曰く、「少しでも迷っていた事に完全に頭にきちまって……ちょっと監禁して、俺にがっつり依存する様に洗脳と調教……いや、再教育をした」そうで、それ以来、ずっとこんな感じらしい。いやー、間違いなく義姉の歪みっぷりは父の影響もあるだろう。
抱きつくだけに飽き足らず、親父は母さんの尻を揉み始める。母さんも母さんで、うっとりしながらそれを受け入れている。勘弁してくれ。何が悲しくて朝から両親の情事見せつけられなきゃいかんのだ。
「駄目ぇ、ご主人様。子供達が見てるのにぃ……」
本当だよ。勘弁してくれよ、母親が父親をご主人様呼びしてるとか。教育に悪いとかいう次元じゃない。
「お母さん達、本当に仲が良いよね」
「TPOは弁えて欲しいけどな」
「私達もこんな風なラブラブ夫婦になりたいね」
「子供の前で母親に痴漢する父親にはなりたくないぞ、俺」
…………とはいえ、こんなのでも、良い所も沢山あるにはあるんだよ? この父母。優先順位がお互いのパートナー優先になりがちなだけで。押しつけられた愛狗姉もきっちり育て上げたくらいだし。
「時にお白、愛狗ちゃん。勉強や学校生活で悩みは無いか?」
「いや、親父も、この状況でその質問してくるのかよ……」
母さんの尻をなで回しながら、話しかけてくる親父。いつも唐突なんだよ、あんたは。
「別に特に変わった事は無いかな」
「ああ。平和なもんだ。いじめも授業で躓いている所も無い」
「そりゃ良かった」
ニコニコとしながら、親父は満足げに頷いた。
一方、点いているテレビから流れるニュースからは、連日世間を騒がせている、とある報道が流れている。
曰く、未知の新種の花が、この飛輝鐘市で一斉に開花した。毒花として知られるトリカブトの数倍の強い毒性を持つ、まったく新種の属に所属する植物で、毒は皮膚からも吸収されるタイプ故、見かけても絶対に触らない様に呼びかけている。
「強いて言えば、この花の件かな。これも妙な話だ。今まで発見されてない新種の毒花が、この土地だけで一斉に開花するなんて。うちの学校でも見かける」
俺は味噌汁を飲みながら、そう論評する。
その花は、茄子の花に似た銀色の花で、大きさはタンポポくらい。雑草のワルナスビにしては、異様な輝きをしている銀色の花びらがおかしい。こんな花は俺も見た事が無い。
「何かの呪いなんじゃない? よくある話じゃない。非業の死を遂げた人の怨念が具現化して……なんて」
「おいおい、今は科学の時代だぜ? 無人戦闘機が空を飛び、人工知能が小説や絵を描く時代だ。怨念のせいで花が咲くなんて事があるかよ」
「鬼太◯の六期辺りにそんな話があったじゃん。戦地で亡くなった英霊が残った思いを伝える為に……みたいな話」
「あの回は俺も好きだけど、ありゃあフィクションだからなぁ……ま、あれが何なのか調べるのは植物学者の仕事だ」
そうあっさりと言うと、俺は味噌汁を飲みきった。




