25.報連相は大事
「という訳で、俺はハーレムエンドを目指す事にする! 俺は今日から女たらしのクズ兎になるぞ!!」
「「は?」」
朝からバチバチしていた愛狗姉と大邦浜さん、もとい姫様が声を揃えて困惑した様な声を上げた。
時は昼休み。授業を終え、愛狗姉に連れられて屋上庭園で昼食をとっていた俺達。そこへ現れたのが大邦浜さんだった。
彼女は俺達をイチャコラさせまいと、俺達の間に入って、自分の作ってきた弁当を食べさせようとしてくる。それを阻止せんとする愛狗姉と、朝ぶりにバチバチしていたわけだが、その修羅場を一時停止させるほど、俺の爆弾発言は衝撃的だったらしい。
動作を一時停止した状態で、俺の事を見つめる二人。
「いいか、俺は今日からハーレム系主人公にイメチェンする!」
「「いやいやいや……」」
そのまま声を合わせて困惑の色を露わにする二人。動作が被っている辺り、思考回路自体は二人とも似ているのかもしれない。
「だってさ、この三人から好意を向けられている現状、誰を選んでも角が立つじゃん。この際、三人まとめて俺が幸せにしようって……」
「流石に思考がかっ飛びすぎじゃない? 見た目が美少女の男の娘がしちゃいけない発言してるよ?」
「どのルートに入っても刺されるのが目に見えてるんだからこうするしかあるまい!」
「シドは少し錯乱してるみたいだね……」
流石の大邦浜さんも、俺に弁当の卵焼きを食べさせながら困惑していた。
「という訳で二人とも仲良くして欲しい。四人で爛れた関係になるんだ!」
「嫌だよ!こんな前世がどうとか言ってる痛々しい女と仲良くするの!」
「私だって、さも自分がシドの妻ですって顔してる奴とハーレムとか無理なんだけど……」
そう言ってにらみ合う二人。視線の間で火花が散っているのを幻視する。
「ハーレムというのが抵抗あるならこう言い換えよう。カルトの教祖と信者……」
「デリケートな話題をネタにするのは止めて、白ちゃん」
良い例えだと思ったんだが……。
「ともかく、俺はもう開き直る事にする。愛狗姉も、かぐや姫も、翠姉ちゃんもまとめてメロメロにしてやるってんだよ!」
「本人の前で言うかね、普通……」
「他人の好意に全く気付かない受動的な朴念仁系ハーレム主人公より、積極的に女の子を食らいにいく漢らしい肉食系男子の方が格好良くない?」
「そこは個人の好みによると思うけど……可愛い系の兎男子が肉食とはこれいかに……」
「あんまり男らしいむさ苦しい男は趣味じゃないんだが……」
呆れつつ、溜息をつく愛狗姉と姫様。
「どうする? 白ちゃん、こんな事言ってるけど」
「どうするって言われても、ねぇ……」
ハイライトの無い目で見つめ合う二人。どう見ても、親愛の情は見えない。
「「…………」」
そのまま怒りを込めた瞳でこちらを見る二人。何も言わないのが怖い。まぁ、そうなるわな。
「とりあえずハーレム云々はともかく、二人とも、これも何かの縁だ。もう少し仲良くして欲しい。和を以て貴しとなす、だ」
「生憎、私は聖徳太子ほど聖人じゃないの!」
「はは。義姉を称する事実上の他人殿、知ってるかい? 今は聖徳太子じゃなくて、厩戸皇子の表記が一般的だ。これ、日本史の世界じゃ常識なんですけど?」
「……いちいちマウント取ってくるじゃん」
……俺を挟んでバチバチし合うのを止めさせるには、まだかかりそうだ。
「む?」
そんな風な修羅場空間の中にいる俺だが、何と言うか、野生的な動物的直感で、この屋上の空間に違和感を感じた。
目の前の修羅場よりも、更に恐ろしい殺気を感じ取り、思わず警戒心を露わにする。
「ギャアアア!」
その時である。屋上の一角、俺達が座るベンチから少し離れた位置から、男子生徒の悲鳴が響いた。




