22.行動力のある高貴な人は厄介だというお話
「まず、マルチバースって概念を知っているかな?」
「この世界以外にも、並行して色々な世界が存在するって考え方、だよな」
「そう。その並行世界のうちの1つ。そこで、私はお姫様だったんだ」
「悪役令嬢ってやつ? 小説を書いて文筆家になろうにでも投稿したらウケるんじゃない?」
そう茶化している愛狗姉を無視して、大邦浜さんは話を続ける。
「その世界は、いわゆる剣と魔法の世界でね。一言で言うならファンタジーRPG的な世界観と言うか……ただ、科学は一部でこっちの世界よりも発展していてね。このマルチバース説も証明されていた」
それから彼女は、その世界で観測されたという、いくつもの世界の事を話した。同じくファンタジーな世界なのに、ジェット戦闘機が飛び交う世界なんてものもあるらしい。なんというか、狐につままれた様な気分になってしまう。
「私と白兎、いやシドは元々、その世界に生きていたんだよ」
「色々突っ込みたい事はあるけど、要は俺と大邦浜さんはそこの異世界ワールドの住民だったと……?」
「そういう事。私は元々、小国、レオイ王国の姫様。シドは私に仕える従者だったんだ!」
「唐突に変な設定が生えてきた」
「設定とか言うなよ」
そして、不満げな大邦浜さんを、可哀想なものを見る目で見る愛狗姉。
「ちょっと、聞きました? 白ちゃん。前世がどうとか、痛々しい発言して。この人メンヘラですよメンヘラ」
「本当に失礼なやつだな。このぽっと出の義姉。まあ良い。話の続きといこう」
そう言うと、何事もなかった様に彼女は話を続けた。
「シドと私はかつて幼馴染同士でね。私の乳母がシドの実の母って事もあって、昔から仲良くはしてた」
「乳きょうだいってやつか」
「そういう事。それで、そんな近くにいると必然的に相手を意識してしまってね。それに今の白兎にも劣らぬ程、彼は美形で。身分差はあったが、私から誘って恋仲になってしまった」
「この手のやんごとなき身分の方って、大体親の方が結婚相手決めると思うんだけど……」
そう、愛狗姉が疑問を口にする。こういう異世界恋愛ものって、王族には大体許婚とかがいると思うんだが。
「うむ。当然、うちの親父は私達の仲を引き裂こうとした。だから、私がクーデターを起こして国を乗っ取った!」
「「えぇ……」」
「ついでに許婚は国内の貴族のボンボンだったんだが、普通に性格が終わってた上、仮想敵国と内通して機密を売ったり、密貿易をしてたりしたから、権力掌握して早々、一族諸共粛清してやった。血の大粛清は独裁者の特権だよね」
「「えぇ……」」
意外におっかないタイプだぞ。この子。
「シドは公私ともに、私を支えてくれてね。ベッドの上での相性もバツグン。ドMな私の性癖を理解して、沢山、変態的な行為にも付き合ってくれてね。立場としては私が上なんだけど、プライベートでの私は完全にあの人の雌奴隷……。自分の従者をご主人様呼びするなんて、倒錯的過ぎてゾクゾクするじゃないか」
そう言いながら頬を染める大邦浜さん。
ご主人様呼びはそういう事か……。母さんといい、俺の周囲の人はどうしてこう……やべー性癖持ちが多いのか……。
「そんなこんなでクーデターは起こしたものの、ある程度、私達は平和に過ごしていたんだが、日常の終わりは突然やってくるもの。ある日、平和は脆くも崩れ去った。仮想敵国だった野蛮な隣国、ラノダコール王国に攻め込まれ、国は滅亡の危機に陥った」
「…………どこの世界も変わらないんだな。人間の愚かさってのは」
この国は現在平穏のうちにあるとはいえ、世界に目を向ければ、現在も至る所で凄惨な争いが続いている。異世界でも、それは変わらないと思うと辟易した。
「彼らと長年敵対関係にあったノスレプ共和国と同盟を結んだり、国境沿いの土地を巡って争いになり、謀略でその土地を掠めとった事をはじめ、数多の嫌がらせや挑発をしたりくらいなのに、酷いよな」
「……それはそっちも悪くないか?」
ファンタジーな世界なのに、ジェット戦闘機が飛び交う世界=拙作「嫁いだ先の旦那様にすでに3人もお嫁さんがいますが、私は元気です!」の世界。よかったらそっちも読んでね




