18.両親元気で留守が良い
「儂は宇宙世〇派なんじゃ。運命ではなく、ms〇glooが見たいのぅ」
「叔母様、人の家に上がりこんだ挙句、さらに我々のイチャイチャタイムまで邪魔した上、図々し過ぎやしませんか? 私達は運命を見てるんですよ! 次回はデステ〇ニー初登場回なんです!」
「嫌じゃ嫌じゃ! 儂はヅ〇やゼーゴッ〇の活躍が見たいんじゃ!」
「まーた渋いのを見たがりやがりますね……」
「あれにはロマンが詰まっているからのぅ」
「ロマンっていうか、公国のびっくりドッキリメカというか……」
とまぁその後、愛狗姉と翠姉ちゃんとが、流すアニメを巡ってまたバチバチしたり、なんやかんだでビルド〇ィターズを見る事で妥協したりで時間は過ぎていった。
そんなこんなで、両親も帰ってきて、夕食の時間になる。サバの焼き魚と味噌汁にサラダという、極めてオーソドックスなメニューだ。親父も協力して、二人とも阿吽の呼吸で帰宅後パパっと作ってしまう。二人とも、この辺りの相性も良いのだ。
「翠ちゃん。今日は急に呼び出してごめんなさいね。アルバイトとか、あったんじゃない?」
母さんは、そう年の離れた妹に詫びた。
「いや、今日はどちらにせよフリーだったのじゃ。それに姉さまの料理の為なら、こちらの予定などいくらでも合わせる」
母さんの料理を食べられた事で、翠姉ちゃんは上機嫌だった。親父の事は時折、嫉妬を込めた瞳で見るし、親父も親父で姉ちゃんに見せつける様に、母さんにキスしたり、身体をまさぐったりするが、この辺りもいつもの事である。
妹と旦那から溺愛されて、母さんも大概魔性の女だよな。そんな母さんは、改まった口調で言葉を発した。
「翠ちゃん。一つお願いがあるわ」
「なんじゃ? 大体の事は協力出来るが」
「実はね……」
母さんが述べた事は中々に衝撃的だった。
「「「東京に転勤?!」」」
「ええ。それも離島、かの硫黄島のそばの無人島に作られた施設に。ご主人様と一緒にね」
親父と母さんは、一緒の所に勤めている。親戚が経営する、会社というか研究所というか。なんか、よくわからない事をしている謎の組織で禄を食んでいる。なんだかんだ二人ともインテリなのである。
イメージ的には某不思議なものを確保、収集、保護する財団と、コロニーメンデ〇を足して2で割ったような、結構マッドな組織だ。もっと知名度があったら陰謀論の黒幕になってそう。あれ? この二人、死亡フラグ立ってない?
そんな研究者(?)の両親から、理数系がからっきしな俺が生まれたのも遺伝子の神秘だが、とにもかくにも、この度、二人そろって辞令が出て、東京の離島の研究所に異動する事になったらしい。
「で、だ。高校で転校となると、再試験やらなんやかんやで、地味に面倒くさい。というか、そもそも施設以外にない無人島だから、学校なんてない」
「それに、異動といっても、一時的なものでね。半年とか一年で、割とすぐに帰ってこれそうなのよ」
「という訳で、俺と稲の二人で離島に行き、お前達はここで、引き続き生活してもらうという形にしたいと思っているんだ。もう二人とも高校生だし、ある程度、家事も教えている。二人で力を合わせて生活して欲しい。勿論、生活費は出す」
これはこれは。
ライトノベルや恋愛ゲームにありがちな展開になってきた。両親元気で留守が良いというか、まさに、そういう感じの状況になっている。
助兵衛なゲームとかだったら、部屋に女の子を連れ込む展開とかあるんだろう。
問題は……。
「ハァハァハァハァ」
「じゅるり……」
可愛い女の子とフラグを立てる前に、既に狼と、鮫の二大捕食者が、か弱い白兎を狙っているという事だ。両親と言う最後のストッパーが消えたら、彼女達、いよいよ歯止めが効かなくなるという事は誰の目にも明らかだ。
……なんなら、俺の方が先に暴発してしまう可能性もある。
ヤバい、もうすでに二人の脳内で、俺はあられもない姿にされているに違いない。