14.クロス・ザ・ルビコン
「……一度、止めようか」
愛狗姉は、テレビのリモコンを取って、一時停止ボタンを押そうとする。
「待って、愛狗姉。次回はディスティ◯ー登場回だよ?」
「待たない。私はさっさと白兎ちゃんに抱いて欲しいの! 一線超えて欲しいの! ルビコン河を渡って欲しいの! これがついてると、二人ともそっちに意識が行っちゃうでしょ!」
そう言って、愛狗姉は一時停止ボタンを押した。もうテレビの内容で意識をそらすのは無理そうだ。
「はは。ルビコン作戦ってか?」
「まだクリスマスには早いけどね。……もう、私も覚悟決めたから。どんなに嫌がっても、私から白ちゃんに酷い事するから!」
そう言うと彼女は、無理矢理俺に口づけをしてきた。
「〜!」
しかも、舌同士を絡め合う、えぐいやつである。あ、これ駄目だ。俺の中で理性が溶ける音がする。目の前の少女を穢したいという欲望で、頭の中が一杯になる。
げに恐ろしきは薬の力。俺はしょっちゅう愛狗姉に盛られて訓練されているから良いが、画面の前の読者の皆は、薬物乱用はしちゃ駄目だぞ!
「……」
「きゃ!?」
俺は無理矢理、愛狗姉を押し倒すと。今度は俺の方から口づけをした。
「今日は俺の欲望を全て受け止めてもらうから。愛狗姉が悪いんだからな、どんだけ泣き叫ぼうが、止めてやらないからな」
「……あはっ! 白ちゃん、ついに本気になってくれたぁ」
俺は一度、愛狗姉から離れると、結束バンド……ロックバンドの方じゃ無いよ? それで、愛狗姉の手首と両足を縛って拘束し、タオルで猿ぐつわをすると、改めて覆いかぶさる。
「逃げるなよ? どんなに泣き叫んでも、もう止めてやらないからな? 」
「〜〜〜!(あぁん♡強引な白ちゃんも素敵!)」
「愛狗姉が悪いんだよ? 愛狗姉が。愛狗姉があんな安い挑発してくるから!」
完全に暴走状態に入っている俺。もう、頭の中にあるのは、この目の前の無防備な少女を、ぐちゃぐちゃに汚して、ぶっ壊したいという黒い欲望だけだった。
続きはノクターンで!
と、フフフ……S○X! な展開になると多くの人は思っただろう。
さて、服を剥ぎ取ろうとしたら、タイミングよく玄関のチャイムが鳴った。
「……誰だよ? こんな時に」
初めは居留守を使おうとした。だが、何度も鳴らされて、流石にチャイムと連動したモニターを確認に行く。
「?!」
そこに立っていたのは、驚いた事に、翠姉ちゃんだった。そして、彼女がこの家の合鍵を持っている事が、すぐに頭に浮かんだ。
まずい。流石にこの状況はまずい。急速に頭が覚醒する。
冷静に他人から見て、この状況は、俺が愛狗姉に強姦を働こうとしている直前の状況である。当然、翠姉ちゃんから両親には伝わるだろうし、そうなれば、「うちの娘を傷物にした責任、取ってもらおうか?」という話になる。うちの両親は、愛狗姉は実の娘として扱っているのだ。相手が実の息子だろうが、やらかした責任を取らせようとするだろう。
いや、別にそれ自体は良いけど、両親との関係がギスギスするのは嫌じゃん?
ここにきて、俺の頭は急速に冷静になった。俺は無言でハサミを取ると、愛狗姉の結束バンドを切った。それから猿ぐつわを外すと、テレビの一時停止を解除した。
「は? え? 何で何で? 今明らかに致す流れだったじゃん」
「いいから、ソファに座って!」
俺がそれらの処置を終えてすぐに、翠姉ちゃんが、合鍵でうちの玄関を開けて入ってくる。
「甥っ子姪っ子よ、翠姉ちゃんの登場じゃぞ〜。……なんじゃ、二人とも息を切らして」
「ははは……」
さも、自分の家の様な顔で上がり込んできた翠姉ちゃんは、俺達を怪訝な顔で眺めた。