打ちっぱなしのあいつ
日本を代表する建築家にささぐ。
私の憧れはコンクリート打ちっぱなし
安藤忠雄のコンクリート打ちっぱなし
脱型は緊張の瞬間やで〜
型枠の跡はそれも味やがな
コンクリートは一見味気ないけれど
打ちっぱなしはモダンな意匠を魅せる
私の憧れはコンクリート打ちっぱなし
見た目がクールなコンクリート打ちっぱなし
あんたにはもったいないオシャレやろ〜
その代わり住みにくいで 我慢やで
コンクリートは耐火や防音に優れるが
打ちっぱなしは安藤忠雄の芸術で哲学だ
私の憧れはコンクリート打ちっぱなし
「住吉の長屋」のコンクリート打ちっぱなし
狭い敷地に切り取った箱やで〜
中庭からしか光が入らへんがな
コンクリートの長屋に住人は戸惑った
打ちっぱなしの長屋は彼を有名にした
私の夢はコンクリート打ちっぱなし
海と空と橋を見るコンクリート打ちっぱなし
四階に上がるときは息が切れるな〜
でもその分景色は最高やねん
コンクリートで海辺の狭い住居だけど
打ちっぱなしの窓から海に飛び込めそうだ
私の悩みはコンクリート打ちっぱなし
ひび割れや結露が気になる打ちっぱなし
冬は寒くて夏は暑いのが辛いな〜
でもそれもコンクリートの味やねん
コンクリートは多少の不便はあれど
打ちっぱなしは補って余りある芸術だ
私の感動は「光の教会」の打ちっぱなし
十字架の光が差し込む打ちっぱなし
壁に切られた十字架は神秘的やな〜
光と影の演出は芸術やねん
コンクリートは彼らしく生きる素材
打ちっぱなしは彼らしく生きる姿勢
この詩は、建築家・安藤忠雄さんの作品や思想に触発されて書いたものです。
以下、本作の注釈です。興味がありましたらでどうぞ。
*コンクリートやセメントのメカニズムは作者の推測を含みます。
注1 コンクリート打ちっぱなし: コンクリートを型枠に流し込む工程を「打設(打つ)」といい、そのコンクリートが固まった後、型枠を外してそのままの状態を壁として使用することを「コンクリート打ちっぱなし」と呼びます。コンクリート壁なので、耐火性、防音性があります。何よりも、コンクリート打ちっぱなしの素地のもつ外観の意匠性が素晴らしいです。
*外観の意匠性と住みやすさは別のようですが。
注2 コンクリート: 骨材(砂利、砂)と結合剤セメントと水を混ぜたものです。セメントは、主原料である石灰石と酸化ケイ素、酸化アルミニウムなどを焼結させたものを粉砕した粉体です。水とともに、コンクリートの骨材(砂利)の隙間に侵入します。最初はドロドロで、所定の型に流し込むことができます。セメントである石灰石は水と反応して硬い水和物をつくり、時間とともにコンクリート全体が固まります。コンクリートの型を外すタイミングは緊張の瞬間だと思います。簡単に描きましたが、難しい工程をミスなくこなさなくてはなりません。本文で、多少のひび割れは味、と書きましたが、施工者は一切ひび割れのないように気を配ります。
注2' セメント: 石灰石と各種酸化物を焼結して粉砕した粉体です。主に、ケイ酸三カルシウム、ケイ酸二カルシウム、アルミ酸カルシウム、鉄アルミン酸四カルシウムからなります。これを水に溶かすと水酸化カルシウム(消石灰)と各種水和酸化物ができます。どちらも水酸基OHを有しているので、互いに固く結合します。各種水和酸化物は、強度に効果のあるもの、硬化速度を早めたり遅めたりするものがあります。セメントと水が硬化反応して、砂や砂利が固まります。用途(施工条件、施工サイズなど)によって成分調整すると推測します。
*セメント+水+砂+砂利=コンクリート
セメント+水+砂=モルタル
という感覚のようです。
注3 安藤忠雄: 日本を代表する建築家であり、コンクリート打ちっぱなしで、数々の名作を創作しました。本作の本文の関西弁は彼を意識しました。面白い方である反面、仕事にはストイックであり、自身の担当の設計だけでなく、現場に足を運び施工者に、建築物のコンセプトの理解と高い完成度を求めました。芸術性ばかりを重視していると思われがちですが、彼なりに居住性にも気を使っています。
建築には、建築家や施主や施工者や利用者など、多くの人々の物語や感情や思い出が詰まっていると思います。
お読みいただきありがとうございました。