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反撃

宴会の出来事。

俺様はいつもの様に酒を呑んで宴会を盛り上げていた。でも今日は気絶しているロウとその娘がいた。でもロウのことだ、自分が父親なんて明かしてないんだろう。こいつは絶対娘を地上に帰す。さぁて、俺様は止める側か、止められる側か、どっちが一番楽しいかねぇ。止める側ならロウを倒したあとは平和な日常。止められる側ならロウと組んであいつらとやり合うのが楽しいが、勝てば閻魔が来る可能性がある。仮に負ければ俺様は罰を受けることになるだろう。だが、ここは地底。やることなんて限られている。宴会なんて年中やるし、飽きてくる。止められる側になれば、楽しいに決まっている。ロウと組めば本気で暴れられる。あわよくば閻魔と闘える可能性もあるわけだ。鬼は正直者。でもロウと俺様の為、裏切者になってやろう。これが最初で最後の大嘘だ。

「あ、あの」

「んあ?」

突然、娘が話しかけてきた。手には人狼族に伝わるナイフ。

「このナイフ、あの人狼のやつなんですけど、返しておいてもらっていいですか」

「本人に渡せばいいだろ?」

「いや、なんか、ナイフで刺しちゃってビビってるから返したんだって思われたら腹立つんで」

「はっはっはっ、そうか。」

「持ってても持ってなくても私は弱いってよくわかったので。これからは筋肉でもつけようかな~って」

「いいねぇお前さん、鬼は正直者とちゃんと前向きなのが好きだ。正直者で勇気のある者に心を開く。ここのやつらはそういうのが多い」

こうして預かったのがロウに今投げ渡したナイフだった。




「ロウ、それはお前の娘から預かったものだ」

「咲那が?!」

「おいらを」

「俺を」

「「無視するなぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」」

金熊童子が俺に襲いかかり、星熊童子が酒呑童子様に襲いかかる。

回復の薬を飲んだとはいえ、俺の体力も限界に近い。酒呑童子様は巨大化するために妖力を使うため、今は力だけで星熊童子を相手にしている。もう少しの辛抱だ、もう少し耐えれば俺たちが勝つ!!

「金熊童子、お前、ほんとに鬼か?弱すぎないか?」

怒りに身を任せた攻撃程、隙ができやすい。だから俺は挑発をしてやった。

「・・・金熊童子、挑発に乗ってはいけません」

倒れた茨木童子が金熊童子に注意するが、それが届くことはなく、金熊童子は怒り狂った。

「おいらが弱い?ふざけるなよ、人狼ごときが。お前を殺すのはおいらだ!!」

金熊童子が攻撃をしかけてくるが、隙が多くなっているから怖くなどない。できた隙を見逃さず、しっかりナイフで金熊童子の身体を刻む。

「なんでだ!なんで攻撃が当たらねぇんだ!」

自分が強いと思い込んでいる相手程、弱いやつに一発でもやられたら、ムキになって良い動きができなくなる。しかも弱いやつにやられればやられる程、熱くなって隙が生まれる。

これが弱いやつが強い相手に勝つ闘い方だ。

「お前が雑魚だから当たらねぇんだよ、金熊童子!」

「黙れぇぇぇ!そのナイフへし折ってやる!」

ナイフを奪われそうになり、俺は後ろに下がって距離をとる。

「ロウ、よくやった。あとは俺様にまかせろ!」

酒呑童子様は星熊童子と格闘しながら「巨」「化」「鬼」「地」「前」と唱えた。

すると、みるみるうちに酒呑童子様は大きくなっていく。普段から鬼はデカイが、それがまた大きくなるといつもの3倍ぐらい。ヒトでいうならオトナ4人分といったところだろうか。

「これ以上大きくなると、俺様地底を破壊しちまうから今回はこのサイズでひねり潰してやるぜ」

そういうと、星熊童子をギュっと掴み上げ、ミシミシと音を立てだした。それに気づいた金熊童子がハッと我に返り、星熊童子を助けに走り出す。が、俺はその背中めがけてナイフを正確に投げた。

「あ、がっ」

ナイフは深く突き刺さり、金熊童子は動きを止めた。その瞬間がチャンスだ。俺は動きを止めた金熊童子に追いつき、ナイフが刺さった部分に思いっきり蹴りを入れた。

「い゛っ」

ナイフはさらに金熊童子の背中に深く入り込んだ。背中から血が流れて、俺の獣としての血が騒いでいる。体力的に辛かったのが嘘のように身体が動きたいと疼いている。

「くっなんなんだよ!」

金熊童子はもがき苦しんでいる。

「フーッフーッ・・・」

「ロウ、そこ邪魔だ」

酒呑童子様は大きく振りかぶって星熊童子を投げた。星熊童子は金熊童子の上に落ち、体重でナイフが圧され、金熊童子が悲鳴をあげた。

「金熊童子、すまねぇ」

星熊童子は素早く起き上がったが、金熊童子は気絶していた。

俺は星熊童子の傍まで寄って腕に力を入れた。筋肉を固めるように操作して鋭い槍のようになった。

そしてその尖った手で星熊童子に刺した。

「ッどこからそんな力が!うっ」

星熊童子の体を抉るように。

「ロウ、もう大丈夫だ。そいつはもう動けない」



おかしい。俺様はロウがいつもと何か違うことに気がついた。「フーッフーッフーッ」と荒い息を吐いている。まさか、妖怪としての、獣としての本能が働いて暴走しているのか?いきなりどうしたんだ?

俺様は大きく息を吸い込んだ。血の臭いが濃い。おそらくこれが原因。なら正気に戻すには気絶させるしかない。

「ロウ、落ち着け!」

ロウになるべく力を入れずに後頭部に衝撃を与えた。その瞬間に星熊童子とロウは地面に倒れ込んだ。そして俺様の巨大化も解けて元のサイズに戻った。

「ロウ、終わったぞ」

俺様は気絶したロウを血の臭いがあまりしない場所まで連れて呼びかける。

「うぅ、あ?」



頭がズキズキと痛む。俺は、何をしてたんだっけ?確か四天王の3人と闘って・・・

「ロウ、大丈夫か?」

「何が起きたんだかさっぱり」

「お前の半狼の血と妖怪としての本能が目覚めて暴走しかけたんだよ。ほら、これを鼻に詰めろ」

そういって鼻栓を渡された。

俺は鼻栓をして、口輪をつけた。自分がいつまた変になるかわからないから口輪して被害を最小限に留めるためだ。

「旦那、四天王の3人は?」

「ああ、鎖で縛っておいた。だから大丈夫だろ」

「ならいいんだが」

そう俺たちが喋っているところに、黒い影が迫っていた。

「何が良いんだ?お前たち、何をした?」

後ろから低いトーンで喋りかけてきた。なぜだか、振り返れない。声が出ない。酒呑童子様さえも一瞬、顔が強ばった。

その声の主は続けた。

「説明をしろ。無視するのであれば、今すぐにでも地獄の底に叩き入れるぞ」

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