表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/14

突然のおつかい?!

「ただいま」

気がつけば咲那との生活は3日経っていた。

「・・・ご飯まだ?」

「はいはい」

だいぶ馴れてくれたのか、少しだけ会話をするようになっていた。

「ほら、飯の時間だ」

「おいしい」

「どーも」

3日も経ったし、そろそろなんで落ちてきたのか教えてくれねぇかなぁ。ちょっと聞いてみるか。

俺は咳払いを一つして咲那と目を合わせた。

「・・・いい加減、教えてくれねぇか?なんでお前落ちてきたのか」

咲那は少しだけ考えて言った。

「・・・私の父さん、いないんだ。4才の時に出ていった。母さんは仕事に行っただけって言うけどさ。そんで母さん身体も弱くて、あんまり動けなくて家は貧乏。近所の子供から虐められて、私は汚いからって地底に放り投げられた」

「・・・そっか、ごめん」

「なんでお前が謝るの?」

苦しい。聞いててただただ痛い。胸がギュッとなって張り裂けそうだ。

お前の親父はクソヤロウだよ、うん。

「・・・聞いて悪かった」

そう話をしていると、外から声が聞こえてきた。

立ち上がって玄関へ行き、先に扉を開けておく。そしていつものごとく来るのは助さん。

「大変だぁぁ!!!って扉開いてるぅぅ!!」

「ドンドン叩かれるの迷惑だから開けた」

「左様ですか。じゃなくて!大変だ!喧嘩だ!!」

地下世界では妖怪同士の喧嘩が絶えない。

喧嘩となれば激しい闘いになり、被害が尋常じゃない。俺は門番と喧嘩を止める役も担っている。

「誰と誰だ」

「落武者の渚丸と柚木羅だ」

「あの二人またかよ・・・」

俺は縄を持ち出して現場へと急いだ。


「お、人間。お前も来いよ」

助さんは咲那に手招きした。

「・・・え?」

「ほら早く。あー、怖いならしょうがねぇな」

「怖くないし!!」

ガタッと立ち上がり、靴を履いてさっさっと家を出た。

二人は歩き始めた。




「うるせぇな!!!」

「てめぇ!今日はぶちのめすぞ!!!」

現場に駆けつけるとそこには落武者同士が刀を抜いて睨み合っていた。

「お前らなぁぁぁぁ!!今度はなんの喧嘩だ!」

「ロウ!聞けよ!渚丸の野郎がうどんの方が旨いって言うんだ!!」

「ロウ!柚木羅の馬鹿が蕎麦の方が旨いって言うんだ!!」

あり得ない程どうでもいい喧嘩すぎて思わず長いため息が出た。

「うるせぇな!いつもいつも小さいことで喧嘩すんじゃねぇぇぇぇ!!」

「「こいつが悪いんだよ!!!」」

こいつら仲が悪すぎるのか良いのかもうわからねぇ。

「わかったから喧嘩するなよ、どっちも旨い。これでいいだろ」

と喧嘩を止めさせようとしたんだが、聞く耳を持たず二人は剣を交え始めていた。

「はぁぁぁぁ・・・」

石を縄でギュッと縛りつけた。

「いい加減にしろ!」

「うわぁ?!」

渚丸の右腕めがけて石を投げる。そしてさっと縄を引く。腕にぐるぐると縄が巻きつく。

「オラァァァァ!!!」

縄を思いっきり引っ張り、渚丸を動かして柚木羅にぶつける。




「おお、ロウ派手にやってるなぁ」

少し離れた場所から助さんと咲那は見物していた。

「・・・なんで誘ったの」

疑問をぶつける。

「えー?だって退屈だろ?」

「それだけ?」

「それだけさ」




「渚丸、柚木羅、確保!」

「「い、痛い・・・」」

二人を縄で縛って引きずる。

「って助さん!なんで咲那を連れてあるいてるんだよ!!!」

「えー?」

「危ないだろ!ここどこだかわかってるのか!咲那も着いていかない!!」

助さんは大笑い。骨をカラカラカラカラ鳴らしてる。

「お前はこいつの保護者かっつーの!あははは」

「・・・いいから行くぞ!!」

二人を引きずりながらある場所へと向かう。


《反省会場》と書かれた看板の部屋へ連れていく。

「ここ、なに?」

「おいらが説明しようか。ここはな、悪さをしたり喧嘩をしたりして周りに迷惑をかけたり被害をだした奴らが来る場所だ。ちなみにこの二人は今日で21回目だな」

「んで、ここで3週間~2年間の短い期間反省させる。大きな被害を出せば出すほど反省期間が延びる。こいつらは3週間だな」

「へー」

牢獄に一人ずつ入れていく。二人は相変わらずずっと喧嘩している。

「そうだ、ロウ」

突然助さんが何か思いついたような顔をした。

「この人間が心配なら、闘えるようにしたらどうだ?自分の身は自分で守れって言うだろ?」

「わ、私自分の身くらい守れるし!」

「いやいやこの間妖怪に拐われて泣いてたじゃねぇか!!!」




「はぁぁ、どうしたものか」

帰宅後、俺は考え事をしていた。

咲那にちゃんと自己防衛する為の道具を与えるべきかどうか。

仮に与えたとして、掟を破るような行動に走ったら?

でも与えたほうが俺が楽になるし、拐われることもない。

────ナイフ1本だけ与えるか。

「咲那、お前に試練を与える。このナイフを1本やるから、商店街の薬屋で『回復の薬』を買ってこい」

「はぁ?!ただのおつかいじゃん!」

「おつかいくらいいけるよなぁ?」

「わかったよ、買ってくる!!!」

咲那は家を飛び出した。




買ってくる、とは言ったものの、少し怖い。

この間妖怪に拐われて怖い思いをしたのだ。

なのにそんな場所に一人で行くとなると足が重い。

「今回はナイフがあるんだから、これで倒せばいいのよ」

自分にそうやって言い聞かせるしかなかった。

商店街までの道のりが長い。

「大丈夫、大丈夫。おつかいくらい大丈夫」

ようやく着いた頃には心臓がバクバクと音を立てていた。

「えーっと、薬屋さんってどこだろう」

着いたのはいいが、問題は薬屋がどこにあるのかだ。

「あれ、嬢ちゃん一人かい?」

「ヒッ?!」

後ろから声をかけられて、振り向く。

「あ、あのときの土蜘蛛!!!」

私は思わずナイフを取り出した。

「なぁに?私とやろうっていうのかい?ところでロウは一緒じゃないんだねぇ。逃げ出してきたのかい」

「ち、違う!買い物頼まれただけ!てかなんの用よ」

怖いけどなんとか踏ん張って声をあげた。

「あーおつかいね。で、何を買いたいんだい?」

「え?」

「だから、何を買いにきたんだい?」

思っていたのと違う反応が帰ってきた。私は捕らえられて喰われると思っていた。

「か、『回復の薬』だけど」

「あー、そうかい。薬屋はこっちだ。ついてきな」

土蜘蛛に手を引かれる。

「えっと・・・私を食べるんじゃなかったの?」

「何を言ってるんだい、ロウのお気に入りを食べる訳ないだろう」

私が、お気に入り?どういうこと?

「・・・ほら、ついたよ。『回復の薬』は確か奥の方だったかな」

土蜘蛛は店の中へズカズカと入っていき、瓶を一つ手にして持ってきた。

「ほら、お金出して、買ってくるから」

「え?あ、うん」

私は言われるがまま、お金を取り出して手渡した。

土蜘蛛は店主とやり取りをして薬を買ってきた。

「それじゃ、私は行くところがあるからね、お嬢ちゃん気をつけてね~」

土蜘蛛は去っていった。

結局お気に入りってなんだったの?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ