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再会、そして。

地底と地上を繋ぐ扉を開けた瞬間、光が差し込んだ。久しぶりの日の光に、思わず目を瞑った。

「お、お父さん・・・だよね?」

震える声が聞こえてはっと目を開けると、日の光の中に娘がいた。

「・・・ああ、沙那、おかえり」

そう言った途端、沙那は泣きだした。

俺は優しく抱きしめてあげた。ずっとできなかったこと。

「お父さん、母さんが、母さんが死んじゃって、私、居場所無くなったって思って」

「うん、うん」

月華死んだのか・・・。

あいつは明るくていつも元気だったなぁ。

あいつは優しいから、きっと沙那をずっと捜してくれてたんだろうな。俺がもっと早く帰していればお前は沙那とまた会えたよな。ごめん。

月華、この子はお前の顔にそっくりなくらい美人だよ。俺の影なんて全然ないんじゃないかというくらいだ。

「沙那、大丈夫だから。これからは2人で生きよう」



「あー!闘いのあとの酒はうめぇなぁ!!」

「なーんでまた宴会なんだよ?!」

「いや〜、だって娘が帰ってきたんだろ?じゃあ祝わなきゃいけねぇだろぉ?」

「旦那が騒ぎたいだけだろ」

気づけば宴会に連れていかれ、どんちゃん騒ぎになっていた。

沙那はまだ酒が呑めないからジュースを飲みながら絡芽さんと楽しそうに喋っている。

助さんはというと、他の妖怪達と大声で歌って踊っている。

「ロウ、ちゃんと娘を育てるんだぞ」

突然、酒呑童子様がそんなことを言いだした。

「わかってる。なんだよ急に」

「いやぁ、俺様にも子供がいたんだよ」

「え、旦那子供いたの?」

衝撃である。子供を見かけたことは一度もない。

「ああ、いた。俺様たち四天王ってさ、1回死んでるんだよ。俺様は源頼光に殺された。息子の鬼童丸は俺様の仇をとろうとして源頼光に殺されたらしい。死んでちょっと経ったとき、閻魔様に四天王に選ばれた。だが鬼童丸は四天王に選ばれなかった。だから今も地獄にいるんだ」

「旦那・・・」

意外といったら悪いが、こんな暗い過去を持っていたなんて・・・。

「ま、だからお前を助けたってのもあるぞ。さぁ、今日は呑むぞ〜!」

「いやいつも呑んでるでしょ?!」




「あのさ、土蜘蛛」

「そろそろその呼び方やめてほしいねぇ、距離があるのよね〜」

「えっと、じゃあお姉さん」

「うん、なんだい?」

私は突っかかっていたあの事について一応聞いておこうと思った。

「その、父さんが私を気に入ってたみたいな話って、そういうことでいいの?」

「そりゃ娘だからね。自分の娘かなって思ったのは匂いで、確信したのは名前を聞いたときらしいよ」

「じゃあなんであんな扱いしたのよ・・・」

ガキ扱いして毛布1枚投げてきたのを私は忘れていない。

「まぁ、今更自分が父親って言って信じてくれるとも思ってなかったし、嫁さんと子供を捨てた自分には資格がないって言ってたよ」

「バッカじゃないの」

実際お父さんに捨てられたとか少し思ってたし、自分は人間として生きてきたから信じなかっただろうし父親なんて言ったら冗談にしか聞こえなかっただろうな。

「ところでお嬢ちゃん地上の話聞きたいな」

「んー?地上の話?」

「地底にいるとつまんなくてね、面白い話が聞きたいのよ」

私は地上にも妖怪がいたこと、母さんのこと、自然のこと、色々話してあげた。

「お母さんの遺体はどうしたんだい?」

「あー、宴会に連れてこられる前にあの鬼にお墓を作ってきていいって言われたから父さんと埋めに行ったよ」

「そうかい。まぁ、私のことを第2の母だと思って接してもいいからね」

数時間宴会は続き、気がつけば酔い潰れた妖怪たちがそこらじゅうにいた。

「うっぷ・・・」

「ロウ〜、おいらの右腕取ってくれ〜」

「え、え、腕取れるの?!」

「ん?助さんのことかい、まぁ骸骨だからね」

「助さん、右腕投げるから、水を・・・」

お父さんは今にも吐き出しそうな顔をしていた。なんだかんだめっちゃ呑んでたからそうか。馬鹿なの?加減してよ


「おい、ロウ。閻魔様と何話してたんだ?」

酒呑童子様が酔い潰した妖怪たちを下敷きにしながら問いかけてきた。まずその下の妖怪を解放してやってくれよ。

「・・・いやまぁ、兄貴のことだ。そんで、この箱を貰った。中身はなんか、石ころが入ってた」

「でも閻魔様に貰ったってことは重要な石ってことだろう?俺はお前の兄貴のことは詳しく聞かされてなくてな。あいつを連れていったのは閻魔様と茨木童子だ。だから、それがなんなのかは茨木童子に聞くといい。閻魔様に貰ったとなれば話を聞いてくれるはずだ」

「茨木童子・・・。あの鬼なら確かに話を聞いてくれそうだし、明日捜しに行くか」

「・・・ロウ、お前の兄貴を護れなくてごめんな」

「何言ってるんだ、旦那のせいじゃない」

「俺様がもっと早く喧嘩を止めていれば間に合ったんだ・・・」

「旦那は悪くない」




次の日になっても体はくたくたであちこち痛く、改めて四天王相手にしていたのがこんなに体に影響するんだと痛感した。

「いッ・・・痛い」

「大丈夫?今日どっか行くんでしょ?」

「大丈夫じゃないけど行かなきゃ・・・」

「そんなボロボロの体でどこ行くのよ」

「茨木童子に用がある」

なんとか扉を開けるとそこに助さんが立っていた。

「助さん何の用だ?」

「お前を運びに来たんだよ。そんな体じゃまともに動けないだろおいらの知り合いの火車を連れてきたんだ。運んでもらえ」

「火車って、俺まだ死んでないが?」

「死体になったらそのまま処理されるな良かったな」

そんな冗談を言わないでほしい。マジで死にそうだからね?

「お前の娘なら大丈夫だ、おいらが連れ回すからな」

「えっ私強制的に連れ回されるの?」

自分は留守番でもしていようと思っていたらしい沙那が反応してきた。

「だって嬢ちゃん、家に居ても暇だろ?」

「まぁ、そうだけど・・・」

「ってことで。じゃあ行くぞ〜、火車ならこのあとすぐ来てくれるらしいから、じゃあな」

そして沙那は助さんに連れていかれた。向かった方向的に商店街の方だろう。助さんなら沙那を守れるだろうな。助さんはこの世界で顔が広いから何かあれば知り合いの妖怪総出で対処しようとする。昔助さんの右足の小指の骨が消えたって騒いで集合かけて150体くらいの妖怪が一日中小指を探すというシュールな光景が起きていた。助さんって愛されというかなんというか、コミュニケーション能力が高いというか。

だから沙那に何かあったら総戦力でやってくれるだろう。この世界で敵に回したら怖いのは案外助さんなのかもしれない。

「・・・火車いつ来るんだろ」

火車がいつ来るか分からないから、俺は玄関で大人しく座って待っていた。そして10分くらい経って、トントンっとノックされたのて扉を開けてやると、155センチくらいの妖怪がいた。髪の毛は炎でできているように見える。耳は猫の耳をしていて、緑色の猫の目。着物を着ているが、上半身は脱いでいて下半身に垂れ下がっている。そして、2つに分かれた尻尾。

「あ、火車さんですか?」

「はい、僕は火車の火廻といいます。話は聞いていますので、この猫車に乗ってください。大丈夫ですよ、死体じゃないので燃やしたりしませんから」

俺は火廻くんの猫車に乗っかり、楽な姿勢を探した。

「茨木童子様の居場所の情報ってあまりないので酒呑童子様に聞きに行きましょうか」

「ああ、頼む」

ベストポジションが決まって猫車がゴロゴロ動き出した。



「あ?茨木童子?ああ、場所教えてなかったな。あいつならたぶん、あっちの静かな洞穴の中にいるのをよく見かけるぞ」

「酒呑童子様ありがとうございます」

「旦那、ありがとな」

指を指された方へ行くと、暗い洞穴があった。

「ちょっと待ってくださいね」

火廻くんはそういうと、長めの棒を拾って片方の手に近づけた。すると、ゴウっと音がして火がついた。その棒を俺に差し出した。

「おお、これなら中が見えるな」

「では進みます」

ゴロゴロと洞穴に響き渡る。やがて最奥にたどり着いて、小さな光が差し込んでいる中に茨木童子を見つけた。

「茨木童子・・・様」

そう呼ぶと、茨木童子様は振り返った。

「・・・なんだ、人狼か。何しに来たのだ」

「僕は席を外しますね」

茨木童子様の近くまで近づいて火廻くんはこの空間から出ていった。

「茨木童子様、貴方が俺の兄を閻魔様と封印したと聞きました。兄のことを教えてください。そして、この石が何なのか教えてください」

「・・・閻魔様に貰ったのか。ならしょうがない、貴方の兄のことを話しましょう」


私は誰よりも早く、地底から抜け出した妖怪がいることを察知した。人狼族は妖怪の人間のハーフ。妖力と霊力をそれぞれ持っている。まぁ霊力といっても幽霊が目に見えるくらいの力しか貴方は持っていませんが。それでも微妙な揺れを感じ取ったのです。私はよく瞑想をしているので、他の妖怪と比べて気配を感じ取れるわけですよ。その日も瞑想していた訳です。それで、貴方がいなくなってすぐに門の場所まで行くと貴方の兄がいました。なかなか手強かったのを今でも覚えています。ずっと抵抗してきたので半殺しの状態にして、閻魔様がやってきて、そのあとに私と2人で封印しました。その石は貴方の兄を封印しているある場所の鍵になっています。場所は地図を渡しておきます。どうぞ。

ああ、そうだ。貴方の兄は貴方を庇ったのもそうですが、別のことでも封印しなければいけない理由がありました。その理由があの人狼の部屋にメモ紙が見つかりましてね。だから、あの人狼が封印されたのは貴方のせいではありません。気負いしすぎないように。

え?その理由?それは本人から聞いたほうがいいでしょう。本人がいないところでそれを話してしまうのは問題ですので。それではもう話すことはないです。ここから消えてください。瞑想の邪魔です。火車、早くこの人狼を運び出してください。


「どうでしたか?なにを話していたのかは知りませんが、ちゃんと話せましたか?」

「ああ、色々情報が手に入った。ありがとな」

それにしても、ジン兄さんを封印しなければいけない理由が他にあったってどういうことだろう。ジン兄さんの居場所はわかったし、俺の体が動かせるようになったら行こう。ただ、ジン兄さんを解放すると閻魔様がやってくるんだっけ。そこだよなぁ問題は。それはまぁジン兄さんの状態を見てからにしよう。

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