妖怪達の宴
「うるせぇぇぇぇぇ!!!」
俺は家の扉をダンダンと叩く音が聞こえてドアを開けた。
「よっす。お前も宴に行こうぜ?」
「その前に謝れよ」
「え?やだけど?」
カラカラと骨が鳴る。笑うと必ず出る音だ。
「はぁぁぁ、とりあえずまぁ行くけど」
「じゃあ先に行ってるからなぁ」
スケルトンの助さんはカラカラと骨を鳴らして過ぎていく。
はぁ、全く。こっちは仕事があるってのに、ここの住人はみんなマイペースだ。
ここは地下の世界にある妖怪の国。
妖怪達がどんちゃん騒ぎをすることが許された場所。何をするも自由だが、一つだけ掟がある。
「地底から地上に出てはいけないこと」
これは絶対に破ってはならない。地上と地底の契約だ。地底で騒ぐかわりに地上に出てはいけない。掟を破れば恐ろしいことが待っている。
地上と地底を繋ぐ門は固く閉ざされている。だがそこから誰かが出たりする可能性がある。それを防ぐのが俺の仕事だ。狼男の俺は地獄の門番ケルベロスと同じ役割を担っている。
「しょうがない、行くか」
俺は酒を何本か持つ。鍵をしっかりかけ、念のため門の目の前に立つ。ずっしりとした赤黒い門は固く閉ざされている。俺は門を背に下駄をカランコロン鳴らし、宴の会場へと足を運んだ。
「おお、きたきた!」
助さんがこっちに手を振ってくる。俺はその場に行くが、少し嫌な顔がそこにあって立ち止まる。
「ロウ、そんな嫌な顔しないでくれや」
もう既に酒をガブガブ呑んだだろう大男がいた。その男は鬼の酒呑童子。
「俺はお前が苦手だ、何度言ったらわかる」
「まぁまぁ、ピリピリすんなって。今日は宴だぞ?」
「今日は、じゃねぇんだわ助さん。今日も、だろうが」
地下世界にはやることが全然無い。その為、宴会を開くことが多々あるのだ。
「ロウの旦那ぁヒック···昨日はたったの4時間でしょ?今日は12時間ぶっ通しですぜぇヒック」
「いやいやそんなにやらねぇよ!!!」
酔っ払った他の妖怪達はまだまだ呑む様子だ。
「はい、ここで酒呑童子様とロウが勝負するぞぉ!ほらみんなみろみろ~」
「おい!助さん!俺はッ」
『のーめ!のーめ!』
対決を望む妖怪達が声を揃えてコールする。
「ロウ、ビビってるから酒呑童子様と勝負しないということか」
「違うわ!!!あーもう知らん!勝負だ酒呑童子の旦那!!!」
そこからはやけくそになって呑んで呑んで呑みまくった。どんちゃん騒ぎして、疲れはてて、気がつけば妖怪共が地面にバッタバッタと倒れてて、俺と酒呑童子殿の呑み比べは酒呑童子殿の勝利で終わった。
「おえっ...吐きそう」
「あっはっはっ...また俺様の勝ちだぁ」
「旦那、俺は帰らせてもらう。お前らが暇でも俺は仕事があるんでな。その前に水くれ吐きそう」
俺は酒呑童子殿に水を貰い、一気飲みする。少しは楽になってきた。そのままよろよろと歩いて帰路を辿った。
家に着いた瞬間に、俺は倒れるように眠った。
次目覚めたときに大きな仕事が降りかかってくるとは知らず。