今日はおふだ。
第四回なろうラジオ大賞参加作品第三十一弾!
「あ、今日は休日だ」
いつもの癖で思わず鞄を手に持っていた。
不景気である上に人手不足ゆえに働き詰めで……昨日で七連勤。
世間ではブラック企業と分類される勤め先も今日は休みだ。
ちなみに七連勤になってしまったのは、大きなプロジェクトに関わる社員の七割が、最近流行ってる病気に罹ってチーム再編やら何やらで時間が掛かったせいだ。
人手不足ゆえに普段からブラックな感じだが、そのせいでさらにブラックな感じになり、俺はもうヘロヘロである。でも直属の上司はどっちかと言うと世間一般のブラック企業な上司とは違い話が分かる方で、ついでに言えば結果の対価を可能な限り社員達にくれる方で、慰労も兼ねて今日は休日にしてくれた。
明日からまた多忙の日々だろうけど。
しかし今日はどうしようか。
今まで仕事三昧だったから俺に趣味はない。
でもだからってダラダラ過ごすのも時間の無駄だ。
さてどうしようか。
暫く考え……俺はとりあえず散歩に出る事にした。
※
「アンタまた外の様子を見てるの?」
外を眺める私に友達が声をかけてくる。
確かに外を見続ける私は仲間達の中では異端かもしれない。
でも面白いからいいじゃない。
普段私達に色んなモノを恵んでくれる連中を見なさいよ。
私達へと熱い視線を送ってくる者もいれば冷たい視線を送ってくる者もいたり、残念な事に無視する者がいたり、時々は熱い視線どころか手を向けようとする者もいたり……それでケガした人も以前、いたわね。
普段私達は連中の見世物にされているのよ。
しかもこの狭い世界に閉じ込めた上で、よ。
逆にこっちが向こうを見たって罰は当たらないわよ。
「ま、アンタが満足してるならいいけど」
そう言って友達は去っていく。
同じ趣味や感情を共有できない部分については残念に思うけれど、それでも私のこの趣味はやめられないから今日も私は趣味である外の様子の鑑賞に没頭する。
お、今日は冴えない顔つきの男が私を見ているな。
嫌な事でもあったか。それとも相当疲れているのか。
どっちにしろ、そんな生活をしてて……本当の意味で『生きてる』って感じてんのか? って思う。
まぁ狭い世界に閉じ込められている私も同じだろうけど。
にしても私達、鯉とは違って広い世界にいるクセにストレス感じているとか……公園の池の外の世界は一体どうなって……お、今日はお麩だ。
以前、別の仲間が食った奴は糖分多めだったせいでソイツはデブになったが今回のお麩は大丈夫でしょうね?
あ、ちゃんと焼き麩ですよ(ぇ