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イリーニアの罪

そんなこんなで現在。


元旦那様じゃなくて、ナダル様は私の邸にいる。

初めは下男として邸の力仕事してたけど、頭が良いのに使わないのは勿体ないので、従者として働いてもらってる。

一応元犯罪者(ヒーローsとヒロインは国家騒乱罪で罪人)なので、優秀でも執事候補には出来ないし、会わないように領地に押し込める事も監視の役目があるので出来ない。

本人は罪滅ぼしの意味でうちの邸で働いてるんだろうけど、こっちからしたらあんたには会いたくないけど監視しなきゃいけないっていう、中間管理職なみに胃の痛い思いしてんだよ!!


そんな私の気も知らずこいつは優雅にお茶入れてる。しかも美味い。


3年半うちで真面目にやってきたから、そろそろご褒美あげようかなぁ。


「ナダル様、こちらに座って下さい。」


ナダル様は驚いて私を見た。私から話しかけた事ないもんね。驚くよね。


「話したい事があるんです。立たれてたら話しづらいんで。」


ナダル様は静かに私の対面に座り顔を少し俯けた。


「あのですね。」


「ご主人様、一介の使用人に敬語は不要です。」


私も驚いた。彼が直接私に話しかけることはなかったから。しかもご主人様って。ちょっと鳥肌たつんだけど!


「じゃあ、ナダル。あなたもご主人様はやめてくれる?イリーニアでいいよ。」


「畏まりました。イリーニア様。」


「あのね、貴方はここに来てから、文句も言わず真面目に勤めてるし、ご褒美をあげようと思って」


王女殿下も教えてもいいって言ってたし。


「子爵令嬢生きてるよ。どこにいるかはわかんないけど、元気にしてるって。」


私は子爵令嬢の生い立ちや牢の中での話をした。


「そうですか。」


ん?なんか反応薄すぎない?確かにヒーローsと浮気して、苛めの自作自演したけど、そんな何も関心ありませんってなる?


「えーと、浮気の事なら元王太子を選んだ時点で二股以上かけてるのわかってたよね?それでも好きだったんでしょ?」


「·····好きでしたよ。自分を肯定して、甘えさせてくれる彼女が。現実逃避出来ましたからね。」


えっ?ちょっ·····それじゃ都合のいい女じゃん!


「酷いですよね。でもそれをあの時の私はわかってなかった。彼女を本当に愛してると思ってたんです。」


ナダル様は1つ息をついた。紅茶を入れてあげて続きを促す。


「ありがとうございます。肯定して、次期宰相の重責を忘れさせてくれる彼女が好きだったんだと気づいたのは貴方の言葉です。」


「私の?」


「ええ。侯爵家は没落して私も責を負うと言われて、宰相の座も侯爵となることもなくなり、彼女の存在が自分の中で消えました。その程度の思いだったんです。謀反だって失敗するのがわかってたから、弟達を死なせたくなくて反対したんです。無駄でしたけど·····」


自嘲気味に嗤う。彼の弟も処刑されていた。


「そんな事言っていいの?」


成功するなら反対しなかったって言ってんだよ?


「構いません。それぐらい陛下はお見通しですし。だから貴女に私を監視させてるんでしょう。」


おい、断定してるよ。

誰よ!こいつに言ったのは!


「私が生きてここにいるのが、そういう事なんですよ。」


頭の中読まれてる。しかも自分で気づいたのね·····。そりゃ陛下も(3年前に譲位されて王太子が国王になった)監視つけるわ。


「貴女には申し訳ないが陛下が私を殺すまで、ここに置いてくれないか?迷惑ばかりかけてどう償ったらいいかわからないが、貴女の望むことはなんでもする。」


ナダルが私の方にハンカチを差し出した。その時に自分が泣いているのに気づいた。


「泣かないでくれ。私はそれだけの事をしたんだ。私が弱かったから逃げた結果、貴方を傷付け、弟達や関係ない人たちを死に追いやった。本来なら1番に死ななければならなかったんだ。」


彼はそう思って生きているのか。


「私への償いはしてくれてる。ナダルが今ここにいるのが償いなんだから。」


「それが貴女との約束だから。」


あの決別の日の約束の為に、周りから白い目で見られても、犯した罪に苦しんでも死を選ばないのだ。私は涙が止まらなかった。

あの日の自分の言葉をこんなに後悔するなんて思わなかった。


「貴女は優しいな。」


優しくなんてない。貴方を苦しめる為に約束したけど、それがどれ程酷い事かわかってなかった。

それでも、もういいよとは言えない。


泣きながら、心の中で何度も謝り続けた。

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