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王女との対面

王女の命令でイリーニア女子爵の所で働く事になった。

事前に伝えられていた執事に、下男として働けと言われた。使用人達に嘲笑され、殴られたりしながら何も考えずに体を動かす。


イリーニアは知らなかったらしく、庭で会った時に雄叫びを上げ去っていった。


その夜、王女から、密かに呼び出された。


「バレたわねぇ」


「そうですね」


「誰かから接触はあったかしら?」


「いいえ、まだ」


私を生かしたのは餌にする為だ。まだ盤石とは言えない王太子に不満を持つ者は私を使ってくる。それを王太子に報告する役目。


「ふーん」


イリーニアもそうだが王女も以前と印象が違う。


「ふふっ、女はね、隠すのが上手いの。知らなかったから、あの女に騙されたのよ。」


考えを見透かされた様で、そんなものかと思った。今の私にはどうでもいい事だ。


「ねえ、学園での事、事前に知ってたと言えば貴方はどうする?」


事前に知る?

何を?

不貞か?

それとも断罪か?

知っていて受け入れ僻地に行くだろうか?

本当に僻地に行ったのか?


だが、知っていなければあそこまで用意周到に出来ないだろう。初夜の発言まで撮っていたのだから。

一体何処から何処までの事を言っているのか?


考えているとまた笑う声がする。


「ありえないとは思わないのね。だから、貴方を生かすのが怖いのよ。」


王女の私を見る目は獣のようだ。少しでも動けば喉笛に噛み付いてくるだろう。



「ねえ、あの女といる時や考える時、自分が自分ではないみたいに感じなかった?普段ならしないような言動とか」


この王女にしては歯切れが悪い。

だが、私も感じていた。高位貴族として、女の媚や演技、涙などで惑わされぬよう、教育されていた。

今なら感じる違和感もあの時は一欠片(・・・)も感じなかった。

王女は溜息をついて言った。


「今からする話は信じなくてもいいわ。」


学園での事はシナリオという台本通りに進められていて、私達は攻略対象者と言われヒロインである子爵令嬢を愛する事が決まっていた。王女以外の婚約者達は結婚初夜に暴言を吐かれる事まで。

確かに信じられない。


「殿下はどの時点で信じたのですか?」


「わたくしが知っているとは思わないのね」


「伝え聞きのようでしたので」


「·····あの女が子爵家に引き取られた時、半分信じたわ。」


なるほど。信じて行動しても損は無いから、乗ったのか。


「どうやって彼女が知ったのかご存知ですか?」


「誰か分かってるみたいな言い方ね」


「イリーニアが未来を全て話したかどうかわからないから、私を邸においたのでしょう」


彼女と初めて会った時の震え、子爵への叙爵、初夜の笑み。

彼女がシナリオを知る者なら、頷ける。

そしてお互いを監視させている。


「ですが、イリーニアは無害ですし、今の所は未来を知らないでしょう。」


「知っていたらあんな顔でここには来ないわね。」


王女が吹き出すなんてどんな顔だったんだろう·····


知りたいが王女が吹き出す顔だ。彼女の為に聞かないでおこう。


「·····貴方も後を追うと思ったわ。」


私も家族の後を追いたかった。


「約束しましたので」


「可哀想に」


その言葉は私にかイリーニアにか、それとも両方か。


「·····御前失礼します。」


「やっぱり生かすのは怖いわね」


扉を閉める時に王女の一人言が聞こえた。

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