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第94話 Bランクの魔獣

昨日、拙作『劣等職の最強賢者』のコミカライズ最新話が、

ニコニコ漫画で更新されました。是非読んでみてくだいね。

『ジャァァァアアアァアァアァアァアァアアアアア!!』


 吠え声というよりは、雷鳴が落ちたようだった。


 大きな虎すら見下げれそうな虎型の魔獣が、突如僕たちの前に現れる。


 虎よりさらに大きな体躯。


 特徴的な縞模様の毛皮。


 牙は曲剣のように鋭く、鋭い爪が付いた足は木の幹を思わせるぐらい太い。


 間違いない。


 ゼブライガーだ。


 魔獣生態調査機関(ギルド)の危険度ランクは〝B〟。


 それと比べれば、Dランクのウィングホーンなんて玩具と戦うのも同然だった。


 こいつが相手となると、文字通りお遊びではなくなるだろう。


 そのウィングホーンは、ゼブライガーに踏みつぶされ消滅する。


 咄嗟に、僕は弓に矢を番えた。


 お手製の弓は、ギリギリと無数の鋼線を絞り込むような音を立てる。


 さらに――――。


 【弓術強化】


 【獣特攻】


 【風属性付与】


 【麻痺付与】


 【武器強化】


 【致命の一撃】


 【耐性防御減少付与】


 僕は矢尻の先にスキルや魔法を込める。


 その時間は0.1秒にも満たない。


 そして、ゼブライガーの爪がロラン王子の頭に振り下ろされた。


 矢を指から離そうとした時、僕の視界に一瞬クライスさんが入る。


(ダメだ!!)


 と思った僕は、すべてのスキルと魔法をキャンセルする。


 瞬間、矢を放った。


 見事、ゼブライガーの左目に突き刺さる。


 頭蓋まであと一歩というところの矢に、ゼブライガーは立ち上がって悶絶する。


 無茶苦茶に動き回って、ロラン王子を探した。


「ロラン王子!!」


 僕は地を蹴る。


 ゼブライガーの前で竦むロラン王子の手を取る。


 こっそりと【身体強化】を使って、王子を持ち上げた。


「王子!!」


 クライスさんが王子を心配して、こっちに近づいてくる。


 そこに立ちふさがったのは、片目を失ったゼブライガーだ。


「クライス、無茶をするな!!」


 ロラン王子の声にハッとなったクライスさんは、ゼブライガーの爪から逃れる。


 リーリスも無事だ。騎士団たちに囲まれながら、孤立した僕とロラン王子の方を見つめていた。


 僕とロラン王子。そしてクライスさん、リーリス、そして王子の護衛と案内役の騎士団。


 2つの組に挟まれるように、ゼブライガーが仁王立ちしている。


 僕たちは分断された。するとゼブライガーはゆっくりと僕らの方を向き、吠え声を上げる。不味いことにかなり魔獣のヘイトを買ったみたいだ。


 僕なら簡単にゼブライガーを倒すことができる。


 ロラン王子やリーリスを守りながらでも余裕だろう。


 でも、今は護衛の人やクライスさんがいる。可能であれば、僕の力は隠しておきたい。


 そもそもクラヴィス父上から、人前で無闇に使うなと厳命されている。


 いい機会かもしれない。


 僕はロラン王子に聞きたいことがある。そのために2人っきりの方が都合がいい。


 スキル【念話】


『リーリス、聞こえる?』


『え? ルーシェルの声が頭に』


『落ち着いて。スキルで直接語りかけているんだ。そのまま僕の方を見て、聞いていて』


『は、はい』


『僕は一旦ゼブライガーを撒くために山頂まで逃げることにする。そこから沢の方に下って、麓にある屋敷に戻るつもりだ』


『そのルートだとだいぶ時間がかかると思うのですが……』


『多分、1日はかかるかな。でも、大丈夫。山の生活には慣れてるし、ロラン王子のこともしっかり守るから』


『わたくしにできることはありますか?』


 心配ないと言っても、リーリスが僕に向ける目はやはり心配そうだった。


『リーリスたちはそのまま麓に下りて、応援を呼んでくれる』


『わかりました』


『あと、くれぐれも僕の力についてクライスさんや護衛の人には言わないようにね。案内役の騎士にも伝えておいて』


『クライスさんにもですか? ……わかりました』


『僕もロラン王子も大丈夫だよ。信じてくれる』


『……はい。でも、絶対に無理はしないで下さいね』


『ああ』


 僕は【念話】を切る。


 次に大きな声を張りあげた。


「リーリス! 君たちは麓に戻って、応援を呼んでくれ」


「え? ……ええ! わ、わかりましたわ。皆さん、早く。麓に戻ってすぐ応援を。クライスさんも早く!!」


「しかし、ロラン王子が!!」


「クライス!! 言う通りにしろ!」


 リーリスの意見に反発するクライスさんに、ロラン王子が声をかける。


 クライスさんは口惜しそうに表情を浮かべた。


 だが、最後には承諾する。


「これでいいのだな、ルーシェル」


「ありがとうございます、ロラン王子。走れますか?」


「同年代の馬の背に乗っても、同年代の子どもの背には乗りたくないものだな」


 さすが王子。ジョークを言えるぐらいには余力があるようだ。


 とはいえ、再びゼブライガーは迫ってくる。


 僕は矢を放つ。今度はゼブライガーの顎の下をかすめた。


 すると、ゼブライガーの動きが急に鈍る。


「何かしたのか、ルーシェル」


「スローソーの実を煮立て、出てきた煮汁を矢尻の先に付けました。魔獣の動きをゆっくりにする効果があります」


「つまりは毒か。そなた何でもありだな」


「お褒めの言葉ありがとうございます。今のうちに逃げますよ」


 ロラン王子の手を取る。


 僕たちは山頂に向けて走り出した。


5月12日に拙作『アラフォー冒険者、伝説となる』コミックス3巻が発売されます。

初夏の雰囲気漂う表紙に、新キャラの猫も加わっております。

是非ご予約お願いします。


挿絵(By みてみん)

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― 新着の感想 ―
[一言] >そのウィングホーンは、ゼブライガーに踏みつぶされ消滅する。 えぇ....(困惑) 獲物の横取りかと思ったらそうでもない...。 「オマエ何で前に出て来とんねん?」っていう感じ。 魔物だから…
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