第78.5話 王子救出(後編)
先日告知いたしましたが、
本日1月12日は『アラフォー冒険者、伝説となる』コミックス2巻の発売日になります。
1巻が即重版した大人気シリーズになっております。
平凡な人生のままで終わってしまった冒険者が、
ひょんなことから最強となり、己の人生をもう1度やり直すお話。
是非お買い上げ下さい。
僕は賊の剣を寸前で受け止めていた。
そのまま押し合いになる。
なかなか力が強い。僕の身体は300年間の魔獣料理生活によって、飛躍的に向上している。
だが、5歳の身体になったことによって、最大値の10分の1近くまで減衰していた。
同い年の子どもなら無双できるだろうけど、大人――しかも暗殺者レベルだとそうはいかない。
なんとか堪えることができている、というところだろう。
「その身体、子どもか? しかし、この力――――」
戸惑っているのは、向こうも一緒らしい。
この隙に王子の呪いを解呪して、一旦馬車から飛び出したいところだけど、それもままならない。
一瞬気を抜いた瞬間、賊の剣が僕の首筋を狙ってくる。
それにしても、どうしてバレたんだ? 姿と気配はジュエルカメレオンの皮でわからないはずだし、物音を1つ。
「あ――――」
そうか。念のためと思って使っておいた【無音】が引っかかったのか。
ということは、最初から僕が侵入していた事に気付いてたんだ。
僕が王子に近づくまで待ってたんだろう。
「どうした? そんな子どもに何を手こずっている」
「さっさとやってしまえ」
鎧を着た賊たちが次々と近づいてくる。
完全に取り囲まれた。
「急かすな。この子ども、なかなかやるぞ。……しかし、まさか王子を取り戻しにきた最初の1人が子どもとはな」
賊は口端を上げて、僕の方を見て笑う。
「待て。子どもが何故、こんな所にいる.?」
「そもそも屋敷から、どうやってこんな短時間に」
「オレたちは最短距離で走ってきたはずだが……」
「他に仲間がいるのではないか?」
「なるほど。周囲を警戒しよう」
「馬車はどうする?」
「このままだ。動いている方が狙われにくい」
ここにあっても、馬車を止める気がないらしい。
まずい。状況が悪くなる一方だ。
僕1人なら、逃げることができただろうけど、ロラン王子を置いて逃げることなんてできない。
「おおおおおおおおおお!!」
「なにっ!!」
僕は男を気合いで押し返す。
ならやることは1つしかない。
この馬車の中で、全員を切る。
それしか、僕と王子の生存ルートはない。
「チッ! 厄介なガキだ」
剣を構えた賊は、顎に伝った汗を鉄甲で拭う。
「そんなに王子の命が大事か。 なら、その枷を外してやろう」
男は手を掲げると、黒い靄のようなものが浮き上がった。
魔法? いや、呪法だ。
「がっ! かはっ!! ……る、ルーシェル」
悲鳴を上げたのは、ロラン王子だった。
振り向くと、喉を押さえて苦しそうにしている。ついには膝を突いてしまった。
みるみる顔色が悪くなっていく。まるで猛毒の蛇に噛まれたみたいに……。
「やめろ! あなたたちの目的は、ロラン王子の誘拐じゃないのか?」
「確かにそうだ。だが、雇い主から生死は問わないと言われている」
「雇い主……」
次の瞬間、ロラン王子は頭から倒れた。
白目を剥き、身じろぎもしない。
息もしていなかった。
「王子!! ロラン王子!!」
「心配するな、小僧。お前もすぐ後を追わせてやろう」
振り返ると、6本の銀光が閃いていた。
狭く、しかも動いてる馬車の幌の中で、賊たちは足を乱さず、僕に接近してくる。凶刃を握り、徐々に間合いを詰めてきていた。
「ふぅ……」
僕は息を吐いた。
今、真っ直ぐにロラン王子を乗せた馬車が向かってくる。
月夜は明るく、馬の口から吐き出される泡までしっかり見えた。
僕は【予知】の魔法を解く。
「搦め手はダメか。相手はプロだしな。逆に対処されやすいのかも?」
じゃあ、向こうの想像を超えるようなことをすればいい。
僕にはそれができる。
【軍進凱歌】!
おおっ! と僕は雄叫びを上げる。
このスキルによって、僕は身体能力を引き上げた。
それだけに留まらない。
【全肉体強化】
【筋量大増】
【俊敏性強化】
【回避強化】
【状態異常無効】
【痛み軽減】
【斬撃強化】
【斬撃耐性】
【刺突強化】
【人型特攻】
【魔法耐性強化】
【自動大回復】
【自動魔力大回復】
【魔法効果三倍】
こんなところでいいだろう。
今からやるのはお忍びじゃない。
単なるごり押しだ。
手綱を握った御者が、僕のことを見つけたらしい。
夜に佇む1人の子ども……。
少しは不気味に思ってくれたかと思ったけど、馬車は方向を変えず僕の方にやってくる。
それでいい。
【予知】の力で、すでに王子の居場所はわかっている。
あと、それを外して剣を振るえばいい。
僕は剣を上段に構えた。
御者が何か喚いている。
「どけっ! 小僧!!」
僕は忠告を無視すると、そのまま剣を振り下ろす。
「おおおおおおおおお!」
思いっきり振り下ろす。
斬撃で生じた衝撃波が御者の横をかすめる。そのまま後ろの幌に衝突すると、見事2つに切り裂くのだった。
☆☆ 1月新刊情報 ☆☆
そして2日後の1月14日には『魔物を狩るなと言われた最強ハンター、料理ギルドに転職する~好待遇な上においしいものまで食べれて幸せです~』の書籍第二巻が発売。
Web版未収録のエルフの王国で食べる山菜の天ぷら、キラーゲーターのスープ、そして幻の料理『星屑シチュー』の実食回が余すことなく収録されています。
だぶ竜先生に描いてもらった、おいしそうなシチューが目印ですよ。
是非お買い上げ下さい。
さらに……。
『魔物を狩るなと言われた最強ハンター、料理ギルドに転職する』のコミックス第1巻が、
1月20日に発売されます。奥村浅葱先生、初の単行本になります(先生、おめでとうございます)。
大迫力の魔獣の群れに、おいしそうなご飯の数々を是非。
こちらもご予約お待ちしてます。








