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第31話 リーリス

☆★☆★ 小説第1巻好評発売中です ☆★☆★


Web版からすべてリライト。

新キャラ「アルマ」が登場。

Web版最新話以降のお話が読める。

TAPI岡先生の飯絵がとてもおいしそう!! etc


色んなおいしいものがつまった小説第1巻を是非お買い上げください。


挿絵(By みてみん)


挿絵(By みてみん)

 ソフィーニさんを助けるため、騎士団が鬨の声を上げる中、顔を曇らせるリーリスお嬢様の姿があった。


 輪の中に入らず、少し寂しそうに床を見つめていたかと思えば、急に部屋を出て行ってしまう。


 ソフィーニさんだけが気付いたけど、「どこへ行くの?」という声は、騒がしい喧騒の中に消えてしまった。


「僕が行きます」


「でも……」


 思いも寄らない方向からの挙手に、ソフィーニさんは困惑した様子だった。


「任せて下さい」


 胸を張ると、ソフィーニさんは心配そうな表情を崩して、僕に笑みを見せる。


「じゃあ、お願いね、ルーシェル君」


「はい……」


「あと、また後で色々お話を聞かせて。あなたのことをもっと知りたいわ」


「ありがとうございます。是非」


 僕は頭を下げると、リーリスお嬢様を追いかけた。部屋には戻らず、そのまま階下へと降りていく。


 やって来たのは、屋敷の地下だ。


 当然、日が差し込んでいないため、薄暗い。


 蝋燭の明かりのおかげで、やっと冷たい石畳が見える程度だった。


「リーリスお嬢様は、ここで何を――――」


 階段を降りて、すぐの地下室を覗く。


 テーブルの前にリーリスお嬢様が立っていた。そのお姿を確認するよりも、僕はまず周りの光景に驚く。


 そこにあったのは、たくさんの薬草や魔草だった。


 一体何種類あるんだろうか。僕が住んでいた山で取れる薬草や魔草を、そのまま詰め込んだような野花や草が、壁伝いに植えられて、一部では水耕栽培もされていた。


 どうやら地下水をこの部屋に直接引いているらしく、涼やかな水の音が聞こえる。


「すごい」


 リーリスお嬢様は肩を震わせ、振り返った。


 僕は構わず周りの薬草や魔草を観賞する。


 一見乱雑に置かれているように見えるけど、どれも理に適った栽培方法だ。


 植物も人と一緒で、草ごとに好みがある。


 相性が悪い草はなるべく遠ざけたりして、逆に良い影響があるものは同じ鉢の中で植えられていた。


 肥料のやり方も種類によってきちんと変えているようだ。


「すごい! 人工栽培が難しいルララ草が花を付けてる!」


 魔草の一種で栽培が難しい。


 ちょっとした環境の変化も敏感に感じて、すぐに枯れてしまう。


 他にも色々と条件があって、幻の魔草と言われているものだった。


「よく知っているのですね」


 何故かリーリスお嬢様の声は震えていた。


 まだ僕のことが怖いのだろうか。


 僕はなるべくお嬢様を刺激しないように声をかけ続けた。


「山で育てていましたから」


「そうですか」


「もしかして、ここにある草花は全部お嬢様が?」


 質問すると、リーリスお嬢様の丸く愛らしい顔が縦に揺れる。


 素晴らしい。


 ここの薬草全部、自分で育てるなんて。


 僕がリーリスお嬢様と同い年の頃でも、こんなことはできなかったはずだ。


 相当努力をしたのだろう。


「……でも、もう無駄になってしまいました」


「無駄?」


「お母様の病気が、呪いとわかったのです。ここにある薬草や魔草はなんの意味もありません」


 悲しげに俯く。その横顔を見るだけで、僕の胸は張り裂けそうだった。


 リーリスお嬢様の気持ちは僕にもわかるからだ。


 父が厳しい一方、母上は僕に優しくしてくれた。


 しかし、父はそんな母を許さず辛く当たることが多かった。


 そんな時、僕は何もできない、ただの小さな男の子だった。


 リーリスお嬢様が(さいな)まれているものの正体は、無力感だ。


「大人の人たちって決めつけてしまうよね。『子どもだから』って……」


 リーリスお嬢様はハッと何かに気付いたように顔を上げる。


 僕の方を見て、黙って頷いた。


「でも、子どもだって、誰かが苦しんでいれば本気でどうにかしたいって思うよ。それが自分の母親なら尚更だ」


 僕はリーリスお嬢様の前に膝を突く。


 顔を上げて、真っ直ぐサファイアのような青い瞳を見据えると、お嬢様は少し怯んだような表情を見せた。


「お嬢様がやったことは、決して無駄なんかじゃない。きっと誰かがどこかで見ています。だから、そんなお顔で寂しい言葉を言わないで下さい」


 リーリスお嬢様の手を取る。


「お嬢様の思いはきっと伝わります。いえ。よろしければ、この僕が……。お嬢様の気持ちを伝える手伝いをさせて下さい」


「手伝い?」


「はい。お嬢様がしたこと……。無駄ではなかったと証明してみせます」


 と、僕が宣誓すると、リーリスお嬢様も強く頷くのだった。



 ◆◇◆◇◆



 竜の説得は、どうやら目処が立ちそうだ。


 けれど、あの竜はとても気分屋だし、ちょっと人を見下しているところもある。


 念には念を入れておかないと。


 そのためにカリムさんやフレッティさんには、それ相応の力を見せる必要があるだろう。


「こんにちは!」


 やってきたのは、レティヴィア家の屋敷にある厨房だ。


 そこには数人の料理人たちが、朝食の準備を始めていた。


 思えば、まだ朝だ。やっと陽が出始めたところで、眩い朝日がレティヴィア家を包んでいる。


「お前は……」


 目を丸くしたのはベテランの料理人だった。


「確か……。レティヴィア家で預かるっていう」


 如何にも職人気質という料理人だった。


 こうやって話しかけながらも、馬鈴薯(ばれいしょ)の皮を剥いている。


「すみません。厨房をお借りしていいですか?」


「厨房を? なんだい? 料理でも作ろうってのか?」


「その通りです」


 少しからかい気味に質問されたが、僕は素直に肯定した。


 料理人は驚いた様子で固まる。


「いや、それはできねぇよ、坊主。あんたはレティヴィア家の客人だ。それに召使いみたいな真似をさせたら、わしらが怒られちまうわな」


「ソンホー……」


 老料理人に声をかけたのは、僕の横から現れたリーリスお嬢様だった。


「お、おおおおおお嬢様!?」


「驚かせてごめんなさい。でも、ルーシェル……さんの言う通りにしてあげて」


「そ、そんな……。いくらお嬢様の頼みでも――――」


 老料理人は顔に手をやる。


 指の指の隙間からチラリとお嬢様を覗き見た。


 きっとその時、お嬢様の青い瞳が映り込んだのだろう。


 純真な光を見て、老料理人は溜まらず参ったと叫ぶ。


「ご当主様には内緒にしていてくださいね」


「はい!」


 とリーリスお嬢様は満面の笑みで答えるのだった。


「面白い」と「更新まだ~?」と思っていただきましたら、

ブックマークと、下欄にある☆☆☆☆☆をクリックして評価の方お願いします。


「もうした!」という方は、作者の別の作品とか読んでくれると嬉しいです。

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