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幕間 一夏の思い出②

☆★☆★ コミカライズ更新 ☆★☆★


ヤンマガWEBでコミカライズ更新!

マンガオリジナル展開。

兄王子の悪役っぷりがいいので、絶対読んでくださいね。


挿絵(By みてみん)

「浜辺や! 太陽や! そして――――」



 海やぁぁぁぁぁあああああああ!!



 カナリアは岸壁から飛び出すと、白い浜辺へと走って行った。

 その勢いに僕たちは思わず呆然としてしまう。

 本人としては僕たちがついてきてほしかったらしい。

 誰もついてきていないことを知ると、珍しくムクッと頬を膨らませた。


「なんや。北のもんノリが悪くてかなわんわ」


「ご、ごめんごめん」


「急に叫んで飛び出したからビックリしました」


「先に言ってくださいよ、カナリアさん」


「同感……」


 僕が謝ると、リーリスはビックリしたと胸を撫で下ろす。

 ナーエルとカルゴはカナリアの奔放さをたしなめていた。


「海を見たら飛び出すのが、青春ってもんやろ」


「いや、全然わかんない」


 これが南の人の独特の感性という奴なのかな。


 まあ、それはともかく僕たちもカナリアの後を負った。


「よし。まずは準備体操からやで。いっちー、にー、いっちー、にー」


 今度は唐突に体操を始める。

 海での遊びはカナリアの方が上手だ。

 僕たちは戸惑いながら、カナリアの動きに合わせる。


 いよいよ海へ入水だ。

 僕は最近蛸を求めて海にやってきたこともあって慣れているけど、今回海が初めてというリーリスは恐る恐るといった感じだ。白い泡を吹きながら、打ち寄せる波に後退したり前進したりしながら、足をつけようとする。


「大丈夫、リーリス。手を繋ごうか」


「ありがとうございます、ルーシェル」


 リーリスは僕の手を取る。

 最近はこうやって躊躇なく握ってくれるけど、昔はかなり僕は怖がられていた。

 それから考えると、かなりの進歩だ。


 リーリスに合わせて、ゆっくりと海に足を着ける。


「冷た!!」


「だ、大丈夫?」


「はい。冷たいですけど、気持ちいいです。これが海なんですね」


 リーリスはようやく笑った。

 太陽に顔を向けるひまわりみたいだ。


「どうしました、ルーシェル」


「え?」


「顔が赤いですよ」


「いや、その…………。水着、似合ってるなって……」


 ちょっと待って。

 今のも返事としては適当じゃないんじゃ。

 むしろなんかリチルさん的にいうと、いやらしい?


 僕はちょっとリーリスを盗み見る。

 真っ白なワンピースの水着を着たリーリスの頬が、赤くなっていた。


「あ、ありがとうございます」


「い、いや……。その――――」



 バシャッ!!



 思いっきり水をかけられる。

 振り向くと、カナリアがニヤニヤしながらこちらを見ていた。


「何を波打ち際でちちくりあってんや(ヽヽヽヽヽヽヽヽヽ)?」


「ち、ちちくり?」


 え? 今のどういう意味?


「なあ、頭取? うちの水着姿はどや?」


 カナリアは僕の前でポーズを取る。

 その水着はまさにカナリア色をしていて、細かいレース柄が入っていた。

 リーリスと比べると、なかなか派手な水着だ。


「に、似合ってるよ」


「リーリスより?」


「へ?」


 思わずリーリスに振り返る。

 すると、何故かリーリスはムッと唇を結んだ。


(え? リーリス。なんでそんな顔をするの?)


「なあ、どうや? 頭取?」


「え? いや、その……」


 こ、こんな時どういえばいいんだ?

 リーリスだっていえば、カナリアが傷付くし。

 反対にカナリアといえば……。

 リーリスはもちろん大事だけど、お世話になっているカナリアを不機嫌にさせるわけには……。


 あああああああああああああああああ! もおおおおおおおおおおおお!!


「ご、ごめんなさああああああああああああああいいいいいいい!!」


 僕は海の上をダッシュし、その場から脱出するのだった。





 ルーシェル、リーリス、カナリアの会話を見ていたカリムは、ふっと笑う。

 本人はビーチパラソルの下で長椅子を置き、黒眼鏡をかけて寝転がった。


「ふっ! まだまだ坊やだね、ルーシェル」


 旅の疲れを癒やすのだった。



 ◆◇◆◇◆ カルゴ ◆◇◆◇◆



 ルーシェルたちは波打ち際で遊ぶ中、カルゴは机を置いて勉強をしていた。

 そこにやってきたのは、花柄のワンピースを着たナーエルだ。

 勉強をしているカルゴに近づいていく。


「カルゴ、海で遊ばないんですか? 気持ちいいですよ」


「うん。日差しが苦手なんだ。それに勉強してる方が落ち着くから」


 ならば何故、遠い南の地方までやってきたのか。

 ――と幼馴染みのナーエルは言いたかったのを、ぐっと堪える。

 カルゴは昔からこうなのだ。

 物静かで、積極的に人の輪に入ろうとしない。

 でも、まったく興味がないわけではない。


 本人は「海に興味があるから」と言って参加表明したけど、生徒会メンバーから仲間外れになるのがイヤだったのだろうと、ナーエルは勝手に思っていた。


「ナーエルは?」


「わたしは休憩です」


「そう」


 それだけ言って、カルゴは勉強を続ける。

 しかし、次第にナーエルがいることによって気が散ってきたのか。

 その目線は、花柄の水着を着た幼馴染みに向かっていった。

 何か話題を探そうと、幾度か考えた結果、カルゴは口を開いた。


「レーネルが参加できなくて残念だったね」


 カルゴは言ってから自分が失言したことに気づいた。

 ナーエルとレーネルは姉妹のように仲がいい。

 いや、それ以上と言える。

 当然、家の事情でレーネルが参加できなかったことは、残念に思っているはずだ。

 なのに、ナーエルの感情を乱すようなことを言ったことに、カルゴは心の中で自分を責める。けれど、ナーエルは至って冷静だった。


 ケロッとした顔でカルゴの方を向いて、こう言ったのだ。


「はい。でも、カルゴがいるから平気です」


「~~~~~~!」


 カルゴは思わず教科書に顔を突っ伏した。

 鏡を見なくたって、今の自分がどんな顔しているかわかる。

 なのに、当のナーエルは首を傾げて「どうしました、カルゴ?」と声をかけて心配していた。その優しさがまたカルゴのリビドーを直撃する。


 やがて顔を上げたカルゴは、開いていた教科書を閉じた。


「泳ごうか」


「え? でも、日差しは苦手だって」


「ちょっとくらいなら大丈夫だと思う」


 そう言うと、ナーエルの顔がパアッと明るくなった。


「はい。行きましょう!」


 ナーエルはカルゴの手を取って、波打ち際へと走って行くのだった。


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