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第242話 お姉様からの勧誘

☆★☆★ コミカライズ更新 ☆★☆★


コミカライズ最新話がヤンマガWEBで公開されました。

有料版では久しぶりにルーシェルとリーリスのほのぼのしたお話。

無料版では納涼祭が終了です(こっちもしみじみ)


どっちも面白いので是非よろしくお願いします。


挿絵(By みてみん)

「どのような御用ですか、ヴィクターお兄様、お姉様」


 言葉尻こそ丁寧だけど、ロラン王子は明らかに警戒していた。むしろ怒っていると言っていいかもしれない。いつも穏やかな青い目が釣り上がり、僕に兄姉と紹介した王子と王女を睨み付けている。


 子どもとは思えない気迫だけど、そこは同じ王子と王女だ。ロラン王子の鋭い視線をあっさり跳ね返すと、ヴィクター王子は鼻息を荒くして睨み返し、セレナ王女は薄く笑みを浮かべた。


「自分の父親が、ましてこの国にとってもっとも大事なお方が病床に就いたのだ。子どもとして、政に関わる者として当然だろ」


「その割には随分と遅くはありませんか?」


「王宮でのほほんと暮らしているお前とは違って、我らには職務がある。それも国王陛下直々に賜った、な。お前はそれすら侮辱するのか?」


「いいえ。私が(ヽヽ)言いたいのは、別の職務のことですよ、兄上」


「ふん。何を言っているのかわからぬな」


 ロラン王子の眼光を見ても、年上の王子は鼻で笑うだけだ。

 2人のやりとりを眺めていると、僕の顔に影が差した。横を見ると、セレナ王女が僕を見下ろしていた。


「坊やどなたかしら? こんな子、いた?」


「その者はルーシェル・グラン・レティヴィア。レティヴィア公爵家の次男で、私の友人です」


「レティヴィア公爵家の次男? あそこはカリムという長男がいたわよね」


 ロラン王子が固まる僕の代わりに答えると、セレナ王女は僕を見ながら首を傾げた。


「それに、あそこはエルフの家系でしょ?」


「ルーシェル・グラン・レティヴィアと申します。その……僕は養子でして」


「養子……。なるほど。つまり元は平民だったというわけね」


「いえ。実は……」


「汚らわしい。近づかないでくれる」


 口から鞭でも出てきたのではないかと思う程鋭い王女の声に、僕は思わず黙ってしまう。


 それにしても家族が揃ったというのに、随分と物々しい空気だ。

 一家団欒からはほど遠く、戦場にいるようだった。

 王族の空気感は、以前ロラン王子が毒を盛られた時から何となく察している。でも、僕が思っている以上に殺伐としていた。


「やめないか、お前たち」


 見かねた国王陛下が口を挟む。小さく吐いたため息は、なるべく自分の子どもたちに悟られぬようにするためだろう。陛下の気苦労が少しわかるような気がした。


「セレナ、ヴィクター、何用だ」


「お父様まで、それをお尋ねになるのですか?」


「父上が倒れたと聞いて、病床に見舞いにきたのですぞ、姉上と私は」


「ならば、もう良かろう。余はもうこの通り元気だ。見舞いが済んだのなら、それぞれの職務に戻るがいい」


「お父様。私はお父様のことが心配で」


「私も国王陛下のことを心配しておりました」


「何よ、ヴィクター。私の方こそ……」


「いや、これだけは譲れないね、姉上。私が1番国王陛下を……」


 ついには口喧嘩が始まる。

 醜い兄姉喧嘩に、ロラン王子は見てられないとばかりに、視線を切った。


「喧嘩なら余所でやれ。そもそもここはお前たち政治屋が来るところではない。お前たちがやっている忌まわしい権力闘争の場所ではないのだぞ」


 アウロ国王陛下は一喝する。


 さすがの貫禄といったところだろうか。

 セレナ王女も、ヴィクター王子も黙ってしまった。ロラン王子も驚いている。きっとこうして国王陛下が声を荒らげるのは、珍しいことなのかもしれない。


 借りてきた猫のように大人しくなった王子王女を見て、僕はちょっとだけ胸がスッとした。


「失礼しました、父上。ただ私もヴィクターも、父上が病に伏せったと聞き、気が動転しているのです」


「そうです。気が昂ぶっていて、ついロランにきつい態度を……」


 怒髪天を衝かんばかりに猛るアウロ国王陛下を諫める。

 このままじゃ本当に陛下の身体に悪そうだ。


「場所を変えませんか?」


「ルーシェルの言うとおりだ。父上の顔を見られたなら、もう十分だろ」


 シッシッとロラン王子は手を払う。


「私はいいわよ。あとはルーシェル君に聞きたいだけだし」


「僕に……?」


 セレナ王女、何の用だろう。

 ちょっと怖いかも。



 ◆◇◆◇◆



 一旦陛下の自室を辞すると、セレナ王女は開口一番こう言った。


「聞いたわよ、あなたたち。国王陛下はご病気じゃなくて、呪い――。そしてその呪い解くには『フェニックスの肝臓』が必要だって」


「姉様、話を聞いていたのですか?」


「ロラン、知ってるでしょ? 私の耳の良さを……。こういうことも知ってるわ。この子――ルーシェル君の秘密とか」


 僕とロラン王子は同時に息を呑む。


 ルーシェル・グラン・レティヴィアの秘密って、まさか……。


 僕とロラン王子の反応がさぞかし面白かったのだろう。セレナ王女は口端を緩め、さらにぺろりと唇を舐めた。


「私、見ちゃったのよね。この子が父上を助けたところ」


 ああ。そういうことか。

 あの場にいたというなら、仕方ない。


「ロランが手元に置きたがるのもわかるわ」


「違う! ルーシェルはそんなんじゃない!」


「そういうことにしておきましょ。――――で、面白いこと言ってたわね。『フェニックスの肝臓』だとかなんとか」


 もう聞き耳を立てていたとか、そういうレベルじゃないな。セレナ王女殿下は知っている。国王陛下の私室で、僕たちが喋っていたことを。


「察するに、それを手に入れるためにはフェニックスと戦わなければならない。しかし、そのフェニックスと戦うには、少々戦力を足りない。違う?」


 違わない。

 僕1人ではフェニックスからその肝臓を抜き取ることは難しいだろう。


「何を考えているんだよ、姉貴」


 横でずっとセレナ王女の話を聞いていたヴィクター王子も、その気の回しように何か不気味に思ったらしい。まるでお化けでも見たように顔を青白くさせていた。


「シンプルなことよ。私と組まない?」



 ルーシェルくん❤


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― 新着の感想 ―
姉が気持ち悪い…(。× ×。) これ、本質に触れたら悪夢見る系の悪女なんじゃないかと予想。 いやだって、キモイよるなの後に組もう❤とか、性格ブス過ぎて。
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