第24話 お嬢様
☆祝! 週間総合1位達成!☆
ブクマ、評価いただいた方ありがとうございます。
とても嬉しいです!
引き続き更新頑張りますので、よろしくお願いします。
こうして僕はレティヴィア家にお世話になることになった。
決めてしまうと、少し晴れ晴れとした気持ちになる。ただ300年ずっと住んでいた住み処から離れるのは、寂しいけど。
僕は必要最低限の分の荷物を持って、再びクラヴィスさんの下へやってきた。
帰ってくると、ミルディさんとリチルさんが、あの青い瞳の少女と花輪を作って遊んでいる。
僕の足音に気付くと、少女は反射的にミルディさんの後ろに隠れてしまった。
そっと顔を覗かせ、僕をあのまん丸い瞳で見つめる。
嫌われてしまったかな。
どうやらクラヴィスさんたちは気にしていないようだけど、小さな子どもには少々ハードな話だったかもしれない。
とはいえ、僕もさっきクラヴィスさんに「子ども」だと念を押されたところだけど。
「そう言えば、まだ紹介していなかったな」
クラヴィスさんは立ち上がり、少女に「近う」と手を振った。
やってきた少女の両肩に、クラヴィスさんは手を置く。
「我が娘リーリスだ。リーリス、ご挨拶を」
少女は上目遣いで僕を見つめる。
やがてスカートのつま先を摘まんで、頭を垂れた。
「こんにちは。リーリス・グラン・レティヴィアと申します」
「リーリス…………。えっと、お嬢……さま?」
リーリスお嬢様の声は、鈴が鳴るような声だった。
もっと聞いてみたいと思ったけど、リーリスお嬢様はすぐにクラヴィスさんの後ろに隠れてしまう。
「これ。リーリス。そういう態度は、ルーシェル君に失礼だろう」
クラヴィスさんは叱るが、リーリスお嬢様は僕をじっと見つめた後、客車の中へと戻ってしまった。
「すまんな、ルーシェル君」
「お気になさらずに」
むしろリーリスお嬢様の反応は自然なことだ。僕からすれば、あっさりと受け入れてしまったクラヴィスさんの方が異常に見える。
今すぐ仲良くなれないのは少し残念だけど、ゆっくりと自分の誠意を見せていくしかない。
「少々感受性の強い娘でな。本当はもっと活発な女の子なのだ」
「わかります。クラヴィスさんの娘さんなのですから」
「気になる」という理由だけで、公爵閣下は自らの足でこんな魔獣が出る山の麓まで出向いてくれた。普通の貴族はここまでフットワークは軽くない。
その血を引いているリーリスお嬢様も、きっと行動力のある女の子なのだろう。
客車から僕の方を覗くリーリスお嬢様を見つめて、胸に手を当てた。
「改めまして、ルーシェル・ ハウ・トリスタンと申します。しばらくご厄介になりますが、よろしくお願いします」
精一杯の礼節をとって、頭を下げた。
リーリスお嬢様は丸い瞳をさらに丸くする。
ちょっと顔を赤くした後、客車の中に隠れてしまった。
ちょっとわざとらし過ぎたかな。
頭を掻いていると、怪訝な顔を浮かべたのはクラヴィスさんだった。
「トリスタン?」
気付けば、皆がクラヴィスさんと似たような顔をしていた。
「はい。僕の家名です」
何かまずかったかな。
元【剣聖】の家柄だし。今でも残っていれば、由緒正しい、歴史ある名門になっていると思うけど。
「そうか。ルーシェル君はトリスタン家の子どもだったのか? なるほど。苛烈な子どもの育て方といい。さもあらんが……」
「まさかトリスタン家とは……」
何か雲行きが怪しくなってきたな。
「閣下、たとえ彼がトリスタン家の血筋だとしても――――」
フレッティさんは慌てた様子で弁解を試みるが、それを止めたのは主君自身だった。
「勘違いするな、フレッティ。この子を預かるという言葉を今さら違えるつもりはない。それに300年前といえば、トリスタン家はまだ武門の一派だった頃の話だ。この子は関係ない。いや、それも違うか。ルーシェル君も被害者の1人と言えるだろう」
その言葉を聞いて、フレッティさんはホッと胸を撫で下ろした。
「あの……」
1人事情を知らない僕は、クラヴィスさんとフレッティさんを交互に見つめた。
「少々長い話になる。馬車の中で話してあげよう」
それは本当に長い、僕が知らない300年の歴史だった。
昨日の話が反響がよかったらしく、
日間総合5位にも戻って参りました。
チート級に強いけど、精神的にはまだまだ未熟なルーシェルのこれからの人生を是非お楽しみください!
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