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第23話 孤独と名がついた山

日間総合から落ちてしまいましたが、

ハイファンタジーではまだまだ1位!!

頑張って更新続けるので、よろしくお願いします。

 300年……。


 僕の言葉がのどかな街道沿いの草花に落ちる。


 当然、みなさんは驚いていた。いや、もはや呆れかえっているかもしれない。


 でも、言わなければ良かったという後悔よりも、僕の胸中は思いの外すっきりしていた。


 みなさんが言葉を失う中で、1番始めに反応したのは、僕を鑑定したカリムさんだ。


 何か確信めいたことがあったのだろう。


 1つ大きく頷いた。


「彼は嘘を言っていません。多くの魔獣を食べるうちに、【不死】の力を得てしまったことは想像に難くない。そんな魔獣がいること自体驚きですが、実際そのスキルを確認しています」


 すると、クラヴィスさんはフレッティさんの方に振り返った。


「フレッティよ。そなたの勘――どうやら悪い方に当たったようだな」


「勘?」


 僕は首を傾げると、クラヴィスさんは僕を真っ直ぐ見据えた。


「そなたを我が家に招待する提案は、はじめフレッティからなされたのだ」


「フレッティさんが……」


「はっきり言おう。屋敷のものは懐疑的だった。かくいう私もそうだ。お主のように両親を亡くした子どもは少なくない。その子だけを特別視し、屋敷の食い扶持を増やすよりも孤児院に寄付を落とすことの方が重要だとな」


 高貴なる者の義務ノブレス・オブリージュは、貴族共通の道徳観だ。


 しかし、それを発揮されるのは、個人ではなく社会的なものだと、僕が昔読んだ本には書かれていた。僕1人を助けるよりも、効果的に多くの人を助けることこそ寛容だという教えである。


 故にクラヴィスさんの言うことはもっともだった。


「しかしだ」


「え……」


 いつの間にか下を向いていた僕の顔が上がる。再びクラヴィスさんと目を合わせた。


「フレッティはこう言った」



 彼が抱える孤独は我々が知るものよりも遥かに大きく、歪です。私は彼を保護するのではなく、この家で彼に欠けてしまった何かを取り戻してもらいたいのです……。



「フレッティの言葉を聞いて、私は君のことに興味を持った。だから、こうして自らの足で君に会いに来た。そして、フレッティの言葉はまことであったと確信した」


 クラヴィスさんは手を伸ばし、そっと僕の手を取る。まるで野花の花弁に触れるように優しく、慈愛に満ちていた。


「改めて言う……。ルーシェル君、私の屋敷に来ないか?」


「え? でも……。僕のことを気持ち悪いと思わないのですか……」


 子どもの顔をし、300年生き、魔獣を食べ、強者顔負けのスキルの持ち主。


 正体もわからない人間を、それでも屋敷に招こうというクラヴィスさんの提言に、逆に僕は戸惑ってしまった。


「君の生い立ちを考えれば、少々特殊化しても驚きはしない」


「でも、怖くはないのですか? クラヴィスさんからすれば、僕はまるで――――」




 化け物みたいに見えるんじゃ?




 大勢の野盗を屠り、野盗の頭領ですら一撃で粉砕した。普通の人から見て、僕は間違いなく凡才ではないかもしれない。


 父のように強くなり、いつか父に認めてもらうために僕は強くなることに夢中だった。


 でも、フレッティさんたちと触れあうことで、やっとわかったことがある。


 多分、僕は自分が思うほど平凡ではなくなっていることを。


「ぬははははははは!」


 突然、クラヴィスさんが笑い出して驚いてしまった。


 ニヤリと僕の方を向いて笑みを見せると、僕の頭を少し乱暴になで回した。


「化け物か……。確かにそうかもしれぬ。300年生きてきた人間なんて、私は初めて見た。人から外れる言葉を『化け物』というなら、君の言うとおりなのだろう」


「クラヴィス閣下――――」


 フレッティさんは何かを言おうとしたが、その前にカリムさんに遮られてしまった。


「しかし、ルーシェル君。君は300年生きてはおるが、私から見ればまだまだ子どもだ」


「僕が……子ども?」


 僕はもうかれこれ300年生きている。


 そんな僕が子どもなんてことあり得るのだろうか。


「君は多感な時期を、1人で孤独に暮らした。しかも、その大人びた性格も少し災いしているようだ。300年間生きていながら、君は子どものような口調をしているのも、精神的には成長していないからではないかな?」


 確かにそうだ。


 僕は年齢を重ねるごとに、口調を変えたり、性格を変えたりしてみた。


 けれど、何か自分が成長していってるような気がしなかった。


 身体は強くなったけど、精神的には山に来た時の5歳から何1つ変わっていない。


 今の「僕」という一人称もしっくりくることからも明らかだろう。


「故に、私は君を屋敷に招きたい。これは同情でもなければ、保護でも、施しでもない。……君を救わせてほしい(ヽヽヽヽヽヽヽ)


 クラヴィスさんは立ち上がり、改めて僕に手を伸ばした。


 それが握手であることはわかった。


 そしてその手に載っている待遇も、彼らの優しさや、言葉の真実。


 そして、手に取った瞬間、僕が送ってきたこれまでの人生が一変することを……。


 300年……。


 それは僕の上にずっと重しのように載っていた。


 いや、少し違うかもしれない。


 重しのように載っていたのは、300年という歴史ではなくて、多分ずっと僕が言い出したくても、言い出せなかったわだかまりなのだ。


 孤独。わがまま。人肌のぬくもり……。


 山にはなかった様々な感情が、気が付けば山のように堆積していた。


 今、それが解放されるかもしれない。


 僕は無意識にクラヴィスさんの手を取っていた。


 温かい……。そして優しい……。


 人のぬくもりを感じて、僕の目頭は熱くなった。


 嗚咽を堪えきれることが出来なくなり、僕は泣き出す。


 同時に僕の上にのしかかっていた孤独と名の付いた山が、ガラガラと音を立てて崩壊し始める。


 300年の間ずっと止まっていた時が、ようやく動き出した。


 そんな気がした。


「面白い」「飯テロはよ」と思っていただいた方は、

是非ブックマークと、下欄にある☆☆☆☆☆を押してもらって評価の方よろしくお願いします。

あと、もうちょっと週間総合1位に入れそうなので、

引き続き応援いただけると嬉しいですm(_ _)m

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― 新着の感想 ―
[気になる点] ドラゴンのお肉食べた時に書いてあった不老ではなく、不死?
[一言] ん〜分からなくもない感じっ!ってのが第一印象。 今後、主人公が人と関わってどう変わるかによって 「なるほどっ!」と思えそうな理由だった。 とりあえず。更新を楽しみにしてますっ。
[良い点] これは神回です。この展開ほんとうに素晴らしい。感動しました。
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