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第229話 ヴァンパイアキラー

◆◇◆◇◆ コミカライズ更新 ◆◇◆◇◆


ヤンマガWEBで最新話更新です。

納涼祭の準備に追われるルーシェル。

懐かしい相棒とも再会する一方、残されたリーリス、ユランは……?

てぇてぇ内容になってますので、是非!


挿絵(By みてみん)

 空に広がった穴から、ブルーバットベアが落ちてくる。

 子ども祭――その会場となった場所に次々と降り立った。


『ルーシェル、見えているか?』


 ロラン王子の声が、【移声】の魔導石から聞こえてくる。

 かなりの緊急事態なのに、ロラン王子の声は僕が握る魔導石のように冷えていた。


「はい。見えてます」


『この量のブルーバットベア、恐らくだがヤツらの狙いは獣人でも、子ども祭でもない』


「どういうことですか、王子?」


『ブルーバットベアをざっと200匹は確認した。Aランクの魔獣が200匹だ。これは戦力でいえば、1個師団に相当する。もうこれは立派な軍隊だ』


「え……?」


 僕は思わず絶句する。

 ロラン王子は構わず話を続けた。


『それが王都のど真ん中に現れた。つまり、あいつらの狙いは……』


「王宮……?」


『その可能性は高いだろうな』


 割り込んできたのは、カリム兄さんだった。

 どうやらレーネルの魔導石を使ってるらしい。


『反獣人派に問い詰めたが、箱の中身は爆弾としか知らされていなかったようだ』


「実際は大規模な召喚魔法を行う魔導具だったということですか?」


『彼らも体よく使われたのさ。他の誰かにね』


 普通、あんな物騒なものを王都の中に入れるのは至難の業だ。

 でも反獣人派であるなら、爆薬やそれ以上に危ないものを入れるルートを知っている。

 それを知った上で、誰かが爆弾を偽って、反獣人派の人たちにここまで運ばせたんだろう。ジーマ初等学校から国王陛下がいる王宮まで目と鼻の先だ。場所としてもちょうど良かったんだと思う。


 今思えば、公園に現れたブルーバットベアーはこの時のための予行演習だったのかもしれない。


『主犯を捜すのは後回しだ。このままではまずいぞ』


 現れた魔獣に子ども祭はもうパニックだ。


「退路を確保しろ。ミルディ! リチル! 参加者の誘導を」


 フレッティさんはすぐ切り替え、参加者の護衛と避難を始めていた。

 さすがフレッティさんだ。判断が早い。


『キャアアアアアアア!!』


 悲鳴が魔導石から聞こえた。

 ナーエルの声だった。


「大丈夫、ナーエル! レーネル!」


『大丈夫だ。心配ない』


 返答したのはカリム兄さんだ。

 おそらくブルーバットベアーに襲われたのだろう。

 3人がいるのは、子ども祭会場の外れだ。

 かなり広い範囲にブルーバットベアーが出現している。

 学園全体がすでに取り囲まれているかもしれない。そうなると逃げ場はなくてなってしまう。


 このままでは初めての子ども祭で怪我人が出るかもしれない。

 折角、半年かけてやってきたのに……。

 少しずつだけど、平民と貴族のわだかまりがなくなってきたのに……。

 こんなに素敵な祭りを来年も、再来年もできなくなるなんて絶対にダメだ。

 貴族と平民が共に手を取る未来。それを実現するためにも、子ども祭は必要なんだから。


「ロラン王子、あれを使いますよ」


『あれって? そうか。まだあれがあったか?』


『王子、ルーシェル。君たちは一体何を……。あれとは?』


『ルーシェルが考えた、対魔獣用の兵器よ』


『へ、兵器?』


 ロラン王子の言葉に、カリム兄さんは素っ頓狂な声を上げた。

 かなり驚いているけど、『兵器』と聞いて、どんなものを想像してるんだろう。


『ルーシェル、そ、それは大丈夫なものなのかい? その……(校舎を吹っ飛ばしたり、とか)』


「何か言いましたか、カリム兄さん?」


『いや、何でもない』


「ご心配なく。あの兵器なら、今の状況をひっくり返すことができます」


 僕は【拡声】を使って、声を大きくする。


「ジーマ初等学校の生徒と教員のみなさんにお知らせします。今、学校は緊急事態にあります。至急、赤い実を食べてください」


 僕は今の言葉を【輪声】の魔法を使って、繰り返す。

 通達を聞いた教員は、近くにいた子どもに指示し、言われるまま事前に渡しておいた種を飲み込んだ。


『ルーシェル、種を飲み込んだが、この後どうすればいい。これで口から火でも吹くことができるのか?』


「そんな危ない種を渡しませんよ、王子」


『なんだ、つまらぬなあ』


 今が緊急事態って認識あるのかな、ロラン王子。

 修羅場には慣れてるって言ってたけど、さすがに余裕がありすぎるでしょ。


「火を吹くよりももっと凄いですよ」


 すると、近くで悲鳴を聞こえた。

 女子生徒数人がブルーバットベアーに襲われている。

 それを見た僕は、女子たちに「赤い実」を飲み込むように指示した。


 どうやら僕の授業を受けている生徒らしい。

 言われるままに種を飲み込む。

 効果はすぐに現れた。


『うがががががッッッッ!!』


 悲鳴を上げたのは、ブルーバットベアーだった。

 その爪が女子生徒の顔を引っ掻こうとした時、動きが止まる。

 鋭い爪のついた手を自分の鼻先に近づけると、鼻穴をおさえる。

 さらに目から涙が流し、1歩、2歩と後退した。

 ブルーバットベアーが怯んだのを見て、女子生徒は距離をとる。


『これは?』


 カリム兄さんの方でも同様のことが起きているらしい。

 僕の周囲のブルーバットベアーも次々と赤い実を食べた生徒から離れて行った。


『ルーシェル、これはどういうことか説明しろ。あの種はなんだ?』


「ロラン王子に説明したんですが……。ヴァンパイアキラーの実です」


『『う゛ぁ、ヴァンパイアキラーの実!!』』


 ロラン王子とカリム兄さんの声が、ものの見事に重なった。


 ヴァンパイアキラーの実は名前のごとく、ヴァンパイアが食べると死んでしまうと言われている実だ。見た目は鳥類がよく食べるナンテンの実に似ているけど、これはまったくの別物だ。吸血鬼族の人はこの実を食べると死んでしまうというのは本当で、カンナさんは匂いを嗅ぐだけでもイヤだと言っていた。


 そのカンナさんから教えてもらったのが、この実の匂いは多くの魔獣にも効くということだ。ヴァンパイアキラーは人間には無害なのだけど、ブルーバットベアーのような魔獣もこの匂いを苦手とするらしい。火で燻すだけでも嫌がるようだけど、なんと言っても人間の唾液と交わった瞬間が1番キツいと、カンナさんは教えてくれた。


 ちなみに普通の人間はまったく感じることができない。


「Aランクのブルーバットベアーが王都に出てきた時、僕はこういう事態になる可能性をあらかじめ考えてました。子どもたちを魔獣から守るためには、この方法が1番だと考えたんです」


 子ども祭のコンセプトは、子どもたちが運営する祭りであること。

 ならば、子どもを守るためには、子ども自身が自衛能力を持った方がいいと、僕は考えて、3つの種実を生徒たちにあらかじめ渡しておいたのだ。


「フレッティさん、生徒の方は大丈夫です。引き続き退路を確保するとともに、ブルーバットベアーを王宮に近づけさせないようにしてください」


『ルーシェルよ。今、クライスを向かわせた。じきに王宮から応援がくるはずだ』


「――――だそうです、フレッティさん」


 僕は【拡声】を使って、会場内にいるフレッティさんに直接声を届ける。

 瞬間、王宮とジーマ初等学校の間にある広場で火柱が上がった。

 それがまさに【紅焔の騎士(クリムゾンナイト)】の返事だった。



 ◆◇◆◇◆



「聞いたな、ガーナー。久しぶりに我ら騎士団の出番のようだぞ」


 フレッティは1匹のブルーバットベアーをなぎ倒す。

 熊の魔獣はあっという間に灰燼と化した。

 炎の魔剣フレイムタンの威力に驚きながら、無口な戦士ガーナーは頷く。

 その彼の足元にも討ち取ったばかりのブルーバットベアーがいて、すでに結晶化していた。


 ガーナーが頷くと、フレッティは唇を引き締める。


「行くぞ! レティヴィア騎士団の力を存分に見せるのだ!!」


『オオッ!!』


 レティヴィア騎士団は迫ってくるブルーバットベアーに襲いかかるのだった。



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挿絵(By みてみん)

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