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第227話 レーネルとナーエル

☆★☆★ コミカライズ更新 ☆★☆★


ヤンマガWEBにて最新話が更新されました。

納涼祭編がスタートしております。

例の相棒が久しぶりに登場しております。書籍版、単行本が好きな方が是非!


挿絵(By みてみん)

 僕たちはジーマ子ども祭に仕掛けられた爆弾を探す。

 予想はしていたけど、簡単には見つからない。物も人も溢れていて、さらに出店からは美味しそうな香りが漂ってくる。山で魔獣を食べるうちに鍛えられた僕の臭覚や聴覚も、ここでは形無しだ。今は目と勘だけが頼りだった。


 トワイライトコンサートは子ども祭の目玉企画だけあって、まだ1時間以上もあるのに席取りをしている人がいる。子どもスタッフも教師の指導をあおぎながら、作業に追われていた。


 そんな中、僕はさりげない様子で爆弾を探す。

 そうこうしているうちに、リーリスの声が【移声】の込められた魔導具から聞こえてきた。


『こちら、リーリスです。ユランと一緒に舞台の裏を探しましたが、それらしいものは見つかりませんでした』


『今のところ怪しいものはおらんな』


 さらにユランの声が聞こえてくる。


『引き続き警戒を頼む。トワイライトコンサートでなければ、次に狙われるとすればお前たちの演劇だからな』


『わかりました』


 ひとまずリーリスたちは安心して、劇に出られそうだ。

 さらに屋外テラスの可能性も高まったことになる。


 すると、魔導具から違う声が聞こえてきた。


『シャイロです。不審者の情報ですが、すでに23件が出ていて、20件が騎士団が対応済みです』


『残り3件は?』


『騎士団が捜索中ですね。特徴は――――』


 シャイロは不審者の特徴を告げる。

 1人目は男性。身長は高く、細身。1人で行動していたみたいだ。

 2人目は女性。小柄で、ショートカット。子どもしか立ち入らないところに入ってきたらしい(生徒からの通報)。

 3人目は男性。50代後半ぐらい。酔っていて、他の参加者の親御さんと喧嘩になりそうになったらしい。


『聞く限り、3人目は一旦除外して良いだろう。1人目と2人目は怪しいなあ』


 僕の気のせいだろうか。

 ロラン王子の声が弾んでいるように思う。

 この状況で余裕があるのは、さすが王子だ。


「ロラン王子、なんだか嬉しそうですね」


『なんか言ったか、ルーシェル』


「なんか堂々としているというか、余裕があるというか?」


『悲しいかな。こういう生死をかけた駆け引きは王宮では日常茶飯事なのでな』


 じゃあ、なんで楽しそうなんだろう。

 まあ、ある意味頼もしいけどね。


『各位、爆弾と一緒に特徴が一致する不審人物も捜してくれ。その近くに爆弾があるかもしれないからな。シャイロは引き続き不審人物の情報を収集してくれ』


『わかりました』


 その後、特に進展はなく、時間だけがいたずらに流れていく。

 コンサートまで1時間を切り、徐々に人が集まってきた。

 この様子だと、屋外テラスがぎゅうぎゅうになるぐらい人が集まるかもしれない。


 そんな中、僕は件の不審人物と男の人を見つけた。

 独り身で子ども連れという雰囲気ではない。

 それだけで不審人物とは言えないけど、落ち着きがなく、何度も時計を確認していた。


「ロラン王子、報告があった不審人物と特徴が一致する人を見つけました」


 報告すると、ちょうど時を同じくしてレーネルからも報告が届く。


『こっちも見つけたよ。ぼくの方は女の人だね。立ち入り禁止の場所に入っていった』


『わかった。クライスをレーネルの方に向かわせる。ルーシェルは引き続きその不審人物を監視してくれ』


 ロラン王子の指示が飛ぶ。

 同い年とは思えないほど、的確だ。


『ぼくたちは女の人を尾行するね』


 その報告を最後に、レーネルの声は聞こえなくなってしまった。



 ◆◇◆◇◆ レーネル ◆◇◆◇◆



「ナーエルはここにいて」


 不審人物の対象になっている女性を追いかけようとすると、レーネルはナーエルに指示した。もしかして荒事になるかもしれない。そんな時、ナーエルを守れるかどうかわからない。レーネルなりの優しさだったのだが、ナーエルは返事をしなかった。じっとレーネルを見つめる。


「どうしたの、ナーエル?」


「そ、その……」


 ナーエルはモジモジし始める。

 その様子を見て、レーネルはハッと何かに気づいた。

 普段なら気づかない些細なリアクションだったが、今ルーシェルの青い実を食べて、感覚が鋭敏になっているからか、なんとなく親友が言いたいことを察することができた。


「わかった。一緒に行こ」


「え? いいの、レーネル」


「一緒にいて欲しいんだ、ぼくが。君を守るために」


「レーネル。うん。行きましょう!」


 2人は手を取り、不審人物を追いかけた。





 女性の動きは明らかにおかしい。

 どんどんと人気のないところへと歩いていく。

 レーネルは少し嫌な予感がしていた。ナーエルも同じ気持ちらしい。繋ぐ手の力が徐々に強くなっていく。発汗量も増えていった。


 女性は木箱の前に膝をつく。そっと中身を確認した。

 木箱は資材などを入れるためのもので、周囲にも似たような箱がゴロゴロと転がっている。そんなもの子どもかサポートスタッフしか用のないはずだ。


 様子を見ながら、レーネルは迷っていた。

 ロラン王子に連絡するのが1番なのだろうが、相手との距離が近い。魔導具を使えば、声が聞こえてしまうかもと考えた。このまま手をこまねいていたら、爆弾は確保できても、犯人が確保できなくなる。


 できれは、どっちも(ヽヽヽヽ)捕まえたかった。


 レーネルはナーエルに目で合図を送る。

 ナーエルも同じ思いだったようだ。

 目でコンタクトしたあと、レーネルは物陰から飛び出した。


「動くな。そこで何をしている」


 女性は反射的に立ち上がる。

 レーネルの姿を見て、ハッとなった。


「レーネル・ギル・ハウスタン! なんでここに?」


 その反応から、レーネルは女性が反獣人派(くろ)だと確信した。


「その箱から離れるんだ。こっちはそれが爆弾だってわかってるんだからな」


「待って。誤解してる。私はね。この爆弾を解除しにきたの」


「そう。組織の命令だとしても、なんの罪もない子どもを殺すなんておかしいわ。だから、私は爆弾を解除しようと戻ってきたのよ」


「え? そうなの?」


「そうよ。今から起爆用の魔導具を外すわ。手伝ってくれる?」


「……わかった」


 レーネルは女性に近づいていく。


「悪いけど、中身の魔導具を取り出してくれない。私じゃ重たくて。獣人のあなたなら」


「いいよ」


 レーネルは箱の中を覗き込む。

 背を見せた獣人を見て、女性の表情が一変する。


「所詮は子どもね」


 ベルトの裏に隠し持っていたナイフを取り出すと、レーネルに振り下ろそうとする。だが、その時女性の顔面に何かがぶつけられた。爆弾の装置の一部だ。

 裏をかこうとした女性が逆に怯む。

 次に彼女が見たのは、レーネルの鋭い爪だった。


「ギャっ!」


 悲鳴をあげて、女性は倒れる。

 レーネルが追撃しようとした時、別の方向から声が聞こえた。


「動くな!」


 声を張り上げたのは、赤ら顔の男だ。

 おそらくシャイロが言っていた3人目の不審人物だろう。

 その男の手が、今レーネルの親友ナーエルに伸びて、はがいじめにしていた。


「ガキが! チョロチョロと動き回りおって。だが、まさかレーネル・ギル・ハウスタン。お前が現れるとはな。人質にして、にっくき【剣王】を――――」


「無理だよ」


「何?」


「父上は誇り高い人だ。人質をとったって、テロリストになんかに屈したりしない。そもそもぼくを人質にするなんて無理だよ」


「黙れ! お前の同級生がどうなってもいいのか?」


 男はさらに身体を寄せて、ナーエルに対する力を強める。


「ナーエル。今だよ」


「はい!」


 歯切れのいい返事の後、ナーエルは口の中に忍ばせていた何かを砕く。その瞬間、ナーエルの身体から雷撃が放たれた。感雷した男はのけぞる。気を失うまでもなかったが、ナーエルから手を離した。


「なんだ、今のは……あっ――――」


 気がついた時には遅い。

 レーネルの速攻は男の反応を許さず、馬乗りになる。

 子どもの体重ぐらいなら跳ね返すこともできただろうが、レーネルの爪が男の首を掴んだ。ゾッとするほど冷たい爪の感触に、反獣人派の男の顔からみるみる血の気が引いていく。


「君たちが2人いたことはわかっていたよ」


「な、なぜ?」


「お酒の匂いさ。獣人の鼻を舐めないで欲しいな。酔っ払いのフリをするなら、お酒は飲まない方がいいと思うよ」


「くそっ! 待っ――――」


 レーネルの爪が男の首を裂くのかと思ったが、違う。

 代わりに、男の額に渾身の拳打を見舞う。

 痛烈な一撃をくらって、男は意識を失った。


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