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第224話 ゴーストハウス

☆★☆★ コミカライズ更新日 ☆★☆★


ヤンマガWEB更新です。

続賄い編です! 果たしてルーシェルは合格できるのでしょうか?


挿絵(By みてみん)

「うまい!」


 歩きながら声を上げたのは、クラヴィス父上だ。手には丸いケーキが入った紙コップを持っている。ケーキの大きさは先ほど家族と一緒に食べたたこ焼きぐらい。それが紙コップの中に5個入っていた。


「このケーキもルーシェルが考えたの?」


 横でおいしそうに頬張るクラヴィス父上を見ながら、ソフィーニ母上は尋ねた。


「実は最初に考え付いたのが、そのケーキなんです。僕はベビーケーキと呼んでますけど」


「ベビーケーキ! かわいいネーミングね」


「先ほどのたこ焼き用の鉄板で、パンケーキを焼いただけなんですよ。ただ砂糖の代わりに蜂蜜を使ってますけど」


「おお。蜂蜜か。それは良い」


 クラヴィス父上は蜂蜜が好きだ。父上だけじゃない、母上もカリム兄さんも、リーリスも蜂蜜が好物だったりする。エルフ族は昔から蜂蜜を好物にしていて、大手の養蜂場はたいていの場合、エルフが経営していたりする。


「あなた、歩きながら食べるのはお行儀悪いですよ」


「母上、子ども祭では食べ歩きが承認されてます。だからどんどん……っていうのもおかしな気がしますが、食べてください」


「え? いいの?」


 驚くソフィーニ母上を見て、リーリスが説明した。


「子ども祭は子どものお祭りなので。普段できないこともやろうというのが、コンセプトなんです」


「なるほど。だから食べ歩きも奨励されてるのね。じゃあ、わたくしもいただいちゃおうかしら。えい!」


 ソフィーニ母上はクラヴィス父上が持っていた最後のベビーケーキを取り上げる。そのまま自分の口の中に押し込んだ。


「おいしい。生地がしっとりしていて、甘さもちょうどいいわ」


 実を言うと、ベビーケーキは普通のパンケーキの焼き方をしていない。生地を型に流し込んだ後、お湯で蒸し上げているのだ。そのおかげで、しっとりとした食感になる。

 焼くより蒸す方が、火傷のリスクが減ることからも、後者を選択した。


「こうやって食べ歩きすると、昔のことを思い出すな、ソフィーニ」


「若返ったようですわ」


 ソフィーニ母上は父上の手を取る。

 相変わらずレティヴィア家の夫婦の仲は、出来上がったばかりのたこ焼き以上に熱々だ。


「演劇も見たし、お腹も膨らんだ。他に何か面白そうな催しはないかな」


 今はお昼を過ぎたばかりだ。

 午後もう1度リーリスの劇があり、さらに目玉の出し物として、ロラン王子と楽団の演奏会がある。正直に言うと、身内以外の出し物についてあまり知らないんだよなあ。子ども祭で使う材料のことで頭がいっぱいだったし。


「あ、あの、ルー……」


 リーリスが僕に声をかけようとした時、クラヴィス父上は少々興奮気味に指差した。


「おお! ゴーストハウスか! なつかしいなあ」


 こういうお祭りでは定番の催しだ。

 生徒が演じるゴーストや、おばけを疑似体験する――所謂お化け屋敷という奴である。


「ソフィーニ、入ってみるか」


「いやですよ、わたくしは。子どもじゃあるまいし」


「このお祭りは童心に帰るのが目的なのだぞ。わかった。よし。カリム、私と行こう」


「え? いや、僕は……」


「なんだ? 怖いのか?」


「ば、バカにしないでください、父上。子どもが作ったものですよ」


「では行こう」


 クラヴィス父上はカリム兄さんと一緒にゴーストハウスの中へと入っていく。親子の後ろ姿を見ながら、ソフィーニ母上はため息を吐いた。


「ああいうのが好きなのは、昔から変わってないわねぇ」


「昔からなんですか?」


「そうよ。自分が1番怖がりなのにね。……それにしても随分と気合いの入ったゴーストハウスね。普通教室を使ったりするのに、わざわざ外に建てるなんて」


「はい。建材を作りすぎちゃって……。ならいっそ外に作ってしまえと、ロラン王子が。でも、外だけじゃないですよ。中身もすごいんですから」


 中身を知ってるリーリスと顔を合わせて、お互い苦笑いをする。


「へ~。どう凄いの、ルーシェル」


 ソフィーニ母上が質問した時だった。


「「うおおおおおおおおおおおおお!!」」


 猛烈な勢いでクラヴィス父上とカリム兄さんがゴーストハウスの出口から出てくる。2人の息は切れていたけど、顔は真っ青だ。まさに幽霊を見たという顔をしている。


「ちょっと。2人とも大丈夫?」


「ぜぇ! ぜぇ! ちょ……。な、なんだ、あれは」


「リアル過ぎる。本当のゴーストかと思いました。危なく魔剣を使うところでしたよ」


「やだぁ。2人とも。大の大人が何をそんな……。本物のゴーストが、学校の敷地にいるわけないでしょ?」


「本物のゴーストですよ」


「……」


「……」


「……」




 え……??




「ルーシェル、今なんと?」


「じょ、冗談よね、ルーシェル」


「ルーシェル、なかなか冗談がうまくなったじゃないか」


「いや、ですから……。本物です」


 再び両親と兄さんは固まった。


「「「ええええええええええええ!!」」」


 絶叫する。


「る、ルーシェル! さすがにそれはまずいだろ」


「そ、そうですよ。ゴーストハウスに本物を入れるなんて、万が一のことがあったら」


「ルーシェル、今回さすがの僕でも擁護できないなあ」


 総ツッコミだ。

 ま、まあ……。最近ちょっと自分が色々とやらかすトラブルメーカーであることは自覚できてきた。でも、この反応は何となく予想はしていたから、驚きはしない。


「落ち着いてください。一応学校の許可はちゃんと取ってますし、あそこにいた魔物は無害なので安心してください。こちらから直接的な危害を加えない限りは安全です」


「ど、どういうことだ?」


「生徒に【使役(テイム)】させたんです」


「せ、生徒って……。ここのか?」


「はい。そうです、父上」


「でも、魔物はそんな簡単に【使役(テイム)】できないだろ」


「それが簡単に【使役(テイム)】できる方法があるんです」


 僕が【収納】の中から取り出したのは、拳サイズの団子だ。


「これは僕がモンスターボールと名付けている魔獣用の餌付け団子です。中身は魔獣のお肉と、コン蘭という魔花のエキスを混ぜ合わせて作ってます」


 コン蘭から出るエキスは魔獣を一時的な催眠状態にして、大人しくさせる。魔獣が動かなくなったところに、【使役(テイム)】するのだ。


 魔獣が口にしても利くけど、コン蘭のエキスはかなり強力で、その香りだけでも魔獣を催眠状態にしてしまう。ゴーストもアンデッドも関係ない。おそらくだけど、身体の中の魔晶に直接作用しているのだろう。


「【使役(テイム)】のスキルは割と簡単に覚えられるものなので、子どもでも訓練するれば問題ないのではと思いまして」


「つまり、あそこにいるゴーストやアンデッドを操っているのは、子ども……ということか」


 クラヴィス父上、カリム兄さんは呆然とする。

 ソフィーニ母上はホッと胸を撫で下ろしていた。

 どうやら、また僕はやらかしてしまったらしい。


 まあ、今回はこういうリアクションになるだろうなと思ってたけど……。それぐらいには、僕も成長したってことかな……。


 僕が遠い目をしていると、突然クラヴィス父上とカリム兄さんが騒ぎ始めた。


「カリム、こうしてはいられないぞ」


「はい。父上!」


 いきなりどうしたんだ、父上も兄さんも。


 二人はがっしりと肩を組むと、またホラーハウスに入ると言いだし始める。


「ゴーストを間近で観察するチャンスだ!」


「こんな機会、滅多にありませんからね!」


 興奮した様子でレティヴィア親子は、ホラーハウスに再び突撃していく。

 すると、父上と兄さんの高揚した声が、聞こえてきた。

 僕は母上とともに、呆れた様子で見つめる。


 どうやら今回やらかしているのは、僕だけではなさそうだ。 


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― 新着の感想 ―
[一言] ああ、なるほど。完全にテイムされてて無害なゴーストなら観察しまくる大チャンスなわけですね。盲点でしたw
[気になる点] 一人、声をかけそこねたかわいそうな娘に救済処置をお願いします [一言] ゴースト、ゲットだぜ! ですね、わかります
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