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第208話 サプライズ登場

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挿絵(By みてみん)

 ◆◇◆◇◆ 時は少し遡る…… ◆◇◆◇◆



「王都内にAランクのブルーバットベアーが出た?」


 ルーシェルが遭遇したブルーバットベアーの事件は、次の日には王宮で噂になっていた。


 ロラン王子は剣の鍛錬をしている最中、その話を新しく側付きとなったクライスからもたらされた。若くして隠居すること(ヽヽヽヽヽヽ)になった(ヽヽヽヽ)ユージェヌ王子の元秘書である。


 少しロラン王子の剣の腕前について話しておくと、6歳とは思えないほどの上達ぶりで、すでに騎士たちから一目置かれている。今、稽古をつけているのも、王国が誇る騎士団長だ。とはいえ、所詮子どもの剣。相手をする騎士団長の表情には十分な余裕があるのだが、時々ヒヤリとするような一撃を王子は繰り出してくる。


 ロラン王子の立場はユージェヌ王子が隠居した後に大きく変わった。王位継承権の序列が1つ上がったこともそうだが、その前の『狩初めの儀』において、国王から一目置かれたことも大きい。


 『狩初めの儀』を機に、序列が上の王子や姫から睨まれることとなったが、ロラン王子は優秀な(ヽヽヽ)側付きのおかげで比較的健やかに暮らせている。


 さてクライスから例の件を聞いたロラン王子は一旦休憩に入ることにした。タオルで汗を拭き、クライスが持ってきたアイスティーに口を付ける。


「それはまた面妖な事件だな。王都を包む結界は正常に作動していたのだろう?」


 王都には特殊な結界が張られていて、魔獣が入り込めないようになっている。特に王都に貼られているものは強力で、Aランク以上の魔獣でも入り込むことは難しい。


「魔法士たちが確認しましたが、問題なく」


「それでお前が余にこれを話したというのは、『ただ気を付けよ』というだけの警告だけではないのだろう」


「実はこの件、ルーシェル様が関わっておりまして……」


「ルーシェルが?」


「はい。独自の見解をレポートして、クラヴィス様経由でこちらに――――」


「待て待て! なんでルーシェルが王都にいるのだ!? 余は何も聞いてないぞ」


「この春よりジーマ初等学校にご入学された、と……。ルーシェル様より聞いていなかったのですか?」


 ロラン王子とルーシェルは冬の間、手紙でやりとりして、互いの近況を報告しあっていた。しかし、そこにはジーマ初等学校の「ジ」の字も存在していなかったのだ。


「あやつめ……。余のことを忘れておるのか?」


「不敬罪で逮捕しますか?」


「そんなことで王族の強権など発動できるものか。どうせルーシェルのことだ。余を驚かせようとでも思って、黙っていたのだろう。ところが学校というのが思いの外面白くて、余のことをすっかり忘れていたに違いない」


 ロラン王子の指摘はほとんど当たっていた。初等学校の入学が決まったのが唐突であったことと、その勉強のために手紙をしたため報告する暇もなかったことが概ねな事実だが、ロラン王子のことをすっかり忘れていたことは間違いないなかった。


「クライス、手続きをしろ」


「はっ? 手続き?」


 普段、感情をあまり表に出さないクライスの眉宇が動く。


「初等学校入学の手続きだ。こうなったら、余があいつの前に現れて、驚かせてやる。サプライズという奴だ」


「王族が貴族の子どもの通う学校に入学するだけで、十分サプライズだと思いますが」


「ダメなのか?」


「手続き上は問題ないかと……。過去に例がないというわけではありませんので」


「なら急げ」


「御意に」


 クライスは恭しく頭を下げて、その場から離れて行った。


 休憩が終わり、再びロランは訓練用の木剣を手に取る。

 相手をルーシェルに見立てて構えると、ニヤリと笑った。


「待っていろよ、ルーシェル」



 ◆◇◆◇◆ 現在 ◆◇◆◇◆



「カッカッカッカッ! 驚いたか、ルーシェル。サプライズ成功だな」


 それは夢でも幻でもない。

 妖精の羽のように綺麗で淡い金髪。対して、炎のように燃え上がった赤銅色の瞳。そして色白の肌。静と動というか、幻想さの中に無邪気さが混在しているというか。

 ともかくロラン・ダラード・ミルデガード王子が僕の前に立っていた。


 これがサプライズ成功だというなら、本当に大成功だ。ただロラン王子は僕だけをビックリさせたかったのかも知れないけど、その狙いは大きくはずれていた。ロラン王子の姿を見た、その場にいる全員が驚いていたからだ。


「お、王子……」


「別に謝罪など必要ない。お前のその顔が見られただけで余は十分だ」


 僕は「あっ」と気づく。

 そう言えば、ロラン王子に僕がジーマ初等学校に入学するため、王都に来ていることを報告していなかった。

 王都にやってきた当初は、サプライズでご報告に窺おうと思っていたけど、教師の依頼を受けたりして、入学当初からバタバタしていたからスッカリ忘れていたのだ。


 まさか僕がサプライズを受けることになるなんて……。さすがはロラン王子。そのために学校までやってくるなんて凄い行動力だ。


「殿下、お久しぶりです」


「おお、リーリス。久しぶりだな。随分とソフィーニに似てきたな。しばらく見ない間に見違えたぞ」


「殿下ったら……」


「ふん。相変わらずだな、小僧」


「ドラゴン娘までいるのか。カカッ! これは学校生活が楽しみだ」


 ロラン王子は大げさに笑う。

 僕は聞き捨てならない単語を聞いて、質問した。


「学校生活って……。もしかして王子、入学されたんですか?」


「なんだ? この制服を見て、わからんのか?」


 ピッタリと王子の身体にあった制服の裾を引っ張る。

 誰かの制服を着たわけじゃないことは明白だった。


「余もジーマ初等学校に通うぞ」


 いきなり目の前にロラン王子が現れたこと以上に驚きだ。いや、本来王宮にいる王子が学校にいることだけで驚きなのに、学校に通うなんて。

 ロラン王子の宣言は、他の生徒の耳にも入ったらしく、にわかに騒がしくなる。熱烈歓迎というよりは、戸惑いの方が多かった。


 後で聞いた話だけど、王族が学校に通うことは前例がないわけじゃないらしい。でも、王族は要人だ。市中に出て命が狙われるとも限らない。だからこそ王宮にあって、最高の家庭教師を付け、勉学に励むのだという。


「それよりも『ぶっつぶす』か。ルーシェル、友達はもっと選んだ方がいいぞ」


「いや、彼はその教え子で?」


「教え子? お前、まさか教師として招かれたのか、学校に?」


「生徒兼教師というか。まあ、色々あって……」


「なんと……。お前の生い立ちを考えると難しいことではないが……。くっ! まさかこんなサプライズがあったとは。不覚だ」


 ロラン王子は本気で悔しがっていた。

 すると、見ていたクモワースは突然王子の前で膝をついた。


「王子、初めまして。クモワース・フル・ミードと申しまして」


「ああ。あの偉そうなミード伯爵家の子息か」


「おお。我が伯爵家をご存知――――」


「社交界では有名だ。そなたの父は。曰く空気を読まない太った胡麻擂り棒などと呼ばれているがな」


「空気を読まない」


「胡麻擂り棒」


 横で聞いていた取り巻きのアーラとシャイロがプッと吹き出す。


「この場は余と友人の再会の場だぞ。これ見よがしに、余にこびを売ろうとするな。親も親なら、子も子もだな。失せよ、小物」


「し、失礼しました!!」


 クモワースの顔がみるみる青くなっていく。

 取り巻きと一緒に、脱兎の如く逃げていくと僕たちの視界からいなくなってしまった。


「ちょっとやり過ぎなのでは……」


「ああいう勘違い貴族にはあれぐらい言ってやらんとわからんものだ。……それにしても噂に聞いていたが、ああいう輩がのさばっているようだな。よし。ここは余が一肌脱ごう。ルーシェル、それにリーリス、ドラゴン娘。お前たちも手伝え」


「一肌って……。何かするんですか?」


「いつの世も貴族というのは下々にとって横暴に映るものだ。あいつらはすぐに身分の差をひけらかし、下々を虐げる。それを許してしまっている教育者もしかりだ。ならば、当てにならぬ教員たちよりも、我々生徒ができることをする方がずっと有意義だと思わないか?」


「具体的には?」


「生徒でこの学校の自治をする」



 余は生徒自治会を立ち上げるぞ。


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