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第198話 明かされる真実

☆★☆★ 2月発売新刊 ☆★☆★


本編前に宣伝失礼します。

延野原作の『「ククク……。奴は四天王の中でも最弱」と解雇された俺、なぜか勇者と聖女の師匠になる』の単行本7巻が来週2月8日に発売されます。

こちらも是非よろしくお願いします(リンクは後書き下に)。


挿絵(By みてみん)

「えええええええ?? 公爵家に挨拶に伺いたい????」


 ジーマ初等学校の中庭で、僕は素っ頓狂な声を上げた。今はお昼だ。いつも食堂で昼食を取るのだけど、本日は趣向を変えて、中庭でお弁当を広げて食べている。


 基本的に昼食は許可された場所ならどこでも食べることができる。僕たちの他にも、お弁当を広げて、昼食とお喋りを楽しんでいる学生が大勢いた。


 僕、リーリス、ユランの3人でくつろいでいると、そこにレーネルがやってきた。側にはナーエルもいる。どうやら2人は食堂で昼食を済ませたらしい。


 レーネルは僕に伝えたいことがあると切り出した。僕はすぐに決闘の報酬のことだと気づいた。


 レーネルはこう言った。


『父上はハウスタン家ではなく、こちらからレティヴィア家にご挨拶に窺いたいと』


 表向きはレーネルがご迷惑をおかけしたことと、引っ越してきたレティヴィア公爵家にい挨拶に伺いたいとのことだった。ちなみに『剣王(ギル)』という位が与えられていても、爵位の序列でいえば公爵家に及ばないそうだ(クラヴィス父上の話では、ハウスタン家が獣人の一族であることから、特定の貴族から不興を買わないようにするための措置だったとか)。序列でいえば、上のものが下のものの家に招かれるのは、おかしいということで、『剣王』自らレティヴィア家に足を運ぶことになったのだという。


 会って、ヤールム父様のお話を聞きたかっただけなのだけど、思ったより大事になっちゃったな。


「ルーシェル、ごめん。父上はこうと決めたら、なかなか曲げない人だから……って、何を笑ってるの?」


「いや、それってレーネルもでしょ」


 僕に指摘されて、レーネルはぴょこっと耳を立てる。たちまち顔を赤くすると、後ろで聞いていたナーエルも一緒に、僕たちはドッと笑った。当のレーネルは恥ずかしそうに、プラプラと尻尾を振っている。


「と、とにかく! えっと……どうしよ」


「我が家に招くことは問題ありません。お父様も反対しないと思います」


 リーリスが先に答えを出す。


 クラヴィス父上は誰かの家に招かれるのも好きだけど、誰かを自分の家に招いて、もてなすことも大好きだ。


「問題は料理だね。ねぇ、レーネルのお父さんって肉と魚どっちが好き?」


「どっちかと言ったら、肉だけど。そんなの訊いてどうするの?」


「料理を作る時の参考にしようと思って」


「料理……!? え? ルーシェルって料理を作るの?」


 あれ? レーネルにはまだそういう話をしたことがなかったっけ。そういえば、魔獣について詳しい話を何度かしたけど、僕自身が料理を得意としていることは生徒にも話してなかったな。


「ルーシェルは公爵家の炊事場に入って、お客様にお料理をお出しできるほど、料理が得意なんです。うちの料理長も認めるほどの腕前なんですよ」


「公爵家の子息が料理? そんなの初めて聞いたよ」


 レーネルが驚いていると、横合いから突然ユランがハサミパンを差し出した。

 今朝、僕がパンから焼いて、作ったものだ。

 具は様々で肉や野菜、焼き魚、辛めのソースを絡めた麺を挟んだ変わり種もある。


 ユランが渡したのは、その変わり種だ。

 僕は焼き麺パンと呼んでいる。


「食べてみよ。これもルーシェルが作ったものだ」


 ユランはレーネルに続いて、後ろで様子を窺っていたナーエルにも渡す。


 2人は呆然としながらも、焼き麺パンにかぶりついた。


「「う~~~~~~~~~~~~……」」



 っっっまい!!!!!!



 2人は絶叫した。


「細く腰の強い麺から、ふわっとしたパンの食感が絶妙……」


「このちょっとピリ辛なソースがいいですね。パンに塗っても合いそうにないのに、麺と絡めて食べると、こんなにおいしくなるなんて不思議です」


「野菜のシャキシャキもいいね。あとこの酸味はなんだろう」


 レーネルは首を傾げながら、麺に絡まっていた具材をとる。

 短冊状に切られた赤い食材をしげしげと眺めた。


「それは紅ショウガだね」


「べに……。え? なに?」


「こんなに赤い生姜は初めて見ます」


 ナーエルは商人の娘だけあって、一般的に流通している食材のことには詳しいようだ。


「普通の生姜に、命の実を塩漬けにしたものと一緒に漬け込んだものさ」


「ちょっと待って、ルーシェル。今なんて言ったの?」


「今、命の実を塩漬けにしたといいませんでしたか? 命の実はとても貴重で、たった1個でも市場価値として、平民なら1年は何もしなくても暮らせるほどの値段が付くんですよ」


 あ……。しまった。

 さらっと2人にとっては不穏なことを口走ってしまった。

 レティヴィア家では、もはや僕の素性は当たり前みたいになってるから、ついその癖で言ってはいけないことまで喋ってしまう。僕の悪い癖だ。


「えっと……。話すと凄く長いんだけど……。僕が前に住んでたところには、この木の実がいっぱいあってね」


「命の実が……」


「いっぱいある!!」


 2人は驚きを通り超して、固まった。

 額には変な汗が浮かんでくる。

 なんかこの反応なつかしいなあ。

 出会ったばかりのレティヴィア騎士団を思い出すよ。


「僕……あ、いや僕たちはそれを貴重な木の実だって知らずに食べててさ」


「そ、そうなんだ。まあ、そういうこともあるのかな」


「あるかもしれませんが、初めて聞きました」


 そりゃそうだよ。

 僕だって初めていったんだから。


「でも貴重な木の実を作ったパンを昼食に出しちゃうなんて」


「さすが公爵家ですね」


 最初がっついていた2人は、命の実が使われていると知るや否や、慎重に食べ始める。

 僕としては何も気にすることなく、よく味わってほしいのだけど……。

 まあ、仕方ないか。


「話を元に戻すんだけど、レーネルのお父さんって何が好きなの?」


「大抵のものはなんでも食べると思うよ。嫌いもないけど、好きもない。しいていえば、お酒ぐらいかな。よくワインを飲んでる」


 ふーむ。なるほど。

 レーネルのお父さんみたいな人は、割といる。さほど食に興味がない人にありがちだ。きっと忙しい人なのだろう。ヤールム父様もそうだったしね。


 となると、レーネルのお父さんが食に集中できるようなインパクトがある料理を出したいなあ。


 そうだ。


「あの時、捕獲したブルーバットベアーとかどうだろうか?」


「ブルーバットベアー?」


 レーネルはジト目で僕を睨む。


 しまった。興奮して思わず口に出てたらしい。


「ルーシェル、決闘が終わった直後ぐらいで気になっていたんだけど」


「あのブルーバットベアーはどうしたの? そしてなんで消えないの? もしかして君の強さに秘密があるの? 教えて! ぼくも強くなりたいんだ。今度こそナーエルを守れるぐらいに」


 レーネルは真剣な目で僕を見つめる。


 レーネルの意志は本物だ。

 強くなろうという目標も悪くない。

 以前の彼女に詰め寄られても、僕は答えなかっただろう。

 でも、今のレーネルならと思ってしまう。

 だから、僕は余計に迷ってしまった。

 本当に彼女に教えていいものかどうか。


「良いではないか、ルーシェル」


「わたしもユランの意見に賛成です。レーネルさんなら信頼できると思います」


 ユランとリーリスが僕の背中を押してくれる。

 本当に頼りになる2人だ。


「実はね、レーネル……」


 僕は魔獣について話を始める。



 ええええええええええっっっ!



 その後、2人の叫びが中庭に響いたのは言うまでもなかった。


本日、コミカライズは休載です。

ニコニコ漫画、マガポケでも『公爵家の料理番様』が更新されておりますので、

そちらでもよろしくお願いします。


また2月24日には同じ料理モノで、

『魔物を狩るなと言われた最強ハンター、料理ギルドに転職する』単行本4巻が発売されます。

こちらも是非よろしくお願いします。

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