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第188話 前菜の評価

☆★☆★ コミック第3巻 12月20日発売 ☆★☆★


書影公開のご許可いただきました。

いよいよ公爵家で過ごすお話となります。

今回もおいしい料理が揃っておりますので、是非お買い上げください。


挿絵(By みてみん)


「うまい! こんなにうまい前菜は初めてだ」


 アルテンさんは絶賛する。

 その言葉にゾーラ夫人も同調した。


「ええ……。しっとりしていて、お肉のテリーヌとは思えないぐらいまろやかな味わいで」


「なのにどっしりとした肉の味わいを感じる。ほのかに感じる甘みは玉葱かな。それに潰したくるみか。シャクッとした食感がいいアクセントになってるわい」


「どっしりと来る肉の後に……、これはクリームチーズかしら。程よい酸味が肉のテリーヌを食べたことを忘れさせてくれるほど、口の中が爽やかに感じますわね」


 2人ともどうやらかなりの健啖家らしい。

 入ってる調味料のことを悉く言い当てられてしまった。


 使ったのは眠りラビットの肉に、玉葱、胡桃、クリームチーズ、あと生クリームなんかも入っている。


 調味は少なめにして、素材の味を生かす調理を選んで玉葱の甘みを強め、肉の重い脂質をクリームチーズのまろやかな酸味によって軽くしている。


 勿論、それだけが味の秘密じゃない。

 なんと言っても、この料理の肝は眠りラビットの肉だ。


「眠りラビットは兎の魔獣らしく、高蛋白でとても柔らかい肉質が売りなんです」


「しかし、ルーシェルくん。この肉は何か普通の兎肉とは違う気がする」


「そうですねぇ。兎のお肉って、もっと淡白な味がしますのに」


「夫人の言う通り。これはもはや豚肉を食べた時の印象に近い。何か調理法でもあるのかね?」


 首を傾げるゾーラ夫人の横で、アルテンさんは熱心に質問した。


「質問に答える前にアルテンさん、教えてください。今、胃がもたれたりしてますか?」


「いや、だからこそ驚いている?」


「どういうことですか、先生?」


 事情を知らないクラヴィス父上が尋ねた。


「年のせいか。最近めっきり肉料理が合わなくてな」


「昔、動物の脂を飲む程好きだった先生がですか?」


「クラヴィス、それは言い過ぎだ……。ごほん! わしも若くないということだろう。しかし、眠りラビットの肉は違う。肉の、特に上質な脂の旨みを感じる」


「それが眠りラビットの最大の特徴です。肉の脂を楽しめて、かつ胃にもたれないのが、眠りラビットのお肉のいいところなんです」


「そんなお肉が……」


「あるんですよ。眠りラビットのお肉には、実は整腸作用があって、食べるそばから胃や腸の働きを助けてくれるんです」


 山でお腹がおかしくなった時は、よく眠りラビットを食べていた。

 お腹がおかしいなあって思うと、食欲もなくなる。でも、お腹が空いてくるから何か入れたいっていう気持ちになった時、よく眠りラビットを食べていたものだ。


 眠りラビットのお肉を食べても、逆に胃や腸がよくなるだけだからね。

 まあ、食べ過ぎには要注意だけど。

 胃が元気になりすぎて、食欲が過剰になったりするんだ。


「つまり、お通じにもいいということかしら」


「え、ええ。そうですよ、ゾーラ夫人」


「まあ、お通じがよくなると、お肌の状態もよくなるといいますからね。さすがルーシェルくん。また美しくなっちゃいそうだわ」


 ゾーラ夫人はペロリと眠りラビットの肉を口の中に入れる。

 咀嚼する肌から、すでに満足感と多幸感が迸っていた。


 あの~、夫人。

 ご飯を食べている時に、さすがにお通じの話題は不味いかと。

 なんかソフィーニ母上とリーリスがなんか真っ赤になってるし。


「側のソースも付けてみてください。うちの料理長が作ってくれました」


「ほう。ソンホーが……」


 僕に促されて、父上が口を付ける。


「おお! うまい! これはいける!」


「マスタードソースです。今回は粗挽きの粒をご用意しました」


「先ほどの味とは打って変わって、これは……」


「マスタードソースのつんとくる辛みと、クリームチーズの酸味が合わさって、また口の中の料理が軽く感じますね、あなた」


 クラヴィス父上とソフィーニ母上は気に入ってくれたらしい。

 お互いに顔を綻ばせながら、咀嚼する。


「いい味変だね。前菜でここまで手を尽くした料理は初めてだよ。うまい。腕を上げたな、ルーシェル」


「おいしいですわ、ルーシェル」


「うん。おかわり!」


「ありがとうございます、カリム兄様。気に入ってくれてありがとう、リーリス。……ちなみにおかわりはないよ、ユラン」


「なんだ! ないのか。つまらん」


「そんなにおいしかった?」


「うむ! おいし…………ふ、ふん。まあまあだな。むろんドラゴンステーキに負けるが。ああ! ドラゴンステーキが早く食べたいものじゃのぉ(棒読み)」


 相変わらずこのホワイトドラゴンは強情だ。


 でも、ソースを作ってくれたソンホーさんには感謝だな。

 僕の料理を食べただけで、人の料理をここまで進化させるなんて。

 まだまだ僕は料理長の足元にも及ばないや。





 ディナーは進み。

 ついに、メインの魚料理が出てくる。

 やって来たのは、ソンホー料理長だ。


「鯛の塩焼きと、キノコのバター和えでございます」


 皿に乗ったお洒落な料理に、僕も他の家族やお客様も驚く。


 薄く焼けた鯛の塩焼きの下に、みじん切りにされたキノコのバター和えが敷かれている。


「綺麗だな。それに小さいのに、大きい」


 皿の上にちょんと置かれた芸術的な料理だ。

 大きさは僕が前菜と出したテリーヌとほぼ変わらない。

 でも、皿に乗った料理長のメニューは小さいのに大きく見える程のインパクトがあった。


「ルーシェルの料理も良かったが……」


「これはまた深い何かを感じる料理ですな、料理長殿」


 アルテンさんに声をかけられ、ソンホーさんは「恐縮です」と軽く頭を下げた。


 僕も驚いている。

 ソンホーさん、こんな料理もできるんだ。

 見た目のインパクトは凄い。おいしそうはもちろんだけど、存在感に引き込まれる。


「では早速いただきましょう」


 アルテンさんは口を付けた。


 料理長のメインの魚料理は、本当においしかった。

 塩だけで、淡白な魚の旨みを最大限に引き出した塩焼き。そこにバターやワイン、クリームを加えて、重なる味の層を作ったキノコは絶品の一言。キノコの旨みと、バターの芳醇な味わい。そこに鯛の身を合わせることによって、口の中に星空が生まれていくような感動が広がる。


 特にキノコの芳醇な香りが最高だ。

 バターが加わったことによって、さらに強化されているような気がする。


 さすがはソンホー料理長だ。

 300年、僕も料理をやってきたけど、まだまだ知らない味と調理方法があるのだ、と教えられる。


 さて、問題はこのソンホー料理長のメニューの味に僕の前菜が美味く効いていたかどうかだね。


「ありがとう、ルーシェルくん」


 口元を拭いながら、アルテンさんは言った。


「こんなに料理で満足できたのは、久しぶりだよ」


「お礼なら料理長と、僕の先輩に言ってください」


「いや、君の料理が1番の功労者だよ。この年だ。正直、パーティーやそこに出てくる料理を食べるのは、億劫なところがあってね。でもルーシェルくんはその悩みを吹き飛ばしてくれた。本当に礼を言う、ありがとう」


 頭まで下げる。

 恐縮するのはこっちの方だ。

 慌てて僕は顔を上げると言った。


「いえ。僕はアルテンさんが何の気兼ねもなく、料理を楽しんでくれればそれだけでいいです」


「……ふふ。純粋だな、君は。クラヴィスよ。お前は悪童だったが、良き息子を持ったな」


「私には少々勿体ない息子です」


「しかし、魔獣がこれほどおいしいものとはのぅ。ルーシェルくん、この料理を生徒たちに食べさせることはできぬか」


「え?」



 魔獣料理を?


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