第178話 食堂でお料理?
☆★☆★ コミカライズ更新日 ☆★☆★
ヤンマガWEBにて最新話更新されました。
有料最新話では、ついにユランが登場です。
斎藤先生が描いてくれた迫力あるユランのドラゴン姿を是非確認してください。
好評発売中の単行本第2巻もよろしくお願いします。
初等学校の最初の授業が終わった。
内容としては基礎的な知識なものが多いけど、同い年ぐらいの子どもたちと机を並べて学ぶのは新鮮だ。
トリスタン家にいた頃、ぼくにとって学問は拷問そのものだった。
父様のような【剣聖】にならなくてはならない、という使命感から頑張ることができたけど、今思えばとても異常であったことは確かだ。
でも、今はそんなプレッシャーはない。
だからなのか先生から聞く知識はキラキラと輝いて見えたし、同じ方向を向いて同級生たちと勉強するのは楽しかった。
何よりリーリスやユランがいることも僕を安心させる要因になっている。
担任教師もアプラスさんだしね。
……まあ、ユランはいきなり居眠りを始めて怒られていたけど。
とはいえ、ジーマ初等学校の先生たちは基本的に優しい。
教え方もうまく、頭の中に響いてくる。
気が付けば、午前中の授業が終わっていた。
午前の授業が終われば、昼食だ。
大きな食堂があって、みんなでそこで食べる。メニューによっては外でも食べられるみたいで、中庭のベンチに座って、ハサミパンを頬張る生徒もいた。
メニューは初等学校の食堂とは思えないほど、豊富だ。
ハンバーグ、サイコロステーキとかガッツリ系のものから、塩味や魚醤味の麺類まで揃っている。
どれも子ども受けしそうな料理だけど、野菜スープがもれなく付いてきたり、健康面の配慮もされていた。
「ルーシェルは何にしますか?」
僕と同じくトレーを持ったリーリスが、立てかけられたメニュー表を見ながら質問する。
「僕は日替わりのキッズプレートにしようかな」
「わたくしもそうします。ユランはどうしますか?」
「給仕よ。これとこれと、これと、これ! あとこれもうまそうだな。これも追加で頼む!」
ユランのトレーの上は、あっという間に料理で積み上がった。
しかも、お肉料理ばっかりだ。おかげでプレートは茶色一色だ。
お魚とか、サラダとか、バランスよく食べろってカンナさんに毎日怒られてるのに。
「ユラン、そもそもそれ全部食べるの?」
「余裕だ!」
ユランは親指を立て、ニヤリと笑う。
完全にテンションが上がっている。
学校の食堂でこんなに興奮してるのが、ホワイトドラゴンの化身だって知ったら、ここにいるみんな全員驚くだろうな。
給仕さんから料理を受け取り、席に着く。
お祈りを済ませた後、料理を食べ始めた。
僕とリーリスが頼んだ日替わりのキッズプレートは、小さなパンケーキに2枚にハンバーグ、蒸かした豆に、玉葱とピーマンが入ったトマトスープだ。
僕はまずパンケーキをかじってみる。
「う~~ん。ふわっふわ!!」
表面はパリッとしているけど、中の生地がふわふわだ。柔らかすぎて、雲を食べてるみたい。
侮っていたわけじゃないけど、食堂の料理人さんの技術も凄い。
使ってるのは、小麦粉、牛乳、卵だと思うけど、おそらく調理方法に匠の技があるんだろう。あとで教えてもらおうかな。
「甘さはちょうどいいですね」
甘党のリーリスも太鼓判を押す。
クラヴィス父上や、ソフィーニ母上もそうなのだけど、エルフって総じて甘いもの好きだ。
お茶の時間には必ずお茶請けに甘いものが提供される。
「はぐはぐはぐはぐはぐはぐはぐはぐ……」
リーリスの隣でユランが大きなお肉のステーキにしゃぶりついている。
食堂のお肉料理を心ゆくまで堪能し、本人も機嫌が良さそうだ。
逆に他の生徒たちの顔は青ざめていた。
こういうとユラン本人は怒るのだけど、見た目はとても可愛い女の子だ。
それがこれでもかと、大食いを見せつけている。
そのギャップにみんな驚いているのだろう。
正直、マナーもなってなくて、後で間違いなくカンナさんに怒られるだろうけど、食べっぷりは見てて気持ちいい。
何だかこっちまでお肉を食べたくなってきた。
「じゃあ、ハンバーグはどうかな……」
フォークを伸ばしたところで、僕は手を止めた。
ふと他の生徒が変わった食べ方をしているのが目に入ったからだ。
それはパンケーキの間に、ハンバーグとトマトスープの具材だけを挟み、一気に頬張っている。
昔、山の中でよく食べていたハサミパンと似ていた。
周りを見ると、他にも似たような食べ方をしている生徒がチラホラいる。料理人を目指す僕としては、試さずにはいられなかった。
「ルーシェル?」
僕は早速試してみる。
パンケーキの上にハンバーグをのせ、トマトソースの汁気をなるべく切って、玉葱とピーマンの具材を上にのせる。最後にパンケーキをのせると、僕は大きな口を開けると一気に頬張った。
「うまっ……!!」
ふわふわのパンケーキの後に来る、がっつりとしたハンバーグの食感がいい。滲み出でてくる肉汁が最高だ。パンケーキの甘みが余計かもしれないけど、赤茄子スープの具材の酸味がうまく軽減している。おかげで後味が爽やかだ。
こうやって食べる料理ではないけど、これはこれでありだと思った。
パンケーキじゃなく、ハサミパンに使うような普通のパンなら、もっと肉汁を吸っておいしくなるかもしれない。
今度、試してみよう。
「ん?」
不意に視線を感じた。
気が付くと、ユランはおろかリーリスまでこっちを向いて物欲しそうに見つめている。
「ユランはともかくリーリスまで!」
「おいしそうだな。我にも食わせよ」
「ユランはもう散々食べたじゃないか……」
リーリスには食べ方を教える。
どうやら気に入ってくれたらしい。
目が蜂蜜みたいに光っていた。
問題はユランだ。
シュンと項垂れている。
すでに皿は空なのに。
「はい。ひと口だけだよ」
「いいのか、ルーシェル?」
「いらなかったら、僕が食べるよ」
「食べる食べる!!」
そう言って、ユランは大きく口を開ける。
テンションが上がり過ぎて、一気に食べそうだったから、食べる瞬間、パンケーキのハサミパンを引いて、事なきを得た。
油断も隙もない……。
本人はどこ吹く風だ。
口の中で混然一体となったパンケーキ、ハンバーグ、野菜を堪能する。
「う~ん。いいのぅ!」
「気に入った?」
「よく言えば、もっと食べたい」
「だったら、今度作ってあげるよ」
「本当か、ルーシェル!」
ユランは目を輝かせる。
お肉好きのユランを唸らせるなんて、この料理相当おいしいんだな。
しげしげとユランの歯形が付いたパンケーキのハサミパンを見つめる。
すると、横から視線を感じた。リーリスだ。
僕が持っているパンケーキのハサミパンに釘付けになっていた。
「り、リーリス、どうしたの?」
「わたくしもいただいていいですか?」
「え? でも、リーリスには」
「どうしてもほしくなりました」
「え? あ? うん。わかったよ」
リーリスの迫力に押されて、僕は自分のパンケーキのハサミパンを差し出す。
ユランに負けないぐらい大口を開けたリーリスは、思いっきり齧り付いた。
「どう? おいしい?」
「はい。おいしいです!」
「今度作るね。父様たちにも食べてもらおう」
「はい……!」
リーリスはすこぶるご機嫌だった。
ところで、さっきのは何だったんだろうか。








