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第165話 王都到着!

☆★☆★ コミカライズ更新 ☆★☆★


本日、ヤンマガWebにて最新話が更新されました。

最新ではありませんが、マガポケ、ニコニコ漫画でもコミカライズが掲載されておりますので、

そちらもよろしくお願いします。


挿絵(By みてみん)

 1ヶ月後……。


 ついに明日は初等学校の入学試験だ。

 僕はその試験を受けるために、初めてミルデガード王国の王都へとやってきていた。


「おお!!」


 馬車の窓から顔を出して、僕は声を上げる。

 大きな城壁に囲まれた大きな城下町。

 その中心に立つ白亜の建物こそ、ミルデガード王宮である。


「綺麗な都だなあ」


 丘の上から王都を望みながら、感嘆の声を上げる。


 白い城下町と、ミルデガード王国の国色ともなっているオレンジ色の屋根のコントラストが見事だ。

 色味のせいか王都全体から優しい印象を感じる。

 きっとそこに住む人たちも優しい人たちばかりなのだろう。


「別名『不滅の都』……。魔族との戦争でもっとも被害が少なく、300年前の趣を残したままの都か」


 僕のかつての父――ヤールム・ハウ・トリスタン率いる魔族との長い戦争において、多くの国と都、街が壊滅した。

 その中にあって、ミルデガード王国の都は戦災を免れた数少ない都市の1つだそうだ。


「お。早速、試験の成果が出ているじゃないか、ルーシェル」


 クラヴィス父上はニヤリと笑う。


「そ、そうでもないですよ」


 昔から詰め込み学習は得意だったこともあるけど、やはり1番の理由はヴェンソンさんやカンナさんの教え方がうまかったことだろう。


 学習も大事だけど、2人が重きを置いていたのは、普段の生活だ。


 特に睡眠と食事の時間などには気を配っていた。

 なるべく脳が疲れないように適度に休むことを僕に課したのだ。


 おかげで1ヶ月という短期間ではあったけど、身体の調子もいいし、頭も痛くない。今のように学習したことが自然と口に出てくる。

 成果だけ見ると、如何に300年前の僕の学習の仕方が無茶苦茶だったか、よくわかる。


「では、何故ミルデガード王国が戦火に巻き込まれなかったかは、わかるかな?」


 カリム兄様が僕を試すように問題を出した。


「地形や当時の戦略などの理由もありますが、1つはこのミルデガード王国に【剣王】がいたことが大きかったからです」


 【剣王】とは、【剣聖】の次に強いとされていた武芸者に与えられる称号だ。

 300年前なら、【剣聖】ヤールム・ハウ・トリスタンを筆頭に、その下に4人の【剣王】がいた。


 中でも、ヤールム父様の次に強いと言われていた【剣王】がこのミルデガード王国にいたことが、戦火を免れた理由だと言われている。


「正解だ。よく勉強しているね。これなら筆記試験(ペーパーテスト)は完璧だ」


「ありがとうございます。そう言えば、気になっていたのですが、その【剣王】の方はまだご存命なのでしょうか?」


「当時の【剣王】は亡くなられているが、今でもその子孫のものが【剣王】を名乗っておられるはずだ」


「そうですか」


 カリム兄様の説明に、僕は自然と俯く。

 そんな僕の手に、小さな手が重なる。

 隣を見ると、青い瞳とかち合った。

 リーリスが心配そうに、僕を見ていたのだ。


「ルーシェル、どうしたのですか?」


「いや……。その……。もし、当時の【剣王】が生きていたなら、ヤールム父様と切り結んだこともあるのかなって」


「うむ」


 クラヴィス父上は腕を組んだ。


「なるほど。確かにな。……もし、ルーシェルが気になるなら、今の【剣王】にアポをとることもできるが」


「会えるんですか?」


 僕が尋ねると、クラヴィス父上は得意げに笑う。


「ふふん……。レティヴィア公爵家の人脈を舐めてもらっては困るぞ、ルーシェルよ。本気を出せば、お前と国王陛下を繋ぐことだってわけないのだからな」


「こ、国王陛下!!」


 さすが公爵家だ。


「まあ、それはまたの機会にするとして、心配はいらぬ。【剣王】とは知らない仲ではない。ただ忙しいヤツだから、会うのは先になると思うが……」


「お願いします」


「うむ。わかった」


 クラヴィス父上は任せろとばかりに胸を叩く。


 今、レティヴィア家にいて、僕は幸せだ。

 でも、トリスタン家のことをすべて忘れたわけじゃない。父様はああいう人だったけど、屋敷にいた家臣たちや、母様はとてもいい人だった。


 だからこそ、その後トリスタン家がどうなったか知りたい。


 そして、魔族となった父様が今どこにいるかも……。


「あれが人間の都か。実にちっぽけだな」


 その声は突然、上から聞こえた。

 僕は反射的に窓から身を乗り出し、客車の上を見る。


 そこにはユランが胡座を掻いて、座っていた。


「ユラン、いつの間に……」


 王都へは家族全員で行くことになった。

 そこにレティヴィア家が管理している屋敷があって、そこにしばらく住むことになっている。


 僕の入学が決まれば、正式に転居して、僕とリーリスが卒業するまでの間、暮らす予定だ。


 当然、ユランもついてくることになり、今は馬車の上で胡座を掻いている。


「馬車は好かないっていって、飛んでいったのに」


「1人で飛ぶのは面白くない」


「あら。寂しかったんですか、ユラン」


「ち、違うぞ!! べべべべ、別にお前たちの会話を聞いて、楽しそうだなとか思ってないからな」


 ふん、とそっぽを向く。


 相変わらず気分屋だな、ユランは。


(それにしても驚いたな。ユランが学校に行きたいなんて言うとは)


 実は、ユランも初等学校に行きたいと言い出したのだ。

 ユランは勉強を嫌う。

 試験があると言ったら、諦めるかと思ったけど、その日から真面目に勉強を始めた。


 どういう風の吹き回しだろう。


 よく屋敷での勉強もサボって、カンナさんに怒られてばかりいたのに。


「ユラン、どうして学校に行こうと思ったの?」


「またその質問か。……何度も言ってるであろう。逃がさん(ヽヽヽヽ)、とな」


「ドラゴンステーキのこと。心配しなくても、僕は逃げないよ」


「それはどうかの。……そ、それにな。お前やリーリスだけ、楽しいことをしようとしてもダメだからな」


 唇を尖らせる。


 その表情を見て笑ったのは、馬車の前方を走る護衛役のフレッティさんだった。


「それが本音じゃないのか、ユラン」


「黙れ、炎使い。我が吹雪で凍らせてやろうか」


「冬の寒い時期に、冬眠していた竜がよく言うよ」


 僕が肩を竦めると、ドッと笑いが起こった。





 試験当日。


 僕とユランは王都にある名門ジーマ初等学校の前に立っていた。


「頑張ってね、ルーシェル。ユランも」


「うん。ありがとう、リーリス」


「ふん。我は試練の竜ぞ。人間に試練をあたえる竜が、人間の試験に落ちるものか」


 何それ……。

 ユラン風のジョークのつもりかな。

 ちょっと面白い。


 先に推薦合格しているリーリスと、家族たちに見送られ、僕たちは初等学校の門をくぐる。


 よーし。どんな試験が来ても、頑張るぞ!


☆★☆★ コミックス3巻 7月20日発売 ☆★☆★


コミックス3巻の発売日が決まりました。

7月20日となります。

1巻はおかげさまで、2回重版いたしました。

今回もたくさんの方にご賞味いただければ幸いです。

ご予約お待ちしております。

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