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第160話 公爵家に帰還

先週アナウンスさせていただきましたが、

「ごはんですよ、フェンリルさん」がLINEマンガ、ハイクコミック様で配信中です。

おかげさまで、新着ランキングにて1位を獲得しました。

読んでいただいた方ありがとうございます。


本日最新話が更新されました。

是非ご賞味ください。


挿絵(By みてみん)

 渓谷の入口まで戻ってくると、吹雪がすっかり止んでいた。

 相変わらず雪雲で寒いのは変わらないけど、視界がはっきり見えるだけマシと言える。


 僕たちはそのままレティヴィア家に戻った。

 屋敷に入ると、南国を思わせるような温かさにビックリしてしまう。

 いくらマグマ石と魔獣食の恩恵があっても、身体は寒さを感じていたらしい。


「お帰りなさい、ルーシェル」


「ただいま、リーリス」


 早速、リーリスが僕たちを迎えてくれる。

 遅れて、クラヴィス父上やソフィーニ母上、さらにレティヴィア家の家臣たちが集まって、帰ってきた僕たちの労をねぎらってくれた。


 ただその中に、ミルディさんの姿はない。

 ユランともどもまだ夢の中のようだ。

 吹雪は止まったし、雪雲が少し晴れて、陽が出てくれば気温も上がる。

 しばらくすれば、2人の春もやってくるだろう。


「カリム、お疲れ様でした。怪我はありませんか」


「母上、ありがとうございます。この通り、無事です」


「カーゼルス伯爵もご苦労様でした。どうやら、うまくいったようですな」


 クラヴィス父上はカーゼルス伯爵の隣にいるアプラスさんの方を見て、頷く。

 同性であるリーリスも、氷像の美女神のような美しさに、「綺麗……」と息を漏らした。


 一方、カーゼルス伯爵は気恥ずかしそうに笑う。

 アプラスさんの手を握る手は固く、離そうとはしない。

 『氷魔の渓谷』から下りる時もそうだったけど、2人はすでにラブラブだ。

 母上もそれに気づいて、「あらあら」と微笑している。


「当初思い描いていたものとは違いましたが、こうして積年の想い人をここに連れてくることができました」


「アプラス・アークブライトと申します、公爵閣下。この度は閣下やその領民の方々にご迷惑をおかけし、元精霊人としてはお詫び申し上げます」


「いや、事情はこれから聞かせてもらいますが、精霊にも精霊人にも何か事情が現れたのでしょう。立ち話もなんですから、どうぞ客間へ。部屋を温めておりますので」


 クラヴィス父上は2人を客間に促す。

 フレッティさんやリチルさんは隊舎へと一旦戻るそうだ。色々仕事がたまっているらしい。

 代理団長となったガーナーさんも首を長くして待っていることだろう。


「父上、僕は料理の用意をしたいと思います」


「帰ってきて早々だな。疲れてないのか?」


「いい食材が手に入りました。後で父上にも食べてもらいます」


「燃えているな、ルーシェル。よほどの一品と見える。あまり無理はするなよ」


 僕をたしなめると、クラヴィス父上はリーリスを見つめた。

 僕を見ながら、何やらモジモジしている。1つ頷くと、父上は言った。


「リーリス、ルーシェルを補助してやりなさい。疲れているだろうからな」


「え? あ……、はい! ありがとうございます、父上!」


 リーリスは目を輝かせる。

 見てるこっちが元気になるぐらい、とっても嬉しそうだ。


「カリム兄様、申し訳ありませんが」


「ああ。事情の方は僕が話しておこう。その代わり、おいしい料理を待っているよ。実はずっと腹ぺこだったんだ」


 カリム兄さんは苦笑いを浮かべながら、お腹をさすった。


「はい。お任せください。……リーリス、行こう」


「はい。ルーシェル」


 僕はリーリスの手を繋ぎ、炊事場へと走った。



 ◆◇◆◇◆ 大人たち ◆◇◆◇◆



 そんな僕とリーリスを大人たちは見送る。


「ふふ……。リーリス、嬉しそうね。あの子、ここのところずっと上の空だったのよ。ことあるごとに、『ルーシェルは帰ってきましたか?』って」


 ソフィーニが口元を隠し、「ほほほ」と意味深げに笑う。

 食いついたのは、隊舎に帰ろうとしていたリチルだった。

 「ほほう」とばかりに、眼鏡を曇らせる。


 若いカップルを微笑ましく見ていたのは、ソフィーニやリチルだけではなかった。

 アプラスとカーゼルス伯爵も、離れて行く小さな2つの背中に視線を送っている。


「お若いカップルですね」


「ああ。まるで昔の私たちのようだな」


「もう! カーゼルスったら……」


 アプラスはカーゼルス伯爵を思いっきり突き飛ばす。


「わ、私は何か悪いことを言っただろうか」


「否定はしませんが……。その……そういうことは人前で言わないでください。恥ずかしいです」


「ひ、否定はしないのか……」


 真っ赤になっているアプラスさんを見て、カーゼルス伯爵は慌てる。

 こちらもまるで若いカップルのようだった。


 それを見て、豪快に笑ったのは、クラヴィスだった。


「ガハハハ……。すっかり翻弄されておりますな、カーゼルス伯爵」


「それは父上も同じではありませんか?」


「な、なぬ!」


 伯爵をからかうクラヴィスの背中を言葉で刺したのは、実の息子であった。



 ◆◇◆◇◆



 炊事場に着くと、ソンホーさんたち以下料理人たちが、緊急に料理の準備を進めていた。


 カリム兄さんや僕たちが帰ってきたからだろう。

 夕飯の支度まで仮眠を取っていたヤンソンさんはちょっと眠そうだ。

 どうやらソンホーさんに叩き起こされたらしい。


「ソンホーさん、すみません。厨房を1つ貸してくれませんか?」


「そういうと思ったわい。1つ空けてある。好きに使え。リーリス様もお手伝いを?」


「はい。構いませんか、ソンホー」


「いつも言っておりますが、危ないことをなさりませんように。刃物の扱いにはくれぐれも慎重にお願いしますぞ。ルーシェル、わしは忙しい。リーリス様はお前がしっかり面倒を見るんだ。いいな!」


「はい。料理長!」


 返事すると、ソンホーさんは自分の調理に戻っていった。


「すっかりソンホーに認められているんですね。昔は、料理長というと怒られていたのに」


「僕なんてまだまだソンホーさんの足元にも及ばないよ。それよりもリーリスがビックリするような食材を持ってきたよ」


 僕は【収納】を発動する。


 現れたのは、巨大なお肉だった。

 細切れにしたけど、それでも炊事場のまな板からはみ出してしまうぐらい大きな肉の塊が、突如現れる。


 見上げるほどの大きさのお肉に、リーリスは口を開けて呆然としていた。


「こ、これ……。何の肉ですか? ま、マウンテンオークよりも、さらに大きいなんて」


「ミレニアムスノウって魔獣を知ってる?」


「知ってます。父の書斎の図鑑でしか見たことがありませんけど。大きな象の魔獣ですよね」


「そっ。そのお肉さ」


「ええええ? ミレニアムスノウの? 食べられるんですか?」


「わからない。僕も初めて取ったからね」


「初めて……。え? じゃあ、料理するのも……」


「初めてだよ。でも、大丈夫。きっとおいしいよ。いや、おいしくなくてもおいしくする」


 それが料理人だからね! 


6月12日に拙作原作『アラフォー冒険者、伝説になる』のコミックス5巻が発売されます。

おかげさまで、シリーズ累計が20万部を突破しました。

今後も継続していくシリーズなので、是非ご予約お願いします。


挿絵(By みてみん)

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