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第155話 精霊と共闘

☆★☆★ コミカライズ更新 ☆★☆★

本日、ヤンマガWebにてコミカライズ更新されました。

是非読んでくださいね。



『精霊に祝福されし御子よ』


 突如、声が僕の頭の上から降り注ぐ。

 僕はハッとなって後ろを振り返った。

 大蛇となった氷の精霊と目が合う。


「君の声なのかい?」


 僕が質問すると、氷の精霊は小さく頷く。

 そして今、アプラスさんに襲いかかろうとしているカーゼルスさんを見る。


 カーゼルスさんは再びフレッティさんやカリム兄さん、そして援護するリチルさんに抑えられていた。

 その顔は鬼の形相だ。

 見たこともないカーゼルスさんの表情に、アプラスさんも萎縮してしまっている。


 このままカーゼルスさんから呪剣を切り離さなければ、不幸な結果になってしまうだろう。


『精霊の御子よ。あなたにお願いがあります』


「なんだい?」


『これから私はあの者の体内に入り、呪いを除去します』


「あの者……。カーゼルスさんの中に入るのかい? そんなことができるの?」


『御子よ。本来の我らの姿を忘れておられませんか?』


 今、氷の精霊は屋敷よりも大きな蛇の姿を取っている。

 でも、本来精霊というものは目に見えないほど小さな生物なのだ。


 今こうして大蛇に見えるのは、小さな精霊が魚群のように集まって、人間の目にも見えるほどの大きさになっているからだ。


「それで、お願いというのは?」


『それまであの者を抑えておいてほしいのです。できれば、呪いの活性化を一時的に抑制いただきたい。できますか?」


「一時的というなら……。でも――」


『なんでしょうか?』


「いや、意外だなって……。君はあの人を助けようとしている。呪いを吐き、今もアプラスさんを殺そうとしているカーゼルスさんを」


 精霊は人間に興味がない。

 その生き死にも。

 あるとすれば、精霊――いや、世界を大きく汚そうとした時だけだ。


 その元凶というべき人間を、氷の精霊は助けようとしている。

 意外という言葉以外の言葉を、僕は見つけられなかった。


『それは…………。そうですね。それは後ほど。どうやらあまりゆっくりと話している時間はないようですので』


 大きな音が鳴り、悲鳴が上がった。

 見ると、フレッティさんとカリム兄さんが吹き飛ばされている。それを見て、リチルさんが雪煙に包まれながら、アプラスさんともに悲鳴を上げていた。


 氷の精霊の言う通りのようだ。


「わかったよ!」


『頼みます』


 氷の精霊が消える。

 消えるというより、集まっていた精霊が散り散りに散ったのだ。

 小さくなることで、カーゼルスさんの体内に入っていくつもりだろう。


「伯爵! 目を覚ましてください!!」


「カーゼルス、もうやめてください!!」


 リチルさんの背後で、アプラスさんは訴えかける。

 だが、返ってくるのは野獣じみた唸りだけだった。

 まずいな。もうかなり意識が呪いに乗っ取られつつある。


 カーゼルスさんは構わず凶刃を振るう。


「危ない!!」


 ついに僕は前に出た。

 呪剣を先ほど氷の精霊が見せたように両手で挟む。


 すごい力だ。

 もはや人の領域を超えている。

 相当強い呪力にカーゼルスさんは身体を乗っ取られているようだ。


 こういう時にユランがいてくれたら、心強いのだけど、ないものねだりをしても仕方がない。


「る、ルーシェルくん。大丈夫?」


「あまり無理しない方が……」


 背後のリチルさんとアプラスさんが心配する。


「ご心配なく。なんとかいけます。それにまだ僕、本気を出してないので」


「え?」


「本気を出してない??」


 2人はキョトンとする。

 女性2人を尻目にして、僕は挟んだ呪剣に力を入れた。


「とにかく、その物騒な刃は撤去させていただきますね!」


 【神の大力】


 僕は魔法を使う。

 名前の通り、神の力を自分の身体に一時的に宿らせるものだ。

 とはいえ、普通の人間は使えない。

 魔獣食で鍛えた僕か、50年ぐらい鍛え抜いた武芸者ぐらいしか扱えないだろう。


「よっ!」


 パキッ、とお菓子を割るみたいに呪剣を折る。


「あらら……」


「呪剣を折った!? そんなあっさりと……!」


 アプラスさんが驚く。

 横でリチルさんが苦笑していた。


 肝心のカーゼルスさんも戸惑っていた。

 呪剣をあっさり折られてしまったのだ。

 いくら意識がないとはいえ、驚くのも無理はないかもしれない。

 あるいは、今ので呪剣の効力が一時的に下がったかもね。


 なら――――。


「今だよ。氷の精霊!!」


 しんしんと空から降ってくる雪が突如渦を巻く。

 それは1本の槍のようになって、呪剣を持ったカーゼルスさんに迫った。


 雪の渦をまともに浴びると、カーゼルスさんは悲鳴とも唸りともとれる声を上げて、振り払う。

 だが、小さくなった氷の精霊にはどんな攻撃も無力だ。


 ついにカーゼルスさんの中に入ってしまった。


 見た目には何も起こらない。

 でも、たぶん今頃氷の精霊はカーゼルスさんの呪いを解呪するために、身体の中を動き回っていることだろう。


 自分に何が起こったかわからないカーゼルスさんは、再び襲いかかってきた。

 呪剣はなくなったが、黒く変色した腕が分かれ、まるで触手のように動かす。


 周辺の雪を蹴散らしながら、再び僕たちの方に迫ってくる。


 剣がダメなら、触手か。

 呪いの割にはなかなか賢いなあ。

 これ以上、カーゼルスさんを痛めつけるわけにもいかないから、ちょっと大人しくしておいてもらおうか。


 僕は【収納】の魔法を使う。


 中からあるものを取り出した。


「え? 宝石?」


 アプラスさんが僕の手に握られたものを見て、目を丸くする。

 一方、リチルさんはすぐ理解した。


「飴? もしかして、スライム飴。でも、黄色い飴なんて見たことないわよ」


 そう。これはスライム飴だ。

 普段、屋敷で暮らしている中では使ったことはない。

 何故なら、これはとても危険なスライム飴だからだ。


「カーゼルスさん、すみません。これが最後ですから、許してくださいね」


「うがががああああああああ!!」


 野獣のように声を上げるカーゼルスさんの口の中に、僕は黄色いスライム飴を入れる。


 見事口の中に入ると、そのままカーゼルスさんは飲み込んでしまった。


 直後、カーゼルスさんの動きが止まる。

 ピリッと光が弾けた瞬間、カーゼルスさんは叫んだ。


「か、からぁぁぁああああああああ!!」


2月に発売された『公爵家の料理番様』のコミカライズですが、

未だにBOOK☆WALKERランキングの週間1位になるなど、ロングヒットしております。

再重版決まって、絶好調ですので、またお買い上げでない方はこの機会に是非よろしくお願いします。


挿絵(By みてみん)

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