第129話 弟の活躍
☆★☆★ コミカライズ更新 ☆★☆★
本日ヤンマガWEBにて、コミカライズが更新されました。
不老不死になったルーシェルの新たな生活に入ってきた人間たちとは?
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僕は早速溶岩魔王と、さらに冷えて固まった溶岩魔人たちを解体していく。
【収納】の中に詰めるだけ詰めると、レティヴィア公爵領に戻った。
「また寒い領内に戻るのか……。それなら我は火山にいた方が良かった」
ユランは僕たちを乗せて、レティヴィア公爵領のある北へと向いながら、ガックリと首を垂らした。
「別にユランは残っていても良かったんだよ。ただし、その場合マグマ石で作るおいしい料理にありつけなくなるけどね」
「ず、ずるいぞ、ルーシェル! 我を料理で釣るなど……」
ユランを動かす時、下手に説得するより料理で釣る方が楽だからね。
口が裂けてもそんなこと言えないけど……。
「ごめんごめん。これをあげるから許してよ」
僕はユランの背中に乗りながら作っていたものを、長い首にかけて上げる。
ペンダントだ。
先にはマグマ石がついている。
「おお! 暖かいぞ!!」
さっきまで愚痴ばかり言っていたホワイトドラゴンは、大きく翼を羽ばたかせながらはしゃぐ。
危なく、僕とフレッティさん、カリム兄さんが振り落とされそうになった。
「ちょっと! ユラン、危ないだろ!!」
「これなら屋敷に戻っても大丈夫そうだ」
目をキラキラさせながら、ユランは喜ぶ。
感謝の言葉こそなかったけど、喜んでくれて何よりだ。
そして、僕たちはレティヴィア公爵領に戻るのだった。
◆◇◆◇◆
レティヴィア公爵領に戻った僕たちは、早速マグマ石を領民に配り回った。
都市部はレティヴィア騎士団に任せて、都市から外れた村には、僕とユラン、カリム兄さんが回ることに。
リーリスも来たがったけど、レティヴィア公爵領は依然として吹雪に見舞われている。視界の悪い吹雪の中での作業になるから、屋敷で待機してもらった。
ただ何かあれば、屋敷に置いてきたウツセミの翅で僕に直接知らせることになっている。
ウツセミの翅はウツセミという魔獣の翅だ。
翅を震わせると、遠く離れていても番い同士で細かいコミュニケーションができる。
この性質を利用して、翅に言葉を伝えると番いの翅から声が聞こえるようになる。
スキル【移声】と同等の能力を持った道具になるのだ。
僕はカリム兄さんの案内で、1つ目の村に辿り着く。
家が5軒ほどしかない、本当に小さな村だった。
「こんにちは」
1軒の家を訪れる。
吹雪の中からやってきたから、かなり驚いたらしい。家人は悲鳴を上げた。
しかも、子どもがやってきたものだから、まるで幽霊を見るような目で見てくる。
「落ち着いてください」
家の人を落ち着かせたのは、カリム兄さんだった。兄さんがいて本当に良かったよ。
都市から離れたところでも、カリム兄さんのことは知っているようだ。だけど、今度は「領主様のご子息様が来た!」と大騒ぎになってしまった。
カリム兄さんが説得している間に、僕は家を見回す。簡素な土壁の家で、その壁も薄い。吹雪が強まる度に、ミシミシと音を立てている。何より……。
「家の中なのに寒いぞ、ここ」
ユランは二の腕をさする。
その通りだ。
家の中はかなり寒い。
簡素な炉が居間の中央にあって、小さな火が点いているだけ。
おそらく薪を節約しているのだろう。
家人はどれも顔色が悪く、唇が真っ青になっていた。もし、僕たちが来なかったら、そのまま凍死していたかもしれない。
「本当ですか!?」
カリム兄さんに事情を聞き終えたこの家の旦那さんと奥さんは喜んだ。
「はい。ルーシェル、例のものを」
カリム兄さんに言われて、僕は【収納】から、早速マグマ石を取り出す。
それを炉の中に放り込むと、徐々にマグマ石は熱せられていく。すると、熱風のように熱が噴き出し、家の中を暖めた。
「おお!」
「すごい。あたたかい」
夫婦は感動する。
家の中が暖かくなってきたことによって、血色がよくなってきたのだろう。
顔に赤みが刺す。
それまでわからなかったけど、若い夫婦だと今わかった。
さらに若い夫婦の案内で、他の家も訪れる。
先ほどと同様にマグマ石を家の炉や暖炉に投げ込むと、家に火が点いたように暖かくなってきた。
「ありがとうございます、カリム様」
「お礼ならルーシェルに。僕の新しい弟です」
「あなた様が! ありがとうございます、ルーシェル様!」
「〝様〟なんてそんな……」
「貴重なマグマ石をいただき感謝申し上げます。その……お代の方はいつか必ず」
僕は首を振る。
「お代はいただきません。皆さんはレティヴィア公爵領の領民です。立場がある者が、人を救うのは当然のことですから」
村の人たちからどよめきが起こる。
直後、歓声が鳴り、泣いて喜ぶ人もいた。
最初、僕が子どもであることを理由に懐疑的だった人たちも、すっかり打ち解ける。
喜んでくれて何よりだ。
「あのカリム様、お願いが」
「何かな?」
「実は……」
それは子どもがいる夫婦からお願いだった。
なんでも子どもが病にかかってしまったらしい。
ずっと高熱を出して、寝込んでいるそうだ。
「この吹雪では薬も買いにもいけず、村を通る行商も……」
確かにこの天気で外に出るのはかなりまずい。
慣れた道でも遭難することもあり得るだろう。
「わかった。父上に頼んで、薬の手配を」
「カリム兄さん、僕が診ます」
「ルーシェル?」
「そういうこともあろうかと、薬も用意していたので」
「……さすが、我が弟。兄として誇らしいよ」
僕は早速、夫婦の家へと戻る。
先ほどは気づかなかったけど、奥の部屋で子どもがベッドの上に寝かされ、高熱を出してうなされていた。
【竜眼】を使う。
《名前》セルロ《種族》人族
《力》3《頑強》4《素早さ》4《魔力》2
《感覚》6《持久力》5《状態》疲労 風邪
「どうですか?」
夫婦は揃って身を乗り出し、藁にも縋るかのように僕を見つめる。
必死な夫婦に対して、僕は安心させるために微笑んだ。
「ご心配なく。単なる風邪ですので」
僕は【収納】からスライム飴を取り出す。
舐めるのは、今は辛いだろうから一旦湯煎で溶かし、さらに水に混ぜて飲ませることにした。
しばらくすると、それまで赤い顔をして、しんどそうにしていた子どもの寝息が鎮まっていく。
夫婦は一瞬子どもの息が止まったのかと勘違いしたらしい。
しかし、聞こえてきた安らかな寝息を聞いて、安堵した。
「あなた……」
「よかった! よかった!」
夫婦はここでも涙を流して喜ぶのだった。
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