第125話 行け! アイスランス!!
☆★☆★ 昨日コミカライズ更新されました ☆★☆★
昨日、コミカライズ更新されました。
お休みに、ヤンマガWebで是非読んでくださいね。
ちなみにヤンマガWebのHPが、結構刺激的な作品が多いので、
回避したい場合、私のTwitterの宣伝から飛んでもらえると、安全に目にすることができると思います。
マグマ石を取りに行くことになった僕とカリム兄さん、フレッティさん、そしてユランはレティヴィア家の玄関に立っていた。
今日も朝から吹雪いていて、横殴りの雪が僕たちの頬に当たっている。
流石にこうなると、カットマトの恩恵を感じない。
僕もカリム兄さんたちも、防寒着を着ていた。
着ていないのはユランだけだ。
まあ、竜の姿になっているからなんだけど。
「頼んだぞ、ルーシェル。カリム、フレッティも、ルーシェルを守ってやってくれ」
クラヴィス父上の薫陶に、頭まですっぽりと猪の防寒着を着たカリム兄さん、フレッティさんが頷く。
僕も山で使っていたフロストボアのマフラーを巻く。
首に巻くだけで、身体の【耐寒性能】が格段に上がるのだ。
そんな僕を抱擁したのはソフィーニ母上だった。
「危ないと思ったら、すぐ引き返すのですよ、ルーシェル」
「はい。わかってます、ソフィーニ母上」
「ルーシェルのことだから無事帰ってきてくれると信じていますが、気を付けてね。ユランも」
最後に声を掛けてくれたのは、リーリスだった。「約束」といって、僕の手を握る。
ソフィーニ母上の抱擁も、リーリスの手もとても温かく感じた。
「ルーシェル、早く行くぞ! 寒い!!」
ユランが頭の上から声をかけてくる。
今はホワイトドラゴンの姿だから、身を守る姿がないのだ。
「わかったよ。ああ。そうだ。これを食べるといいよ」
僕はユランの口に向かって投げる。
すぐに飲み込むかと思ったが、ユランは舌の上に載せて、僕が何を食べさせようとしたのかを確認した。
それは小さな氷だった。
「氷? 愚か者! こんな寒いのに、我に氷なんて食べさせるのか!!」
ユランは憤慨し、僕に吐き返す。
綺麗な氷の結晶を見て、眉根を寄せたのはユランではなく、横で見ていたカリム兄さんだった。
「ルーシェル、この氷って……。もしかして『極東の風』かい?」
「さすが、カリム兄さん。よく知ってますね」
『極東の風』は所謂魔導具だ。
ここに魔力を込めると、猛吹雪を起こし、対象を凍らせてしまう能力がある。
「なんで君がこれを? レアアイテムじゃないか?」
「たまたまですよ」
昔、アイスソードという魔剣の魔獣と戦った。
何でも凍らせてしまう意志がある魔剣で、ある時、山の湖や川を凍らせてしまって、水の確保ができなくなってしまった。
幸い雪を溶かすことによって、水は確保できたのだけど、春先になってもその氷は溶けきらない。
結局、僕はアイスソードを倒すことになるのだけど、その時できた氷が意外とおいしくて、【収納】の中に残しているのだ。
僕の話を聞いて、カリムさんは頭を抱える。
「幻のアイテムといわれている『極東の風』が、そんな風に量産されていたなんて……」
ある時を境にして発見されるようになったらしいけど、たぶんアイスソードの氷がどこかで残っていたんだろう。なかなか溶けないからね。
「なんで、そいつの氷を我が食わねばならん」
「これも耐寒性能が上がるんだよ。……あと、とっても甘くておいしいからね」
「それを早く言え」
もう1度僕は『極東の風』をユランに投げる。
それを見たカリム兄さんは「幻のアイテムまで食材になるのか」とちょっとショックを受けた様子だった。
「あまぁ~~~~~~~~~~~~い!!」
ユランはくねくねさせながら、嬉しそうに絶叫する。
「単なる氷かと思ったら、これは氷砂糖か。舐め始めると、上品な甘みがとろりと舌に絡みよる。それに……お? お? すごい。全然寒くない!」
ユランは感動した。
雪の地面を踏みながら、暴れ回る。
屋根の雪が次々と雪崩のように落ちてきた。
「ユラン! 危ないだろ!!」
注意するけど、本人はまったく悪びれるそぶりも見せない。
「雪の前に屋敷が潰されそうだ。では当主様、行って参ります」
「父上! 行って参ります!」
フレッティさんとカリムさんは、早速ユランに乗り込む。
僕も後に続き、ユランの大きな背に乗った。
「頼むぞ!」
声をかけると、クラヴィス父上は叫ぶのが聞こえた。
ユランが一羽ばたきすると、吹雪の中で一気に舞い上がる。
分厚い雲を抜けると、久方ぶりの青い空が広がった。
「おお! まだ空の上の方が温かいぞ」
いつもの調子が戻ってきたらしい。
確かに雲の上の方が、陽が照って温かく感じる。やはりこの気象は何か理由がありそうだ。
「この考察は後にしよう。今はマグマ石を手に入れることが重要だ」
一路、僕たちは南の火山地帯へと向かった。
◆◇◆◇◆
レティヴィア家の領内から南に向かう。
すると海に出るのだけど、海岸沿いに沿っていくつかの火山が並んでいる
今も活発に活動している火山もあって、噴煙の灰が常に立ちこめているような場所だった。
「あったか~い。我、急に眠たくなってきたぞ」
「今は寝ないでね! 3人も乗せているんだから」
僕はユランの耳元で怒鳴る。
本当に目がウトウトしていた。
ユランは基本的にドラゴンジョークは言っても、冗談はあまり言わない。
本当に眠いのだ。事実、若干飛行がおぼつかなかった。
ユランの言う通り、火山地帯だけあってこの辺りはとても暖かい。
防寒着を着てたら汗だくになるほどだ。
着ていた防寒着を【収納】に収めて、僕たちは火口に降り立つ。
「すごい熱気だ。地熱もすごい」
「ルーシェルくんに言われて、ファイアドラゴンの鱗を中敷きに入れてきたが、そうでなかったら、夏の砂浜みたいになっていたかもな」
吹雪の世界から一転、灼熱地獄へやってきた僕たちだけど、ちゃんと準備は怠っていない。ちゃんと火山を歩く準備はしてきたのだ。
着いた早々ユランは眠りについてしまった。
竜であるユランには、この環境は気持ちがいいのだろう。
冷たいブレスを吐くのに、暖かいところが好きなんて矛盾してるけど、体内のブレスの器官とドラゴンの肉体構造は必ずしも一致しないからね。
「仕方ないですね。ユランは置いていきましょう」
「大丈夫なのか?」
「いくらなんでも竜に襲いかかる魔獣はいませんよ。さて、ここからちょっと散歩しますよ」
「散歩とは随分悠長だな、ルーシェルくん」
フレッティさんの言葉は、僕を皮肉ってるわけじゃない。
でも、確かに悠長といえば、悠長だ。
火山の火口付近で散歩をするんだからね。
「この辺りの魔獣を呼び寄せます。人間の匂いに気づけば否が応でもやって来ますよ」
しばらく僕たちは火口の付近を歩き回る。
時々、マグマを覗き見ながら、観光気分で散策していると、「ヒー!」という鳴き声が聞こえた。
鳶にも似ているけど、少し違う。
そもそも鳶はこんな火口の付近に寄りついたりはしない。
鳶だけじゃなくて、野生の鳥もだ。
そして、僕たちの視界に映った姿は、野生の鳥とは思えぬ姿だった。
炎を纏った鳥だ。
「フレイムバードか……!」
「10、20……。まだ増えていくね」
魔獣生態調査機関のランクによれば、Cランク。
僕たちの敵ではないのだけど、群れとなると話が違ってくる。
それに存外飛んでいる敵を相手にするのは、難しい。
足場のことを忘れやすくなるからね。
ここは火口付近だ。
ちょっと足場を見誤れば、崖か火口に落ちてしまう。
「一気に片付けますよ、フレッティ」
「はい、カリム様!」
2人は僕の前に出る。
「風の精霊よ! 邪なる者を払う、一陣の刃を!!」
「フレイムタン! 私に力を!!」
【風の勇者】と【紅蓮の騎士】が叫ぶ。
瞬間、風と炎が混じると、炎を灯った竜巻が巻き起こる。
そこに次々とフレイムバードが飲み込まれていった。
フレイムバードは炎耐性が強いけど、フレッティさんがフレイムタンで作る炎は、並みの熱量じゃない。そこに加えて、カリム兄さんが操る風の精霊の力が、紅蓮の鳥を引き裂いていった。
なかなか大技だ。
でも、2人の消耗もひどい。
半分以上のファイアバードを倒したけど、まだ増えて行く。
「手伝います」
僕は【氷槍】の魔法を使い、氷の槍を生み出す。
「ルーシェルくん?」
「ルーシェル、その1本だけであれだけのフレイムバードを落とすのは……」
「まあ、見ていてください」
今、大技を使って、体力を消耗するわけにはいかないからね。
僕はさらに魔法を使う。
【複製】【複製】【複製】【複製】【複製】【複製】
僕はあっという間に【氷槍】の6本、作り出す。改めて魔法を使うよりも、こうして【複製】の魔法を使って生み出す方が、魔力消費を抑えることができるのだ。
これだけでは終わらない。
【魔法操作】
その魔法を使うと、複製された【氷槍】と僕の手に魔力でできた糸が通される。
「ルーシェルくん?」
「一体、何を?」
僕はニヤリと笑った。
「こうするんですよ!!」
いっけぇええええええ!
【氷槍】が意志を持ったように、フレイムバードに飛んでいく。
あっさりとフレイムバードの身体を貫いた。一気に6匹もだ。
「まだまだ!!」
僕は魔法の糸をたぐる
【氷槍】はさらに獲物を求める猟犬のように空を飛び回った。
次々とフレイムバードを突き刺し、まさに餌食にしていく。
危機を察してフレイムバードは【氷槍】に向かって火を吐くけど、自分よりも速く動く意志を持った槍を捉えることはできない。
さらに不規則な軌道は、完全にフレイムバードの脳処理を超える。
気づけば、80匹以上いたフレイムバードは、動かなくなっていた。
「あれほどのフレイムバードを、一瞬で」
「しかも、全部未消化している」
フレッティさんとカリム兄さんは顔を上げて、僕の方を見る。
一方、僕はフレイムバードに水をかけると、その羽毛をもいでいった。
「フレイムバードの羽毛は暖かいですから、素材としてとっていきましょう」
僕はニコリと笑った。
本日、拙作原作『劣等職の最強賢者』のコミカライズ更新日になります。
こちらの主人公ラセルくんも、腕白に無双しておりますので、是非よろしくお願いします。








