第121話 サバイバル決着!?
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まずい!!
僕は動けないし、今敵陣の中だから魔法が使えない。
しかも……。
僕は木の陰から顔を出す。
瞬間、雪玉が飛んできて、ちょうど目の前を通過していった。あぶない!
こうやってずっと僕が顔を出すのを狙っている騎士がいる。
一方フレッティさんのチームは前線をあげつつあった。
後衛で残っていた1人を前に出して、僕の側面へと回り込むつもりだ。
割とフレッティさんも大人げないところがあるよな。
完全にプロの作戦だよ、これは。
まあ、僕は正確に言えば、子どもではないのだけど。
逆に言えば、手加減を知らないフレッティさんらしい追い詰め方だ。
「ふふふ……。はははははは!!」
珍しくフレッティさんが大口を開けて笑っている。
白い息を吐きながら、真っ直ぐ僕たちのフラッグへと向かって行く。
フラッグを守るのは、リーリスとリチルさんだ。
「リーリスお嬢様! お覚悟を!!」
フレッティさんが雪玉を振りかぶる。
次の瞬間、フレッティさんは何かに気付いたような表情をした。
投球動作を止めて、すぐに木の陰に入る。
瞬間、雪玉がフレッティさんがいたところを通過していく。
それもただの雪玉ではない。
まさしく剛速球でだ。
「フレッティよ。我の存在を忘れておらんだろうな」
胸を張って、堂々と登場したのはユランだった。
意外な伏兵の登場に、フレッティさんは驚きを隠せない。前線にいたはずの彼女が、もう後衛に戻っていたからだ。
これは簡単な絡繰りだ。
最初からユランは遅れるように演技をしていた。
フレッティさんの作戦に対応するためにだ。
相手チームが突撃して来ても、あるいは別の作戦をとったとしても対応できるような遊撃部隊に、ミルディさんがユランを指名したのである。
「まさか……」
フレッティさんの顔が歪む。
対照的に微笑んだのは、ミルディさんだった。
どう見ても悪い顔をしている。
フレッティさんもそうだけど、雪合戦サバイバルをやってるみんなって、なんでこう人格が変わるんだろうか。
「あははははは! 策に溺れたね、団長。フレッティ団長たちが最初から『竜の口紅』作戦で来るのは、想定済みなんですよ」
「し、しまった!!」
「覚悟をするのは、団長だったようですね」
冷たい声を上げて、キラリと眼鏡を光らせたのはリチルさんだった。
フレッティさんが隠れている木の近くまで来て、ユランと一緒に包囲する。
まさに袋の鼠だ。すごい! ミルディさんの読みが当たった。
「ルーシェルくん、今よ!」
「は、はい!」
返事してみたものの、さっきから散発的に僕が隠れている木に向かって雪玉を放り投げてくる。
向こうも木の陰に隠れているし。
これは持久戦になりそうだな……。
ん? あれ?
雪玉の上限が5発のはずなのに、もう10発以上撃たれているような気がする。
待てよ……。
僕はそっと木の陰から顔を出して、確認する。
すると、僕のことを狙っている騎士がその場で雪玉を作っているのが見えた。
え? これって、ズルでは?
「ルーシェルくん! それは偽玉よ! おっと!」
僕と同じく木に隠れたミルディさんが教えてくれる。ミルディさんも後衛から1人増えた騎士に雪玉を投げられ、立ち往生――いや、僕の側面に周り込もうとしていた騎士を足止めしていたのだ。
「偽玉!?」
「そう。ルールでは陣地の最後衛で作った雪玉だけに当たった場合、敵を失格にできるの……」
「そうか! 敵に当てなければ、雪玉はいくらでも作っていいんだ」
「そういうこと。でも、時々本物も混じっているから気を付けて」
いいことを聞いたぞ。
危害を加えなければ、多少のズルが許されるというわけか。
ルールの裏をかくことが、この競技では必要なんだな。よし!
僕もまた偽玉を作る。
相手の雪玉を作る間隙を狙って、僕も応戦した。
狙いは騎士じゃない。
騎士が隠れている木だ。
僕は普段魔法やスキルを頼ることはあるけど、魔獣を食べて鍛えた筋肉も武器の1つだ。
偽玉を思いっきり圧縮して固めると、木に向かって投げつける。
見事命中。
大きな音を立てて、木がぐらつく。
瞬間、木の枝に引っかかっていた雪が一斉に落ちてきた。
「うわああああああ!」
根元にいた騎士は、雪崩のように降ってきた雪をもろに被る。
胸元まで雪に埋まり、動けなくなってしまった。
その前に現れたのは、僕だ。
「し、しまった!」
「ごめんなさい。雪玉が勿体ないので、このまま行きますね」
僕は走り出す。
「まずい! 突破された!!」
慌てたのはミルディさんを狙っていた騎士だ。
戻ろうとした時、後頭部に雪玉を当てられる。
「へへん」
ミルディさんが一瞬の隙を逃さなかった。
得意げに鼻を擦る。
「おお! いいぞ。お前たち! ルーシェルよ。行くのだ!! ――――あれ?」
フレッティさんを抑えていたユランの手が止まる。その手に持っていた雪玉がなくなっていた。
「ユラン! どうして本物の雪玉を投げてるのよ!」
近くで見ていたリチルさんが悲鳴を上げた。
「隙ありだ!」
呆然としていたユランに雪玉が当たる。
フレッティさんもまたわずかな間隙をも見逃さなかった。
返す刀でフレッティさんは、リチルさんを狙い、威嚇する。
1vs1となった時点で、リチルさんも木の陰に隠れた。
「リーリスお嬢様、来てください。2人で団長を抑え込みます!」
「わかりました」
リーリスがフラッグから離れて、リチルさんに加勢する。
「リチル、大丈夫?」
「こっちは大丈夫。早くフラッグを!」
「わかったわ!!」
ミルディさんもフラッグに向かって走り出す。
フレッティさんのチームで動けるのは、これで2人。
前衛にフレッティさんがいるから、後衛は1人だけだ。
最後の騎士は――――。
「ガーナーさん??」
寡黙の騎士が、フラッグを背にして立っていた。
ガーナーさんはかなりの巨漢だ。おかげでフラッグが見えない。
何よりも「守る」という気合いがひしひしと伝わってくる。
「ガーナー、返り討ちにしてやれ!!」
「…………!!」
団長の命令に、ガーナーさんはふんと鼻息を荒くする。
僕とミルディさんは、そんなガーナーさんに立ち向かっていくのだった……。








