第120話 サバイバル開始!
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全体で10位、ジャンル別で4位をいただきました。
あのファブルの下でちょっと震えている……。
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参謀役のミルディさん、リチルさんを交えて作戦会議が開かれた。
2人とも何故か黒いレンズがついた眼鏡をかけている。いつもと空気が違って、物々しかった。
「あ、あの……。ミルディさん? その恰好は一体……」
「リチルまで……」
リーリスは心配そうに見つめると、突然ミルディさんは叫んだ。
「お黙りなさい、洟垂れ小僧ども!」
「こぞ――――」
青筋を浮かべたユランが反論しようとしたが、ミルディさんの勇ましい言葉がそれを遮る。
「いいか。あたしは今からあなたたちの教官である。今からあなたが行うことは戦争! 戦いなのよ!!(迫真)」
ミルディさんは黒眼鏡越しに僕たちを睨む。
すごい迫力だ。今から行うのは、競技じゃなくて戦争なの……?
「いいか、小僧ども。これは雪合戦ではない。繰り返す。これは雪合戦ではない。雪合戦サバイバルなの。食うか食われるかの戦争なのよ。話しかけられた時以外口を開いてはダメよ。口で〇〇たれる前と後に“サー”と言いなさい! わかった、洟垂れども!」
「「「はい、サー」」」
「はい――ではない。サー」
「「「サー!!」」」
「よし! 声も申し分ない。諸君らには戦争へ向かう覚悟と〇〇があるようだ。大変よろしい!」
ミルディさんと、リチルさんは満足そうに微笑む。
「な、なんなのだ、これは?」
「ま、まあ。ミルディさんも、リチルさんも大まじめでやってるみたいだし。付き合ってあげようよ」
「る、ルーシェルは大人ですね」
一応これでも300年生きてるからねぇ。
「そこ! さっきも言ったことを聞いてなかったか。話しかけられた時以外口を開くなと言っただろ!」
「サー!」
ミルディさんからピシャリと言われると、僕は背筋を伸ばし、大声を張りあげた。
「よし! では、プロジェクト『砂漠の狐』について説明する」
『砂漠の狐』って……。
今、僕たち雪の上にいるんだけど。
遊びなのか、真面目なのか、よくわからないなあ。
20分後……。
ついに雪合戦サバイバルは開始された。
5vs5に分かれると、角笛の雄々しい音が響く。
直後、僕、ユラン、ミルディさんの3人はスタートダッシュを決めた。
東を陣取る僕たちが目指すのは、西に展開しているフレッティさんたちの陣地だ。
どうやらスタートダッシュを決めたのは、フレッティさんたちも同様のようだ。
3人の騎士が走ってくる。そのうちの1人がフレッティさんだった。
「考えることは同じか!」
フレッティさんは不敵に笑う。
雪合戦サバイバルの肝は、自分たちの陣地をどれだけ広げるかが勝利の鍵になる。
魔法を使える自陣の領地を増やして、フラッグに迫るのだ。
「フレッティさんが来ます! ミルディさん!」
「投げていいか?」
「まだよ、ユラン。まずは陣地を取ることが先よ」
「え? すまん。投げてしまった」
すでにユランは5つしか持てない貴重な雪玉の1個を投げる。
硬く固められた雪玉は雪煙を弾き飛ばし、フレッティさんとは別に、向かってくる騎士の1人に命中した。
「よし! やったぞ!!」
ユランはガッツポーズだ。
「この距離で当てるなんて。さすがユランね~。いや、感心してる場合じゃないわ。立ち止まっちゃダメ! あたしたちの目的は陣地を広げるっことよ!!」
ミルディさんは叱咤する。
一方、フレッティさんは味方が1人やられても涼しい顔だ。
もう1人の騎士と一緒に、真っ直ぐ僕たちの方へと向かってくる。
ダメだ。
このままでは向こうの方が陣地が広く取ることになってしまう。
「ミルディさん、僕が先行していいですか?」
「え? ……よ、よし! 許可する! 行ってこい、ルーシェル一等兵!!」
「行きます!」
【走行加速】
【雪歩行適応】
僕はついに魔法を解禁する。
走る速度が上昇。さらに雪の上でも足が沈まない魔法をかける。
これでロスなく進めるはずだ。
「行けぇ! ルーシェル君!!」
ミルディさんの声援を受けて、僕は爆発的速度で加速する。
遅れを取り戻した上に、陣地の6割を制圧することに成功した。
僕はギリギリのところで、木の根元に隠れる。
ミルディさん曰く、ここから持久戦の始まりだ。お互い陣地から相手を攻撃し、1番先頭にいる相手を攻撃して、敵陣地を崩すのだ。
僕はさらに魔法を使う。
【鷹の目】
イーグルソルジャーという魔獣を倒した時に得た魔法だ。
空の上から見た映像を、脳内に投影する。
この魔法を使えば、隠れた状態でも、敵陣の様子や配置を知ることができる。
フレッティさんたちには悪いけど、ここは大いに魔法を使わせてもらうよ。ルールに則っているから、卑怯とは言わないよね。
「さて、フレッティさんはどこの木の陰に? ――――え?」
瞬間、近くで音が聞こえた。
雪を踏む音だ。
「まさか!」
僕は顔を上げる。
瞬間、フレッティさんが僕の側を駆け抜けていく。
そのまま真っ直ぐ味方陣地の方へと向かって行った。
「しまった!」
僕は雪玉を投げようとしたが、遅い。
フレッティさんは木の陰に隠れて、射線を切る。僕なら木を折ってでも、当てられるけど、それは危害を加えることになる。
「しまった。『竜の口紅』作戦か!?」
声を張りあげたのは、ミルディさんだった。
『竜の口紅』作戦!?
ネーミングも、作戦の内容も何それ??
「そのまま一直線にフラッグを狙う作戦よ。やるわね、フレッティ団長。こっちが不慣れなのをわかってて、奇襲攻撃を仕掛けてくるなんて」
ミルディさんは何だか嬉しそうだ。
大ピンチだというのに。
「フラッグに戻りましょう! このままじゃ奪われる!!」
「ダメよ。このまま戻ったら、敵の思うツボだわ」
「その通り!」
遥か先でフレッティ団長の声が聞こえる。
「ルーシェル君、気を付け給えよ」
「え?」
「君は私の陣地にいることになる。それはつまり――――」
「あ! しまった! 僕、魔法が使えなくなる――――」
この雪合戦サバイバルではあくまで敵陣地にいる場合、魔法が使えない。
フレッティさんが相手方の先頭プレイヤーだから、今僕がいる場所は僕たちの陣地でもあり、相手の陣地でもあるのだ。
気づいたその時だった。
僕が隠れている木に向かって、雪玉が投げられる。
危ない! 危なく当たるところだった。
見ると、フレッティさんともう1人いた騎士が僕のいる方に鋭い視線を送っている。
多分、僕を帰さないつもりだ。
「きぃいいいい! してやられたわ!!」
ミルディさんは頭を抱える。
雪合戦サバイバル前の勢いはどこへやらだ。
まずいな。これは絶体絶命のピンチだぞ。








