第117話 ストレスたまってる?
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電子もあるので、そちらも是非。
感想いただいてまして、気に入ってくれた方が多く大変恐縮です。
Web版を読んでる人ほど、変わった読み口にびっくりするので是非お手に取ってみて下さい。
ユランは首に巻いていたマフラーに手を掛ける。大きく掲げるように取ると、突如叫んだ。
「あっっっっつ~~~~~~い!!」
マフラーをとったかと思えば、今度は重ねて来ていた上着を取り払おうとする。ついには下着まで手をかけようとした時、カンナさんから「待った」がかかった。
「待った待った! ユラン、何をしているの!? あなたはドラゴンでしょ! そんなサービスシーンを演出するようなキャラじゃないでしょ!!」
「暑いものは暑いから仕方ないのだ!」
「さっきまで『寒い。寒い』と言っていたのに、突然どうしたの?」
カンナさんは頭を抱える。
ただそれはユランだけに留まらなかった。
「暑い……」
無意識に着ていた上着の襟元を弛めたのは、リーリスだった。おもむろに脱ぎ始める。さすがにユランのように下着までというわけではなかったが、手団扇で赤くなった顔を仰いでいた。
「あたくしもちょっと失礼して」
そう言って、ソフィーニ母様まで服を脱ぎ始める。
「おお! すごい! すごいぞ、わはっはっはっは!」
大声を上げて笑っていたのは、クラヴィス父様だ。
食事の席だというのに、いつの間にか諸肌になっていた。ピュアエルフの真っ白な肌をさらして、豪快に笑っている。
1人涼しげなのはカリム兄様ぐらいだろうか。
すでに上着を脱いで、下に着ていたシャツも袖を捲っている。その額には大量の汗が浮かんでいた。
「みなさま、どうなされたんですか?」
リチルさんが目を丸くする。
相方のミルディさんも驚いていたが、突然脱ぎ始めた家族を見て、なんだか楽しそうだった。
「そ、そうですよ。リーリスお嬢様まで」
別の意味でカンナさんが嬉しそうにしている。
こういうのもなんだけど、犯罪の臭いがした。
「さて、そろそろ白状してもらおうかな。この現象はルーシェルの仕業なんだろ?」
カリム兄様が目を光らせる。
さすが兄様。どうやらお見通しのようだ。
「はい。これがカットマトの効力です。食べると、寒さに強くなる効力があるんですよ」
「それにしては、効き過ぎではありませんか?」
リチルさんが苦笑する。
「食べたばかりの時はこういう反応になります。徐々に体温が下がってくれば、シャツ1枚でもポカポカした状態が続きますよ」
「ほう。それは頼もしいな」
「それにカットマトの効果だけではありません。入っている豆はダイダイズという魔草の一種で、血管を拡張する作用がありますし、色茄子や、冬甘藍は、寒さに対するストレスを和らげる効果があるんだ」
「寒くてストレスがたまることもあるんですか?」
「うん。放っておくと、風邪の原因になったり、眠れなくなったりするから要注意だよ」
僕の説明を聞いて、ソフィーニ母様はポンと手を叩いた。
「なるほど。温かくなっただけじゃなくて、身体が軽くなったのも、気付かぬうちにためていたストレスが問題だったのかも~」
「ソフィーニよ。お前、ストレスが溜まっていたのか?」
「まあ、ひどい。あたくしだってストレスを溜めることがありますよ」
ソフィーニ母様が「ふふふ」と微笑む。
その穏やかな顔から、とてもストレスを溜めているようには見えない。
まあ、僕たち子どもには見せない苦労があるのかもしれないけど。
カリム兄様は顎を撫でながら、感心した。
「なるほど。だから、薬膳風というわけだね。この料理自体が、寒さに対するお薬というわけだ」
「はい。兄様の言う通りです」
「いーなー。あたしも食べたい。今日は特に寒いし」
ミルディさんはぺろりと唇を舐めながら、願い出る。
そう言うと思って、レティヴィア騎士団のぶんも取っておいた。
後で作るつもりだ。
「やった! 楽しみ!!」
後で食べられることを知ったミルディさんは両手を突き上げ喜ぶ。リチルさんも頭を下げた。
「カンナさん、屋敷で働いてるメイドさんたちのぶんも作るので、昼食の時に出しますね。もちろん、コリンヌさんのぶんも」
外で洗濯しているコリンヌさんたちには、あかぎれ対策を考えないとね。
いい薬があるから、後で届けて上げよう。
「ありがとうございます、坊ちゃま。コリンヌたちも喜ぶと思います」
カンナさんもまた頭を下げた。
「ルーシェル。この温かさがずっとというわけではないのだろ?」
質問したのはクラヴィス父様だ。
「みんなに作っていたら、たちまちカットマトがいなくなってしまいそうだな」
「カットマトの持続時間は、約2ヶ月半です」
『2ヶ月半!』
「はい。だから、冬が特に厳しい日から食べれば、春頃には効果が切れていると思います」
カリム兄様はホッと胸を撫で下ろした。
「それを聞いて安心したよ。夏までこの状態だったら『暑い! 暑い!』と叫ばなければならないからね」
「それよりも、こんなおいしい赤茄子煮込みを冬の間しか食べられないことの方が残念だ」
クラヴィス父様が言うと、ドッと食堂に笑い声が響き渡った。
さて、肝心のユランだけど、どうやら効果が落ち着いてきたみたいだ。
さっきまで喚き立てていたが、今ではすっかり見慣れたワンピース姿に落ち着いている。
「どう? ユラン?」
「うむ。全然寒くなくなったぞ。褒めてやろう、ルーシェル」
「ありがとうございます――でしょ!」
「痛て!」
ユランは教育係のカンナさんにはたかれる。
しかし、寒さを克服したユランは無敵だ。
すぐに立ち直ると、早速得意げな笑みを浮かべた。
「さて! では行くぞ、ルーシェル!」
「え? どこに??」
「決まっておる!」
雪遊びだ!








