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第11話 ルーシェルの決意

日間総合2位をいただきました!!

ブックマークと、評価をいただいた方ありがとうございます。

「おい。もういい加減に泣き止んだらどうだ?」


 フレッティさんが声をかけた相手は、僕ではない。


 僕はすでに立ち直っている。


 300年分の涙と言っても、さほど多くはなかったようだ。


「だって、団長…………ぐすっ!」


 ちなみに今泣いているのは、リチルさんだ。


 僕が泣き止んでから結構時間が経過しているのに、今も泣いている。目からポロポロと涙の滴が垂れて、白い頬にはすっかり痕が付いていた。


 フレッティさんが子どもをあやすように語りかけるが、まだまだリチルさんは泣き止みそうになかった。


「――ったく、ルーシェル君がもう泣き止んでいるというのに……」


「だってぇ、可哀想じゃないですか。父親に捨てられて、その間こんな山の中で暮らすなんて」


「それはそうだが……」


 フレッティさんは「まいったなあ」と猫をあやす衛兵みたいに頭を掻く。


 リチルさんの泣き声が響く中で、僕はずっと気になっていたことを尋ねた。


「あの……。僕からも質問してもいいでしょうか?」


「なんだい?」


「フレッティさんたちは何故、この山にやってきたんですか?」


「あ――……」


 フレッティさんは微妙な声を上げ、ガーナーさんの方を向く。


 泣いていたリチルさんも涙を拭き、ついに泣きやんだ。


 やってきたのは重い沈黙だ。まずいことを聞いてしまったかな。


 でも、フレッティさんがいた辺りは、もう山の中腹だ。あの辺りになれば、人は滅多に入ってこない。


 300年ずっとこの山にいたけど、あそこまで侵入してきた人間は、フレッティさんたちが初めてだった。


「えっと……。僕、何かまずいことを尋ねたでしょうか?」


「いや、君の質問はもっともだと思う。普通、あんな場所に人間はいない」


 フレッティさんの言葉を聞いて、一瞬ガーナーさんが僕の方を見る。


 意味深な感じだったけど、寡黙な騎士さんは何も言わなかった。


「改めて名乗ろう。私の名前はフレッティ・へイムルド」


「ガーナー・バード……」


「リチル・ヴィーグ。今休んでいるのはミルディ・ウォーレムよ」


 それぞれ自己紹介をする。


「我々はレティヴィア家という公爵家に仕えるレティヴィア騎士団だ」


「はあ……。その騎士団の方たちが何故?」


「実はレティヴィア家には家宝が存在してね。それを盗人に盗まれてしまった」


「家宝……?」


「それを取り返そうとして、我々は盗人が逃げ込んだ野盗のアジトを強襲したのだが……」


 フレッティさんは言葉に詰まる。


 表情を見ればわかる。おそらく失敗したのだ。


 余程悔しかったのだろう。守るべき家の家宝が盗まれ、取り返そうとしたのにそれも果たせなかった。


 それどころか追撃され、辛くも魔獣がひしめく山に逃げるしかなかったのだ。


 屈辱と思うのも無理はない。


 それにしても、フレッティさんほどの人間が返り討ちにあってしまう相手か。


 これは僕の見立てだけど、フレッティさんは騎士としては中の上といったレベルだ。


 はっきり言って、寄せ集めの野盗ぐらいじゃ適わないだろう。


 おそらく野盗の中に、かなりの実力者がいると見ていい。


「フレッティさん、もう1つ訊かせてください」


「いいよ」


「もしミルディさんの怪我が治ったら、フレッティさんはどうするつもりですか?」


 それまで僕に対してどちらかと言えばフランクに接してきたフレッティさんの表情が明らかに曇る。


 何度か逡巡した後、口を開いた。


「おそらくもう1度野盗のアジトに踏み込むことになるだろう……。家宝を奪われたのは我々の落ち度だ。それを取り戻すまでは、屋敷に帰らないと決めている」


 今まで見てきたフレッティさんの表情の中で、それはもっとも真剣で強い決意が表れていた。


 まだ出会って間もないけど、フレッティさんの責任感の強さはヒシヒシと感じる。


 この人が帰らないと言えば、本当に帰らないのだろう。そしてそれは、ガーナーさんも、リチルさんも、そしてミルディさんも理解しているように思う。


 それにフレッティさんのような騎士は、トリスタン家にもいた。


 父上の一番弟子とも言うべき人で、父上が厳しいのに対して、その人は優しく僕に接してくれた。剣の稽古に付き合ってくれたこともある。


 だが、その人は僕が山に追放される前に、死んでしまった。


 戦の最中、敵地で孤立した仲間を助けるために単身で突撃したのだ。


 仲間は助けられたが、その人は帰らぬ人になってしまった。


「ルーシェルくん、大丈夫ですよ」


 いつの間にか項垂れていた僕を励ましたのは、リチルさんだ。パンと僕の背中を叩く。


「少し手強い相手がいましたが、あれは奇襲も同じでした。次戦えば、団長が必ず勝ちます」


「リチルの言う通りだ。次は負けん」


 フレッティさんはパチリと拳を打ち鳴らし、決意を固めた。


 再びフレッティさんの姿が、あの騎士の姿と重なる。


 僕は握り込んだ拳の裏側で、決意を固める。


 なんとかこの優しい人たちを救うことはできないだろうか、と。


日間総合1位の作品がめちゃくちゃ強いですが、

更新を続けていって、良い作品にすればいつか追い越すことができるんじゃないかと、

考えています。


「面白い!」「更新をはよ!」と思っていただけましたら、

ブックマークと、下欄にある☆☆☆☆☆の評価をよろしくお願いします。

日間総合1位を取ることができれば、めちゃくちゃ作者のモチベーションが上がります。

更新頑張りますので、よろしくお願いします。



※ 本日、拙作『「ククク……。奴は四天王の中でも最弱」と解雇された俺、なぜか勇者と聖女の師匠になる』コミカライズの更新日となっております。ニコニコ漫画で今現在、全話無料で読むことができますので、よろしければチェックして下さい。

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[一言]  300年に何か思い出すのものが。。。 スライム倒して○○○年をここまで読んで思い出しました。 
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