表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
119/287

第114話 繭とドラゴン

☆★☆★ いよいよ明日発売 ☆★☆★


ついに明日となりました!

すでに電子書籍の方が解禁されているみたいです。

書籍の方も、すでに店頭にでているところもあるみたいなので、

会社帰り、学校帰りに覗いてみてはいかがでしょうか?


WEB版をすべてリライトし、新キャラや絶品料理を追加しております。

TAPI岡先生のイラストも素晴らしいので、是非見てくださいね。


ご購入よろしくお願いします。


挿絵(By みてみん)

 しばらく窓から外の景色を眺めていると、再び部屋の外が騒がしい。

 誰かが走ってくるのがわかった。


 半開きの扉をはね除けるように開き、カンナさんが現れる。


「なんだ。朝から騒々しいなあ。ルーシェルくんの部屋だよ。もうちょっとお上品にはいってこられないの、カンナ」


 それ……ミルディさんが言うことじゃないよね。


 横のリチルさんも同じことを思ったらしい。

 ただ怒る気にもなれず、やれやれと首を振っている。


「どうしたの、カンナさん」


「朝から失礼します、ルーシェル坊ちゃま」


 ペコリと頭を上げる。


 今日のカンナさんは真面目なメイドモードみたいだ。最近、どこか締まりのない顔で僕の前に出てくることが多かったから、随分と久しぶりな気がする。


 どっちのカンナさんも好きだけど、こっちの真面目モードの方が僕としては話がしやすい。


「至急、ユラン様の部屋に来てもらえないでしょうか?」


「ユランの部屋? ユランがどうしたの?」


 そう言えば、正式にユランのお世話係&教育係はカンナさんということになったんだっけ?


 ドラゴンと吸血鬼族(ヴァンパイア)

 長く生きるもの同士、話が通じるところもあるようで、割とユランも信頼してるらしい。


 どっちも長生きだけど、カンナさんの方が昔から人間社会で生活してるから、ユランも学ぶことが多いのだろう。


「ご説明するよりも、見ていただく方がよろしいかと」


「ん? わかったよ。すぐ行く」


「お願いします」


 カンナさんは頭を下げると、またどこかへ行ってしまった。





 ユランの部屋に辿り着く前に、カンナさんが僕を呼びに来た訳がわかった。


 ユランの部屋は僕の部屋の1つ上の階にあるのだけど、その部屋の前には何か繭のようなものが張り巡らされていたのである。


 その繭の前ではすでに家族が集まり、武装したフレッティさんやガーナーさんが、繭を取り囲んでいた。


 僕がやってくると、一斉にこちらを向く。


「おはようございます、フレッティさん、ガーナーさん。それにリーリスも」


「おはようございます、ルーシェル。その……」


 リーリスはちょっと心配そうに繭の方に振り返った。

 フレッティさんたちも同様だ。


「ルーシェル、これはどういうことか説明できるかい?」


 先に現場に到着していたカリム兄さんが尋ねた。

 側にいるクラヴィス父様やソフィーニ母様も心配そうだ。


「お騒がせしてすみません。皆さん、察しがついていると思いますが、これはユランの仕業です」


「ユランが誰かに何かされているというわけではないのだな」


「ええ……。ドラゴン――ホワイトドラゴン特有の現象というか」


「現象? しかし、繭のようなものは一体……」


 クラヴィス父様は手で触れてみる。


「できれば、迂闊に触らないであげてください。それは繭ではなく、ユランの髪――つまり体毛なので」


「体毛!! これが?」


 クラヴィス父様はことさら驚いた様子だった。

 ただ魔獣学者としての血が騒ぐのだろう。

 顔を近づけ、観察を続ける。


「あ。わかった。あたしみたいにユランも冬になると、毛が生え替わるとか? これはその前兆なんじゃない?」


「そんなわけないでしょ」


 ミルディさんが何だかちょっと嬉しそうに指摘すると、すぐにリチルさんにたしなめられてしまった。


「いえ。その指摘は間違っていませんよ。これもまたユランの冬の姿といってもいいので」


「ルーシェル。つまり、中で何が起こってるのですか? ユランは無事なのですか?」


 リーリスが心配そうに尋ねる。


「無事だよ。ただ本人は困ってるだろうけどね」


「「「困ってる?」」」


 僕はそっと髪に触ると、大きな声を上げて話しかけた。


「ユラン、起きてる?」


『…………』


「みんながびっくりしてるんだ。1度この髪を引っ込めてくれないかな」


 2度話しかけたけど、返答はない。

 でも、微妙に繭状の髪は揺れていた。


「まだ眠っているのでしょうか?」


「いや、多分起きてるよ。……ユラン、返事だけでもしてくれないかな。君の悩みを僕は解決できるから」


『…………い』


 その時、何か微かに聞こえた。

 僕だけじゃなくて、フレッティさんたちも聞いたようだから間違いない。


「ユラン、今なんて」


『……さむい』


「「「「さむい???」」」


 みんなの頭に疑問符が浮かぶ。


「ユランってドラゴンよね」

「寒さに強いのではないですか?」

「私と戦った時、吹雪を吐いていたぞ」

「では、この繭のようなものって……」


 皆が一斉に首を傾げる。

 最後のリチルさんの質問に僕は答えた。


「基本的にドラゴンは、雪山に住むフロストドラゴン以外では、寒さに弱いんですよ。冬季になると、温暖な地域を探したり、火山の近くに移動したりするんです」


 ただホワイトドラゴンのユランは、どっちかというと寒さに強い。

 けれど、今日の寒さはホワイトドラゴンといえど、堪えたのだろう。


「それは聞いたことがあるが、この繭は……」


 クラヴィス父様は質問を重ねる。


「怪我をして動けなかったり、老齢で空を飛ぶことができなくなったドラゴンは、こうして自分の体毛を伸ばして、寒さを堪え凌ぐみたいです」


 とはいえ、僕もこうやって繭を張ってるドラゴンを見るのは、3回目だ。

 うち、2回はユランだけどね。


「カンナさん、何か防寒着みたいなのを用意してくれませんか」


「かしこまりました」


 カンナさんは走って行く。


「ユラン、今服を用意するから一旦体毛を縮めてくれないかな? 無理なら、僕が切るけど」


『ダメだ! カンナが言ってた。「髪は女の命だ」と』


 うんうん……。

 ユランが女の子らしいことを言ってくれて、僕はちょっと嬉しいよ。

 ドラゴンらしさからはかけ離れてきているけど。


 すると、徐々に広がっていたユランの体毛が縮んでいく。ゆっくりと巻き取られるように、部屋の中へと戻っていった。


 ようやく中に入ることができると、僕はユランと再会する。

 本人は二の腕を何度もさすりながら、カタカタと歯を鳴らしていた。


 寒い寒い、と呟いているけど、そりゃそうだ。本人は薄着1枚だったのだから。


「おはよ、ユラン」


「挨拶などよい。ルーシェル、早くこの寒さをどうにかしろ」


「わかったよ。その前に、服を着よう。重ね着をすれば、寒さも和らぐよ」


 ちょうどその時、カンナさんが部屋に入ってくる。

 厚手のセーターなどを着せると、最後にマフラーを巻いた。


 ちょっと重ね過ぎかなと思うぐらい、ユランはまん丸になっていたけど、本人は喜んでいた。


「おお! あったかい! あったかいぞ、ルーシェル」


「気に入ってくれたようでよかった。カンナさんにお礼を言うんだよ」


「ありがとう、カンナ! しかし、大発見だ。人間はなんでこんな防御力が低そうな服なんぞを常時身に纏っているか不思議だったが、寒さを和らげるためだったのだな」


「え……?」


 今まで服をなんで着ていたのか知らなかったのか。


 ユランらしいといえば、ユランらしいけど。


「しかし、今日は冷えるのぉ。ユランでなくても、私だって繭の中に籠もりたいぐらいだ」


 クラヴィス父様は二の腕をさする。


「一気に寒くなりましたからね。こう雪が降っては……」


「うむ。こういう時は温かいものを食べるに限るな」


「それならとっておきの魔獣食がありますよ」


 その時、僕の頭にある料理が浮かんでいた。


メロンブックス様、ゲーマーズ様では特典SS付きペーパーが配布される予定です。

お近くの方は是非ご利用下さい。


挿絵(By みてみん)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
シリーズ大重版中! 第7巻が10月20日発売!
↓※タイトルをクリックすると、公式に飛びます↓
『公爵家の料理番様~300年生きる小さな料理人~』単行本7巻
DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large


9月12発売発売! オリジナル漫画原作『おっさん勇者は鍛冶屋でスローライフはじめました』単行本4巻発売!
引退したおっさん勇者の幸せスローライフ続編!! 詳細はこちらをクリック

DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large



8月25日!ブレイブ文庫様より第2巻発売です!!
↓※タイトルをクリックすると、公式に飛びます↓
『魔王様は回復魔術を極めたい~その聖女、世界最強につき~』第2巻
DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large


シーモア限定で6月30日配信開始です!
↓※タイトルをクリックすると、シーモア公式に飛びます↓
『宮廷鍵師、【時間停止】と【分子分解】の能力を隠していたら追放される~封印していた魔王が暴れ出したみたいだけど、S級冒険者とダンジョン制覇するのでもう遅いです~』
DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large


コミカライズ10巻5月9日発売です!
↓※タイトルをクリックすると、販売ページに飛ぶことが出来ます↓
『「ククク……。奴は四天王の中でも最弱」と解雇された俺、なぜか勇者と聖女の師匠になる10』
DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large


『アラフォー冒険者、伝説になる』コミックス9巻 5月15日発売!
70万部突破! 最強娘に強化された最強パパの成り上がりの詳細はこちらをクリック

DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large



最新小説! グラストNOVELS様より第1巻が4月25日発売!
↓※表紙をクリックすると、公式に飛びます↓
『獣王陛下のちいさな料理番~役立たずと言われた第七王子、ギフト【料理】でもふもふたちと最強国家をつくりあげる~』書籍1巻
DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large




3月12発売発売! オリジナル漫画原作『おっさん勇者は鍛冶屋でスローライフはじめました』単行本3巻発売!
引退したおっさん勇者の幸せスローライフ続編!! 詳細はこちらをクリック

DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large



最新作です!
↓※タイトルをクリックすると、ページに飛ぶことが出来ます↓
追放王子、ハズレギフト【料理】を極める~最強のもふもふ国家で料理番を始めます。故郷の国が大変らしいのですが、僕は「役立たず」だったので関係ないよね~



『魔物を狩るなと言われた最強ハンター、料理ギルドに転職する』
コミックス最終巻10月25日発売
↓↓表紙をクリックすると、Amazonに行けます↓↓
DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large



6月14日!サーガフォレスト様より発売です!!
↓※タイトルをクリックすると、公式に飛びます↓
『ハズレスキル『おもいだす』で記憶を取り戻した大賢者~現代知識と最強魔法の融合で、異世界を無双する~』第1巻
DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large


<『劣等職の最強賢者』コミックス5巻 5月17日発売!
飽くなき強さを追い求める男の、異世界バトルファンタジーついにフィナーレ!詳細はこちらをクリック

DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large




今回も全編書き下ろしです。WEB版にはないユランとの出会いを追加
↓※タイトルをクリックすると、公式に飛びます↓
『公爵家の料理番様~300年生きる小さな料理人~』待望の第2巻
DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large


小説家になろう 勝手にランキング

ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ