8 派遣登録
本日2話目です。
まずは登録ということで、カウンターに置かれた何かの機械の前に座らされる。
眼科とかにある視力検査の機械のようなもので、あごを乗せる台とゴーグルのような覗き窓がついた装置だ。
手をはめる台も横にあり、指先の部分はカバーがついていて、そこに指を差し込むようになっている。
この機械で登録者カードを作るらしい。
装置に手とあごを乗せてゴーグルを覗くと、一瞬ピカッと光った。カードは個人認証がされるとのことなので、きっとこの機械で網膜認証や指紋認証が取られるのだろう。
今どきのカードはハイテクだなぁ……、なんて感心してる間にも、もうカードが出来上がっていた。
「はい。これがななさんの登録者カードです。今回はお願いして登録していただいたので無料ですが、紛失、再発行の手続きは有料となりますので、なくさないように気を付けて下さいね。お仕事の受注、依頼達成報告、報酬の支払いなども全てこのカードを使用します。お仕事の際には常に携帯して下さい。こちらの首から下げるカードホルダーをサービスさせていただきますが、ご利用になりますか?」
なるほど。これを首から下げてると社員証のような感じになるのか。身に付けていた方がなくしにくいだろうし、使わせてもらおう。
カードをホルダーに入れて首を通すと、なんか仕事しますって感じがして少し誇らしい。
「さて、早速ですが、ななさんにぴったりのお仕事を見つけましたので紹介させて下さい。そろそろ薬草茶の効果も出てきて体力が回復されていると思うんですけど、体調はいかがですか? もし、よろしければ、お試しで今から一時間程やってみませんか? 無理なく続けられそうでしたら、明日からのお仕事入れますので。つらいようなら、また別のお仕事を探しますので、気楽な感じでお試し、やってみませんか?」
言われてみると、ずっとフラフラしてつらかった体が、なぜだか随分と楽に感じる。痛みも今はすっかり引いている。不思議だけど、これなら一時間くらいなら動けるかも。駄目なら駄目でリタイアしても、ちょう子さんも許してくれそうだし。
どんな仕事か聞いてみようかな。
「体の方は少しなら大丈夫そうです。私にできるお仕事なら、やってみたいですけど。どんなお仕事なんですか?」
あ、でも、まるを連れてるんだった。
これじゃあお仕事なんてできないよね。
「あの、でもやっぱり、犬がいるので一回出直してもいいですか?」
「まるちゃんでしたっけ? おとなしくしてるみたいですし、今日は一時間だけですから、事務所で私がお預かりしますよ。私も一人で寂しいですし、ななさんのお仕事中遊ばせて下さい」
「……え、……でも」
まただ……。
何かと理由を付けては飛び出してくる弱気が、また出てきてる。これじゃあダメだ。自分のことだから良くわかってる。きっと出直すってなったらビビって来れなくなる。
それはチャンスを逃がすということ。
今は逃げちゃダメなんじゃないかな?
まるは人見知りしないし、ちょう子さんとも相性悪くなさそうだし。一時間くらいなら、良い子で待っててくれるだろう。
お願い……してみようかな。
思い切って勇気を出してコクリと頷くと、ニコニコ笑顔のちょう子さんがのたまう。
「ななさん犬好きですよね? そんなななさんにぴったりのお仕事があります。『犬を撫でるだけの簡単なお仕事』です。いかがでしょう?」
――はあ?
やっぱり私は、まだ夢の途中なのかもしれない。
夢ならばこのまま流されておけばいいのかな?
現実だったら超幸運?
そんな風にどこか思考を放棄していた私は、
この出会いが、
この一歩が、
――これからの自分を変えていくものになるとは全く気付いていなかった。
お読みいただきありがとうございます。
これにてプロローグ的な第一章が終了です。
明日からは第二章、いよいよお仕事が始まります。私的には超うらやまなお仕事です。
引き続きお楽しみいただけましたら嬉しいです。
基本、一日2話更新していく予定です。
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