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犬をなでるだけの簡単なお仕事です  作者: maochoko
第六章 孤児院の子どもたち
63/94

63 手袋




 私はとうとう、意を決して、満を持して、百均で子どもたちへのプレゼントを購入した。


 手袋。かわいらしいモコモコの暖かそうな手袋もたくさんあったけど、あの子たちに必要なのはこれではないと思う。


 私が選んだのはカラー軍手。それも、元は小さいけれど良く伸びて、子供から大人までサイズを選ばずはめられるやつ。

 普通のおしゃれな手袋よりも丈夫だろうから、何度も洗濯しても平気だろうし、年齢の違う子どもたちにも対応できる。シスターでもはめられる。


 北風の吹く中、あの草むらで薬草摘みをするのに必須アイテムだ。


 普通の軍手の方が安くて丈夫だろうけど、子どもたちの小さなお手々には合わない。だぶついて逆に採取の邪魔になってしまうだろう。


 汚れを気にして使わないようなことになっては本末転倒なので、洗い替えの分も含めてドンッと三十組、大人買い。プラス自分用も。

 あそこには十四人の子がいたはずだから、シスターを含めても一人二組ずつ行き渡る。


 これで手を真っ赤に凍えさせることなく、採取ができるだろう。




 ◇




 二日連続になるが、翌日の午前中さっそくプレゼントを持って孤児院に向かった。


 いつもなら大きい子たちは畑の手伝いの時間だけど、収穫の終わった農家さんは冬を王都の中で過ごすらしく、この時期から春まではお手伝いはないのだそうだ。


 物入りになるのに暇ができるこの時期に、薬草採取はちょうど良かったみたい。すでに全員臨戦態勢。今にも総出で出掛けるところだった。


「あれ? お姉ちゃん、今日も来てくれたの?」


 目ざとい年長の女の子が気が付くと、あっという間にちびっ子たちに周りを囲まれる。


「お外は寒いけど、頑張って薬草摘みをしてくれるみんなにプレゼントを持ってきました。一人二つずつあるからね。汚れても洗えばいいから、これを着けていっぱい薬草集めてね」


 たくさんの手袋を並べ終えるまで、みんな良い子で待っている。シスターに言われるまでもなく、大きい子たちが仕切って、小さい順に列を作っていた。


「わあ、きれいな色がいっぱい」

「こんなのもらっていいの?」

「わたし、このいろがいい!」

「……あったかあい!」


 順番にめいめい、好きな色の手袋を選んでいく。嬉しそう。

 取り合いにならず、小さい子から選ばせてあげれるなんて、ここの子たちは本当にエラい! 優しい良い子たちだなぁと感心してしまう。


 最後に二つ残った手袋を、ニコニコして様子を見守っていたシスターに渡す。


「はい、シスターの分です」


「まあ、私にも?」


 驚き、嬉しそうに笑顔で受け取ってくれたシスターだが、


「すごく嬉しいけど、これは私には小さすぎるわ。入らないと思うの」


 と残念そう。そこで私はドヤ顔で徐に自分の分を取り出す。


「大丈夫です。これは伸びるんで私でも着けられます」


「あら、本当に……?」


 十九歳とはいえしばらく前から成長が止まっている私では、ずいぶん小柄なので説得力があまりなかったみたい。それでも嫌な顔せず、せっかくだからと自分の手にはめてみてくれたシスターが驚愕の顔をした。


「本当に入ったわ……!! すごく暖かい。ななさんありがとう」


 子どもたちも口々に大合唱。


「お姉ちゃん、ありがとう!!」


「どういたしまして。じゃあ、みんなで頑張って薬草採ろうね!」


「はあーい!!」




 畑跡地は結構広いので、十五人がかりでも何日もかかるだろう。私も毎日は来れないので、頑張って薬草を覚えてもらって、みんなの力でやり遂げて欲しい。そのために今日もここを訪れたんだ。まあ、シスターも見分けがつくようなので、なんとかなるかな?


 とか思っていたのだけど、子供の頭は柔軟で、さらにこの子たちは覚えがいい。二日目にしてだいたいの薬草がわかるようになっていた。


「これなら安心だね。私は明日からは来れないけど、また来週来るからね。それまでシスターを助けてみんなで頑張ってね」


 午前中で今日の作業は終わりにして、続きの採取は明日またやるらしい。午後はお勉強もあるし、摘んだ薬草をお茶に加工するお手伝いをするんだって。

 私も今日はここまで。午後は明日納品分のクッキーを焼かないといけない。


 部屋の中に戻り、温かいお茶をいただき、帰る前に冷えた体を癒す。


「そうだ、こんなのもあるんだよ」


 私がはめていた手袋の片方を外し、くるくるっと巻いたら、ウサギさんの頭になる。もう片方は手にはめたまま中指と薬指に頭を挿せば、あっという間にウサギさんのパペットになる。親指は外して四の手でやるのがミソ。抜いた親指の部分は内側に裏返せばポケットのように見える。


 頭をペコリとさせて、「こんにちは」とやって見せると、


「うわあっ! こんにちはー!」


 と素直な子どもたちは大喜び。軽く人形芝居をしてみるが、非常に受けがいい。


 調子に乗って、ちょっとだけ複雑になるけど、巻き方を変えて帽子をかぶった子供のパペットも作って見せる。


 自分もやってみたいとねだられて、もちろんこれも作り方を伝授してから帰ることになりました。




 ほんの少し前までは、一緒にいてもギクシャクとしてしまい、深く関わらない方が良いなんて壁を作っていた私。


 自分からちょっぴり心を開いてみたら、こんなにも温かい時間を過ごせるようになった。

 さっさと帰ってしまうのが寂しいと思えるくらいに。




 全てを拒絶して生きていくのは楽だけどつらい。


 誰かと同じ時間を過ごせるのは楽しい。




 私はここで、そんな感情を教えてもらった。






お読みいただきありがとうございます。


これにて第六章は終わりです。

ななは誰かと一緒に過ごす楽しさを知りました。


明日は2話更新頑張ります。

引き続きお楽しみいただければ嬉しいです。



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