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犬をなでるだけの簡単なお仕事です  作者: maochoko
第一章 犬に引かれて派遣登録
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5 謎の地下室

本日2話目です。

 


 まるがテレビの裏のクッションフロアを掘り壊していた。


 クッションフロアなんていくら掘っても掘れないのに、いつも飽きずにカリカリ掘り続けていて、なんてバカかわいいとか思っていたのに、我が家の愛犬のポテンシャルを読み誤っていた。


 掘り返され、破かれたクッションフロアは、素材なのか、接着剤が固まったものなのか知らないけど、白い砂を周辺にまき散らし、めくれ上がった床材から下地が見えてしまっている。


「…………うん。見なかったことにしよう」


 とりあえず白い砂だけ片付けて、洗面所のマットでも被せてしまおう。テレビの裏だし、目につく場所じゃないからいいや。


 まるを抱き上げ、遠のけて、ささっと掃除して、洗面所で隠せるサイズのマットを物色していると、またもやカリカリカリカリと高速で床を掘る音が聞こえる。


 体がツラい。

 早く片付けてもう一度ベッドに横になりたいのに、と少しイライラしながら、


「もおー、まるいい加減にして! 掘らないで!」


 部屋に戻った私の目に飛び込んでくるのは、床の下地を必死こいて一心不乱に掘りまくっている愛犬の姿、再び。


「うわあ、やめてやめて」


 泣きそうな気持ちで、大慌てで犬の行動を止めに入る。ひび割れたコンクリートの下地がボロボロに崩れてしまっている。


「あーあ、下地まで崩れちゃってる。っていうか、あんた爪痛くないの?」


 愛犬まるのちっこいお手々にケガが無いか、心配して確認してみるが出血などはしていない。


 その割には下地の状態が酷いんだけど。何コレ、手抜き工事? ぼろ家にも程がある。


 ぐずぐずのひび割れ状態のコンクリート部分をちょっと押してみた途端、大して力なんて加えてないのにガラガラッと音を立ててあっさり崩れ落ちた。


「は? え?」


 床下に穴があいている。マジか……?


「え? この床下って空洞なの? こんな薄くて脆い床で大丈夫なの?」


 しかも、何コレ? 階段がある? 地下室?


 あまりの出来事に頭の中はクエスチョンマークだらけ。理解不能とフリーズしてしまってる間に、まるはさっさと階段を降りていってしまった。

 どこに続いているのか、何があるのかもわからない不気味な穴の中へと。


 躊躇している暇はない。私も慌てて追い掛ける。


 階段を降りた先は、薄暗くはあるが真っ暗ではなかった。何故かぼんやりと明るい理由は、階段下から真っ直ぐ反対の壁まで、床に埋まった非常灯のような光が続いていたから。

 多分、十メートル四方くらいのそこそこ広い空間。


 ずっとお散歩に連れて行けてなかったまるは大喜びで走り回ったり、壁の匂いを嗅いだりしていた。


 何も無いがらんどうの大部屋。

 唯一、奥の壁に扉が一つ。階段下から伸びる非常灯の突き当たりだ。


 あの扉を開けて、中を確認するべきなのだろうか……。






 おそるおそる近付き、把手に触れてみる。


 少し力を入れてみると、抵抗なく動く。どうやら鍵などはかかっておらず開けられそうだ。


 少しだけ開けて、向こう側の様子を探る。


 道路が真っ直ぐ一本。その先、突き当たりには建物が見える。


 その景色は、ちょっと良くわからない。だって、何故か外の風景に感じるから。頭がついていかずうまく認識されない。


 は?


 なんで道路? なんで建物? なんで地下室から外に出てるんだ!?


 私とうとう狂ったか。まだ夢を見てるのか。

 何もできず、ボーッと立ち竦んで固まる。一瞬の思考停止。


 その隙にまるは、するりと私の足元をすり抜けて飛び出していってしまった。


「わ、ちょ、待って!」


 私の制止などお構いなしに道路を走り抜けていくまる。思わず私も追い掛けて飛び出した。

 しかし、足の速さが違いすぎる。

 先に建物にたどり着いたまるは、自動ドアを開けて勝手に中に入っていってしまった。


「嘘でしょ。ううう、……し、仕方ない」


 ふらつく体で追い掛けた私も、少し遅れて建物に到着。おずおずと中へ入る。




「……ま、まる?」






お読みいただきありがとうございます。


まるを追いかけて行った先には……?


この後19時に更新します。

引き続きお楽しみください。

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