47 折り紙
本日も三話更新します。
1話目です。
あれから数週間。
私は犬のお屋敷に行ったり、草取りのお仕事をしたりしながらも、クッキーを焼き続けていた。
街中の孤児院は周囲に人通りもあるので、見に行くことは足が竦んでできないけど、郊外にあるあの孤児院には届けに行くのについていって、こっそり見させてもらったりもしていた。
小さい子たちは可愛かった。
無垢な笑顔で「おいしいね」「うれしいね」と言ってる様子を見ると、私も嬉しくなる。
でも、朝から畑の手伝いに出掛けている大きい子たちが帰ってくると、まだ震えてしまう。
ツラい境遇で頑張っている偉い子たちだとは思うんだけど、あのくらい大きい子たちになると竦んでしまう。
大声でガサツな男の子も、しっかりして大人びて見える女の子も、まだまだ小さい子どもたちなのに、目にすると震えて動けなくなってしまう。
やっぱり私に孤児院の子どもと遊ぶお仕事は無理そうだ。こうして物陰から見ていることすら難しいんだから。
「今日もちびちゃんたち喜んでましたねー」
そう言って、さりげなくちょう子さんが帰りを誘ってくれる。
大きい子たちが帰ってくると、私が強張るのに気が付いているみたい。
動けなくなってしまうけれど、あの親に捨てられても明るく強く生きている子どもたちの姿は、私にも元気を与えてくれていた。
近付くことすらできない私だけど、せめて毎週クッキーを焼いて笑顔にしてあげたい。
◇
翌週の奉仕品を届ける日。
私はもう一つ紙袋を持っていた。
こんなもので喜んでもらえるかわからないけど、袋の中には折り紙で作った鶴やお花、手裏剣、風車などなどが入っている。
「ちょう子さん、これをあの子たちに……」
おずおずと袋を差し出すと、中を確認したちょう子さんが黄色い声を上げた。
「わ! かわいい! キャー、これなんですか!? 紙で作った鳥にお花? このトゲトゲは?」
手裏剣や風車の遊び方なんかをレクチャーしながら、
「こんなの、喜んでくれますかね?」
と聞いてみると、
「絶対喜びますよー! こちらにはこんなおもちゃがあるんですね。お店で売ってるんですか? 私、初めて見ました」
楽しそうに風車を振り回している。
「あ、いえ。これは紙で作ったんです。作る作業自体が子どもの遊びというか。まあ、作ったものでも遊ぶんですけど」
「え? ななさんが作ったんですか?」
感動したようにちょう子さんが驚く。
「そんな大したものじゃないんです。作り方さえ覚えれば、小さい子でも作れますし」
思案顔で黙り込んだちょう子さんが、今度は真面目な顔をして言った。
「これの作り方を孤児院で教えてくれませんか? 小さい子でも作れるんですよね。大きい子たちのいない朝の時間に少しずつでいいんです。こんなにきれいな色の紙は用意できませんが、包装に使っているあの紙でも作れますかね?」
えええ!? 急にそんなこと言われても……!
「これが子どもたちで作れれば、良い手仕事になると思うんです。教会のバザーで売れば、資金繰りの足しになると思うんです。お願いします! あの子たちを助けると思って……」
そんな風に言われてしまったら断りにくい。私だってあの子たちに何かしてあげたい気持ちはあるのだし。
「……ホントに小さい子たちだけですね?」
ふうっと息を吐き出して、答える。
「………………頑張ります!」
◇
それから、朝の早い時間。
孤児院の五、六歳の子たちに折り紙を教えに通った。
鶴は特に難しいので時間がかかったけど、素直で一生懸命な子どもたちは二週間ほどで折り方をマスターした。
風車の持ち手、葦の筒を使ってクルクル回るようにする細工はシスターに教えて、後にシスターから大きい子たちに教えたようだ。
子どもたちだけで数種類の折り紙が作れるようになって、それらを作り溜めてバザーに出すことになったと聞いた。
あの頑張り屋の子どもたちが、少しでも生きやすくなってくれたならいいんだけど。成功するといいなぁ。
自分のことだけで精一杯で、周りは敵しかいないとばかりに、全てを否定していた私が。
自分以外の人間のために祈りたくなるという気持ちを知った。
お読みいただきありがとうございます。
これにて第四章終了です。
全方向閉じていたななが少しだけ外に目を向けられるようになりました。
ちゃんと伝えられたでしょうか。
次話から第五章が始まります。
12時に更新します。




