46 異世界の孤児院
本日3話目です。
「ここで待っていて下さいね」
私を門のところに残して、ちょう子さんは教会の中に入っていく。
寄る辺なくおどおどと門の陰に隠れて待つことしばし。シスターと思しき老年の女性とともにちょう子さんが出てきた。
シスターは私に気付き、ふんわりと優しい笑みを浮かべるとペコリと頭を下げる。私もカクカクとお辞儀を返した。
私の元まで戻ってきたちょう子さんは、
「さあ、こっそり覗いてみましょう?」
私の手を引き、シスターから数メートル後ろをついていく。
建物の裏へ回っていくと、そこは中庭になっていて、子どもたちが七、八人ほど遊んでいた。みんな小さい子ばかりだ。ちょっとホッとする。
シスターが子どもたちを呼び集めると、みんなきちんと一列に並び、一人一つずつ私の作ったクッキーの包みを受け取っていく。
くんくんと匂いを嗅いだだけで顔を綻ばせている。
「うわあ、いいにおい」
「シスター、あけてもいい?」
「ギルドの方にお恵みいただいたお菓子ですよ。神様とギルドの方、作ってくださった方にもお礼のお祈りをしてからいただきましょうね」
シスターの言葉にみんな小さなお手々を組んで、目を瞑り、辿々しいながらも祈りの言葉を口にしていた。
そうして、やっと開かれた包みの中のクッキーを見て、みんなの目がキラキラと輝いた。
思い思いに一枚を手に取り、口へ運ぶ。
サクッと一口囓ると目を見開き、ふにゃりと笑みがこぼれた。
「おいしーい!!」
みんな大喜びで夢中で食べている。
「みんな喜んでますね! そりゃそうです。自慢のクッキーですもん!」
ちょう子さんが我が事のように胸を張っている。その姿に私の緊張もほどけ、ふふっと笑ってしまった。
喜んでもらえて良かった。
「それじゃあ戻りましょうか」
ちょう子さんに促されて、またこっそりと転移室へと移動する。
戻る時に気が付いたのだが、孤児院や畑の反対方向には高い壁に囲まれた街があるようだ。
「あの壁の向こうが王都です。この孤児院の子たちはみなしごで、戸籍が無いので壁の中には住めないんです。十二歳になり、仕事に就いて自分で戸籍を持てるようになれば、街で暮らすこともできるようになるんですけどね」
壁の中……、王都内にある孤児院にいる子たちは、病気や事故などで親を亡くした、元々王都に戸籍のあった子どもたちなのだそうだ。
親が冒険者でクエスト中に命を落としてしまい残された子なども引き取ってもらっているので、ギルドで奉仕品を送ったりするのだそうだ。
でも、あそこにいる子たちは、親に捨てられたのか身元のわからない子ばかりらしい。あのシスターが善意で受け入れてくれてはいるものの、寄付も奉仕も少なく、経営はかなり苦しいらしいと教えてくれた。
その時、ガヤガヤと数人の子どもたちが教会の敷地へと入っていく。
「あーっ!! なんかいいもん食ってる! なんだそれ!」
「俺の分は!?」
ガサツな男子の大声に、私はビクッとしてしまう。
「ギルドの方が奉仕品を届けてくださったのよ。あなたたちの分も、もちろんちゃんとありますよ。手を洗ってらっしゃい」
「やったー!!」と叫び、小学生くらいの少年少女たちがバタバタと教会の中へ走り込んで行った。
「生活の足しにするために、七、八歳くらいから上の子たちは、朝早くから近くの畑に手伝いに行っているようです。そうして農家の方から分けてもらった野菜などで、なんとか暮らしているみたいですね」
かわいそうだとは思っても無尽蔵に寄付できる訳でもないので、せめて奉仕は街中の孤児院と変わりなく与えているのだそうだ。
壁の中に入れてもらえない、親に捨てられた子どもたち……、か。
お読みいただきありがとうございます。
孤児院の子どもたちに感じるものがあるななでした。
次話でこの章の最後の話になります。
明日も三話更新頑張ります。
なのでお昼更新分から新章に入ります。
引き続きお付き合いいただけたら嬉しいです。




