45 クッキーの納品
本日2話目です。
ラッピングをしたクッキーを手提げの紙袋に入れて、朝一でギルドへ向かう。
「おはようございます、ななさん。お、それはもしや……!?」
目敏く手荷物に関心を示すちょう子さん。
「はい。さっそくクッキー用意しました。二十包みですが」
「あ……、そうですよね。依頼品ですよね……」
あれれ、ちょっぴりがっかり? 自分への差し入れを期待してたか。
「あの、なんかすみません。ちょう子さんには、また何か作ってきますね」
「わわわ、いえいえそんな。いえ、でも、ありがとうございます! なんか催促したみたいですみませーん。ても、ぜひ! よろしくお願いします! てへへ」
ずいぶん甘味を気に入ってくれてるようで、そこは遠慮はしないらしい。素直ですごくよろしいと思います。うん、また差し入れしよう。
「それで、このクッキーなんですけど。一日二十包みだと少ないですか? 預かった材料の分を作ったら終わりって感じですか?」
二十包みくらいなら毎日でも無理なく作れること。一日がかりでガッツリ作るなら百包みくらい作れそうだと思う、など説明した上で、通常のお仕事とクッキー作りをどのくらいの配分でやっていけばいいのか相談してみる。
「そうですね。王都内には教会本部で運営している大きな孤児院が一つと、街の教会でこじんまりとやってる孤児院が四つあります。大きなところで三十人ほど、小さいところだと十人前後の子どもたちがいる感じだったと思います。
週に四、五回、二十包みを納品してもらうか、週に一回、百包みを納品してもらうのはどうでしょう。そうすれば、どの孤児院にも週一回のペースで奉仕品が届くようになります。今までは月一回の奉仕だったので、子どもたちも喜びます。
もちろん奉仕のペースが上がってるんですから、毎週じゃなくても十分ですよ。どうでしょう?」
週一万円、コンスタントに収入があるのはありがたい。それだけでも光熱費や税金の支払いに充てられる。とりあえず焦ってお金を用意しなければいけない状況からは抜け出せたので、他の時間に仕事を入れてもいいし、まるとのんびり過ごす時間を取っても良さそうだ。
「はい。できると思います。やらせて下さい。お仕事の方が大変な時は週に一回、一日かけて百包み作ることにします。普段は午前中お仕事して、午後はクッキーを作る感じで、毎日二十包み納品します」
この間のハム捕獲のような緊急依頼にも対応できるし、半日でもわんわんのところに行ったり、草取りのお仕事も行ける。
ちょう子さん用のお菓子を作る余裕も持てそうだ。
そう話すとちょう子さんは、うへへと目尻を下げて喜んだ。
「いやー、私のお菓子の心配まですみませーん」
「ふふふ、喜んでもらえて私も嬉しいんですよ」
「あ、それじゃあ、このクッキーを孤児院に届けに行くのもご一緒しませんか? 子どもたち、すっっっごく喜びますよ!」
え……、それは、でも……、怖い……。
「大丈夫ですって。遊んだりしなくていいですから。離れた場所から様子だけ覗いてみましょうよ」
さあさあ、と紙袋を抱えたちょう子さんは、まごつく私を引っ張って事務所の裏口へと進んで行く。
「あの……、でも……」
事務所の裏口を開けた先は、依頼の時に乗るエレベーターよりこじんまりとした箱のような部屋につながっており、ちょう子さんが何か仕掛けを操作すると、ブンッという音とともに青白い光に包まれた。
転移室と言うのだそうだ。座標転移のようなことができるらしい。
「さあさあ、行きましょう。ここの孤児院は郊外にあるので人混みに出ることもありませんし、入り口からそっと中を覗くだけですから大丈夫ですよ」
ドアを開けた先は長閑な風景だった。
畑や草っ原が広がっており、遠くにぽつぽつと小屋が建っている。
牧場のように木製の柵に囲まれた小さな教会が近くにあった。
「ここが、異世界の……孤児院……」
お読みいただきありがとうございます。
次回、異世界の孤児院を覗き見します。
続きは19時更新です。




