44 リスタート
本日三話更新頑張ります。
1話目です。
昨日作った各種クッキーを携えてギルドへ足を運ぶ。思った通り、ちょう子さんはとても喜んでくれた。
「どのクッキーもすっごーく美味しいです! ななさん天才!」
大げさな反応は恥ずかしいけど悪い気はしない。手放しで喜ばれて、誉められたことって今まであったかな?
本当に美味しそうに食べてくれるちょう子さんを見てると、頬が緩んでしまう。
「ななさん、今日はなんかスッキリした顔をしてますね。いいお休みでしたか?」
クッキーをムグムグしながら、ちょう子さんが微笑む。
「はい。昨日は午前中ちょっと戦ってきたので、午後はのんきに過ごしてみました。戦いの方も一区切りついたので、少し気持ちが軽いです」
「それは良かったですね! クッキーとお茶でお祝いしましょー! ……貰いものですけど」
てへっとお茶目に笑ったちょう子さんと、持ち込んだクッキーでお茶会をする。
今日のお茶はクセがなくて、甘い花の香りのするお茶だった。
「いい匂い……。ほっこりして元気が出る気がします」
「これは薬草茶ではないので薬効があるわけじゃないんですけど、この甘ーい香りが大好きなんです。『のんきでいること』を受け入れられるって、心に余裕ができてこそなんですよね。少しだけ余裕ができて、お茶の香りが楽しめるようになれば、心が温まって前向きな気持ちになれるんだと思います。
私もずっと切羽詰まっていたんで、このお茶を楽しめたのって久しぶりな気がします。ななさんと一緒にこのお茶を飲めて嬉しい。ここからリスタートですね。改めて、乾杯ー!」
頬を染めて、ちょっと照れたようにティーカップを掲げるちょう子さんに合わせて、私もカップを持ち上げる。
再出発……。
このギルドから、私の人生をもう一度始められるんだ。
簡素だけど、とても幸せな二人の祝賀会だった。
◇
午前中はそうやって、お茶とお菓子とおしゃべりを楽しんでのんびり過ごし、揃っていたクッキーの材料を受け取って帰ることにした。
材料は大量なので台車に載せられていて、そのまま台車ごと持ち帰らせてもらえた。
報酬は、クッキーを五枚ひと包みに紙で包んで、一つ一S。
材料も用意してもらっているのに、貰いすぎじゃないかと思ったけど、技術料としては安いくらいだということだった。
「孤児院への奉仕でもあるので、設定が安くてすみません」
謝られてしまったが、私としては問題ない。
二十包み作れば二G、二千円だもん。かかるのはオーブンの電気代くらいのものなので、十分な儲けになる。
「材料は業務用でたっぷり用意しました。もちろん一回分じゃありませんから。ななさんのペースで作っていただいて、焼き上がった分を都度納品して下さい。急ぎの品でもないですから、いつでもいいですよ」
ちょう子さんはそう言ってくれたけど、午後から早速始めることにした。
ナッツの入ったココアクッキー。プレーンクッキーにジャムをのせたもの。コーンフレークを混ぜたザックリしたクッキーにチョコチップクッキー。ココアとプレーンが市松模様になったアイスボックスクッキー。
五種類のクッキーを、それぞれ二十個ずつ天板に並べて焼けば、二十包み分のクッキーが焼き上がる。
焼き上がったクッキーは竹ザルに並べて冷まし、一緒に用意されていたわら半紙のような粗い紙で包んで紐で結べば完成だ。
五回焼いても時間にして三時間くらい。
これなら毎日でもできる。
なんだったら、午前中半日お仕事をして、午後はクッキー作りでもいいくらいだ。
どのくらいの量をどのくらいのペースで必要とされているのかわからないけど、必要ならもっと増やすことも可能だし、いつものお仕事や他のお仕事のスケジュールとも合わせて、ちょう子さんと相談してみよう。
今日もきちんと夕食を作って食べて、ゆっくりとお風呂に浸かって温まった。
人間が怖い私には、人間らしい生活なんてできないと諦めていたのに、なんだか無理なく普通に暮らしていけそうだ。
まだ、この幸せがずーっと続くと楽観的には思えないけど、せっかく貰った新しい生活の始まりだもの。
束の間でも、のんきを楽しもう。
お読みいただきありがとうございます。
匂いや味がするっていうのは当たり前のことではないと思います。大切なことです。
コロナの症状にも出る場合があるらしいですし。
続きは12時に更新します。




