表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
犬をなでるだけの簡単なお仕事です  作者: maochoko
第一章 犬に引かれて派遣登録
4/94

4 まるの仕事

さっそくブックマークしていただきありがとうございます。すごく嬉しい!


本日1話目です。

 


 運良く、誰にも見咎められず病院を抜け出せた。

 たまたま、自宅近くの救急病院に収容されていたおかげで、なんとか痛む体を引きずって家にたどり着いた。


「やっと、着いた……」


 ガラガラと昔風の引き戸のガラスの扉を開けて玄関の中へ入ると、


「うわんっ!、わん、わんっ!」


 まるが千切れそうな程シッポを振って、喜んで飛びついてくる。


「っぐう……」


 激し目のお出迎え。小型犬の衝撃でも傷に響く。

 それでも、「ただいま、かわいい、かわいい」と一頻りじゃれて、まずはまるにごはんをあげる。何日お留守番させてしまったんだろう。すごい勢いでガツガツとごはんを食べて、空になってしまっていた水皿に水を入れるとガブガブ飲んでいる。


「ごめんね。お留守番ありがとう」


 帰ってきた時に取ってきたポストに溜まっていた郵便物を確認すると、あちらこちらからの督促状ばかり。光熱費の支払いも滞っていて、電気ガス水道もそのうち止まるだろう。米とドッグフードの在庫が尽きたら、私もまるも餓死することになる。


 ――仕事しなくちゃ終わる。


 体が悪くて働けないなら、生活保護を受けることができるらしい。でも、そうすると犬は飼えない。

 まるを手放すなら、生きてる意味が無い。


「連絡先の電話が無いから、日雇いバイトや派遣の登録もできないもんなぁ……」


 八方ふさがりだ。ダメ、お腹痛い。頭も全然回らない。


「とりあえず、ちょっと休もう……」


 死への招待状のような郵便物を、居間のテーブルの上へ無造作に放り投げて、ベッドに潜り込むとすぐに眠りに落ちた。




 ◇




 ――夢を見ていた。




「ここ掘れ、ワンワン!」


 まるがしゃべってる。

 リズム良く、高速で床を掘ってる。


 ふふふ。

 大判小判がざっくざくならいいのにね。


 そういえば倒れる前にもやってたなあ、なんて夢の中なのに考えていた。



 カリカリカリカリカリカリカリカリ…………!!



 物音がだんだんはっきりしてきて夢から覚める。


 ガバッっと起きると、やはり現実でまるが床を掘ってる音が続いている。


「いてて……」


 急に起き上がったことでさらに痛むお腹をかばいながらベッドから抜け出し、家の中を確認すると、どうやら音は居間の方から聞こえてくる。


 まるの姿は見えないけど、絶対ここだ。


 なんか白い粉……砂のようなものが床のあちこちに落ちている。


「なんだコレ……?」


 台所から雑巾を持ってきて拭きながらも、正体不明の砂の出所を探していくと、テレビ周りにやけに多い。


 わかります……。

 物音はここから聞こえてきてるから。


「…………はあ」


 テレビを移動して、裏側からまだ続いているカリカリ音の現場を見る。


「ストレス……溜まってるよねぇ……」





 ――彼は仕事をやり遂げていた。






お読みいただきありがとうございます。


やっと物語が動き出します。


本日も3話投稿します。


この後12時と19時のお話も引き続きお楽しみください。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ