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犬をなでるだけの簡単なお仕事です  作者: maochoko
第三章 新しいお仕事と異世界ギルド
32/94

32 異世界ギルド


ちょっとだけいつもより長いです。

説明回ですみません。


本日2話目です。





 汝、

 過去の非道なる行いを戒めと為べし

 努々異世界人に頼りきることなく

 世界の安寧を求め各々邁進為べし


      ――異世界ギルド心戒律訓抜粋






 自分たちの手で世界を守り生きていくことを基本とした上で、何かほんの少し手を貸してもらったり、ほんの少し関わってもらうことが出来たなら。


 それらの行為が世界への刺激となり、また少しずつでも成長へ繋げることができるかもしれない。




 そんな理念の元、長い長い時間をかけて、歴代の多くの高位な魔法学者や研究者たちが、その叡智を積み重ね、やっとの思いで生み出したシステム。


 それがこの異世界ギルドであり、初成功例となる()()は、過去の召喚者たちの資料を読み解いた上で、比較的異世界に柔軟に対応できた者の多い日本に開かれたのだそうだ。


 ここで日雇いの形式で日本人を募り、バイトとして異世界に少しだけ関わってもらうことでの成長刺激を期待して。


 関わってもらう日本人には、決して無理を押し付けるのではなく、確実に安全に日本に戻れる設備を用意して。




 しかし、異世界と日本を繋ぐギルドの設置には成功したはずなのに、待てど暮らせど登録者は現れず、このままではこのシステムを作り上げた研究者たちの苦労が無駄になってしまうと途方に暮れていた。


 ちなみに、ちょう子さんは本当はチョコラという名前で、ご先祖様に召喚者のいる家系の出なのだそうだ。

 その中でも特に日本人と波長の合う魔力、端的に言ってしまえば、ご先祖様の故郷である日本とちょう子さんの国クルールとを引き寄せる力を持っていた。


 このギルドの設置にも要と言えるほどの役割を果たしていた。


 ちょう子さんがここのギルド長に抜てきされたのも(なんとギルド長だった!)、ちょう子さんの引き寄せる力に異世界に興味を持ち関わろうとしてくれる日本人、もしくはここを必要としている人が呼び寄せられて、訪れてくれるだろうとの思惑あってのものなのだそうだ。


 それなのに、このギルドには閑古鳥が鳴いていた。


 ちょう子さんの波長にすら引き寄せられないのなら、このギルドというシステム自体が破綻してしまう。


 それでも、無理矢理勧誘することは理念に反する行いだ。


 誰も訪れる者のいないギルドで一人っきりで、ちょう子さんはただひたすら待ち続けるしかなかった。




 持て余した時間を使って日本の常識とのすり合わせを学び、できるだけ違和感無く働けるようにと経営や勤務形態、税金などの知識も身に付けて。

 いつ登録者が来ても、日本に沿った形で働けるように準備を重ねた。


 それでも、どれだけ働きやすいように環境を整えても、一人としてギルドを訪れる者は無く。

 半ば諦めかけていたその時、現れたのだ。


 ――ここを必要とする日本人、私が。




「あの時……、どうせ誰も来ないからと灯りも点けずに暗いギルドで一人項垂れていた私の元に、ななさん、あなたが現れました。

 ななさんに出会えて、助けられたのは、わ、私の方です。……ありがとう、ななさん」


 ちょう子さんの瞳から大粒の涙が溢れ出し、頬を伝う。


「わ、私だって……。誰とも関われず、一人で、怖くて、苦しくて。……ちょう子さんと出会えて良かったぁぁ」


 二人して泣きじゃくりながら一頻り抱き合った。



 ◇



 泣き止んで、少し落ち着きを取り戻したら、ふと頭に浮かぶ。


「そう言えば、ここの入り口を掘り返して見つけてくれたのも、私をここへ連れてきてくれたのもまるなんです。帰ったらまるをいっぱい褒めてあげなきゃ」


「……ああ、そうでした。真っ青になりながらまるちゃんを追い掛けて、ここに来てくれたんでしたね」


 懐かしそうに思い出していたちょう子さんがビクリと反応した。


「……そうか。入り口が塞がっててきちんと開いてなかったんですね。じゃあ、入り口が開いた今は……、もっと登録者の方が増えるかもしれませんね!」


「あ……」


 どうしよう。言いづらい。

 でも、言わなきゃだよね……。


「あの、ちょう子さん。あ、チョコラさんでしたね」


「呼びやすい方でいいですよ。私もちょう子って呼ばれるの慣れちゃいましたし」


 ふふふっと笑顔のちょう子さんを見ると、ますます言いづらいけど。


「じゃあ、ちょう子さん。実はですね。入り口なんですけど、……私の家の地下室に繋がってます。五十年か百年か前に私の先祖が建てた家なのですが、地下室があること自体知りませんでした。まるが家の床を壊してしまって、階段が見つかって、その下に地下室があって。地下室の扉を開けた先にここに繋がる道がありました。

 自宅の中なので……、他の方は入ってきません」



 ………………。



「その階段が入り口なんです。けど……。そうですか。ご自宅の下に。

 ハハハ、ソレハダレモコレマセンネエ」


 ちょう子さんの笑い声が乾いたものに変わり、がっくりと項垂れた。





お読みいただきありがとうございます。


ちょう子さん一人で頑張りました!

そんなちょう子さんに皆様の愛の手を。


続きは19時に更新します。

引き続きお楽しみ下さい。



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