3 生きる意味
本日、3話目です。
引き続きモノローグとなります。
こんなにツラい思いをしてまで、形だけの高卒にこだわって何になるのか疑問だったけど、それでも母の唯一の望みを叶えてあげるために、なんとかこらえて高校を三年で卒業できるだけの単位を取った。
通信制は四年で卒業することができるようにカリキュラムが組まれているけど、前倒しでどんどん単位を取れれば三年で卒業もできる。
私にはもう一年学費を払う余裕なんて無いので、無理してでも頑張った。
私が十八歳の三月。
やっと高校を卒業し、母も嬉しそうだった。
「ああ、やっと肩の荷が下りた。南那ちゃんもこれで生きていけるよね。これからは自分のやりたいように自由に生きていいよ」
そう言った母は次の日いなくなっていた。
弱った自分が私の足かせにならないように出ていったのだろうか?
私を育てることに疲れ果てて逃げ出したのだろうか?
母の真意はわからない。
でも、私の心を占めたのは、この思いだけだった。
「見放された」
私にはもうまるしかいない。
全ての人間を信じられず、たった一人で。
毎日、死にたいと考えていた。ううん、本当は死にたいんじゃない。幸せに生きられるなら生きていたいんだ。
でも、生きることはツラいだけだった。
それでも、私はたった一人の家族のまるを見放すことはできない。
私の親のように見捨てるなんてしたくない。
だから、まるには幸せに天寿を全うして欲しい。
まるが死ぬまでは、私は死ねない。
その思いだけで生を繋いだ。
まるはごはんを食べれば幸せ。お散歩すれば幸せ。かわいい、かわいいと愛情を受けて、甘えて、遊んで、寝て。
この世を、生を憂うことなんてしない。
そんなまるの体温のあたたかさが、寄り添うぬくもりが。裏表のない真っ直ぐな愛情と信頼だけが、私の生きる意味だった。
けれど、私の心と体も、もうとっくに限界だったんだろう。
生きるために家とバイトの往復を繰り返して数カ月。とうとう私は倒れ、寝込んだ。
誰からも連絡なんて無いので、高い家の電話はとっくに解約していた。
誰も連絡する相手などいないので、私はスマホも持っていなかった。
バイト先に連絡も取れず、私は一週間寝込んで、再び出勤した時には針のむしろだった。
無断欠勤した自分が悪いのはわかっている。クビにされていないだけマシだ。でも、私にはその職場に居続けられる精神力は残っていなかった。
結局、退職してしまった。
学費がかからなくなっていた分、少しは貯蓄があった。ほんの少しだけど。
これで食いつないで次の仕事を見つけなければ、と最初は思っていた。でも、残高はどんどん減っていくのに、私の心と体はどんどん弱っていって。仕事を見つけることなどできなかった。
まるは一日中私が一緒にいるので嬉しそうだったけど。
お読みいただきありがとうございます。
明日から本編始まる感じです。
後ろ向き主人公ですが、少しずつ頑張って生きていきますので、応援よろしくお願いします。
明日も3話投稿したいと思ってます。




