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犬をなでるだけの簡単なお仕事です  作者: maochoko
第二章 犬をなでるだけの簡単なお仕事
23/94

23 頑張らなくちゃ


本日1話目です。





 久しぶりに一日ゆっくり休みをとった私は、足取りも軽く事務所を訪れた。


「おはようございます。ななさん、昨日はゆっくり休めましたか?」


「はい、ありがとうございました。今日からまたお仕事頑張ります!」


「顔色もずいぶん良くなりましたね。今日もわんちゃんのところをお願いして大丈夫ですか?」


「もちろんです。お願いします!」


 私が元気よく答えると、ちょう子さんは「ふふふっ、ですよねー」と含み笑いしている。


 私の顔に疑問符が浮かんでいるのに気が付くと、


「依頼者様のお宅のメイドさんから、何件もメールが入ってましてね。大変な大型犬の相手をさせてしまったので、もう来てくれないんじゃないか。嫌になってしまったんじゃないかって引っ切りなしに。ただのお休みの日だって伝えたんですけど、心配してらっしゃいましたから。元気な顔を見せて安心させてあげて下さい」


 先方は私のことをとても気に入ってくれているようだと教えられ、少し顔が熱くなる。私のような人間でも、少しはお役に立てているなら嬉しい限りだ。


「そういう訳で今日はぜひともお願いしますけれど、前にもお話したように、あまり一つのところにどっぷりとはまってしまうのはお勧めしません。ななさんそろそろ他の依頼も受けてみてはいかがですか?」


 いきなり……ではないけど、新しいお仕事。私にはハードル高そう。どうしよう……。


「あ、あ、あの……。体調もずいぶん良いので、ほ、他の仕事も考えてはみたいん、ですけど。

 ……わ、私、人間が苦手で。その、甘えていて……すみません」


 最後の方は消え入りそうな声しか出なかった。私は厳しいことを言われるだろうと身構えてガチガチになってたから。


「ちゃんとご希望に沿うようなお仕事を見つけてみせますよ! それが私の仕事です。遠慮しないで何でも相談して下さい。大丈夫ですよ」


 いつもの明るい笑顔で優しく答えてくれた。じーんときてしまった。


 ちょう子さんは特別話しやすいし、メイドさんとも慣れてきたけど、私は人が怖い。


 でも、それは甘えで、人ができる当たり前のことができない弱い自分はダメな人間だと思っていた。


 だから、ちょう子さんの言葉は、そんなダメな私でも受け入れてくれてる気がして、涙が溢れそうになった。


「何も心配いりませんよ。何しろ今は仕事選び放題です。私の腕の見せ所ですよ。任せて下さい!」


 元気に胸を張るちょう子さんが、頼もしくて、嬉しくて、こっそり涙をポロリと零した。

 ぐっと拭うと私も笑顔を作る。

 胸の奥から力が湧いてくる気がする。


「頼みます! 私も頑張ってみます!」






 とりあえず、新しいお仕事は探しておくので今日はいつものところに……と、ゲートをくぐる。


 エレベーターの中、自分に言い聞かせる。このお仕事だって最初は不安でいっぱいだった。でも、ちょう子さんが選んでくれたお仕事は、本当に私にぴったり填まって。おかげで今日もこうして生きていけてる。


 きっと次もなんとかなる。

 ちょう子さんを信じよう。




 あちらに着くと、いつものメイドさんはいつもと違ってオロオロしていて、思わず言葉が飛び出た。


「私、このお仕事大好きです! 毎日は来れないですが、末永くお願いします」


「ななさんが来てくれて良かったです。こちらこそよろしくお願いします」


 ペコリと綺麗なお辞儀をしてくれて、上げた顔はすごく嬉しそうで、目尻にはキラリと光るものが。


 また、ぐっときてしまった。




 こんな風に思ってくれる人もいる。

 これからも頑張らなくちゃ。







お読みいただきありがとうございます。


メイドさんがデレました。


続きは19時に更新します。

引き続きお楽しみ下さい。



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