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犬をなでるだけの簡単なお仕事です  作者: maochoko
第二章 犬をなでるだけの簡単なお仕事
16/94

16 覚悟を決めよう


本日3話目です。


 



 図太くも、いただいたお茶を飲みながら頭の中を整理する。


 何故か我が家には地下室が隠されていた。

 地下室の外は、知らない土地に繋がっている。


 あり得ないけど、現実らしい。

 私が狂ってないのなら。


 何が起こっているのか、いくら考えても一向に答えなんか出ない。

 でも、一つだけわかることがある。


 全てを受け入れてあそこに行けば仕事がある。

 このまま何もしないなら、まるを餓死させるか凍死させるかだ。


 自分なんかいつ死んでもいいってずっと思っていたけど、遅くとも来月にはデッドラインが来るってなると、ひと月だけくらいなら、少しだけ生き足掻いてみようという気持ちにもなる。


 まるが苦しい思いをするくらいなら、訳のわからない世界を受け入れる方が絶対いい。




 ――覚悟を決めよう。




 ◇




 地下室の扉の前で気合を入れ直した私は、


「まる、行ってくるよ。少しだけお留守番お願いね」


 と不思議な世界に足を踏み出した。


 体調は何故か悪くない。

 お金が手に入るかもしれないという希望が、体に活力を与えているのかもしれない。


 それでも、一歩一歩近付く度に、期待の中に少しの不安が芽生えてくる。


 あの自動ドアの向こうに、今日もちょう子さんは居てくれるのかと。


 あれほど夢だと思いたがっていたくせに、「夢だったらどうしよう」という矛盾した思いに震えていた。


 もう一度、一つの深呼吸とともに、勇気を奮い立たせてドアの前へ。

 ウィーンと小さく音を立ててドアが開く。


 前へ。進め。足。


「ななさん! 来てくれたんですね。ありがとうございます!」


 はしゃぐように明るいちょう子さんの声が室内に響く。

 気が抜けたようにカクンと膝から力が抜けて、その勢いで転がるように事務所の中へと入った。


「ああ! 大丈夫ですか? まだ体調が? 座って、座って」


 慌てながらカウンターからちょう子さんが駆け出してくる。


「いえ……、いえ、体調は大丈夫です。ちょっと緊張して足が縺れただけです」


 てへへと苦笑いして誤魔化すと、ホッとした顔をして微笑んでくれた。


「それなら良かったです。今日もお仕事の受注でいいですか? 一日経ってみての感想などもお聞きしたいですし、少し掛けてお話しましょう」


 エントランスの一角に、パーティションで仕切られたテーブルと二つの椅子が置かれた面談ブースが作られていた。


 そこに腰掛けるとちょう子さんがお茶を出してくれる。


「早速ですが、どうですか? 一日経ってみて、続けられそうですか?」


「はい。昨日のお仕事内容でしたら、無理せず続けられそうです」


「紹介して良かったです。ななさんにぴったりだと思ったんですよ。本日も同じお仕事で受注していただけますか? 時間的には午前中、または午後だけの半日や、お昼を挟んで夕方まで一日という受け方もできますが、どのような働き方を希望されますか?」


 私はちょう子さんから、ここでの働き方のシステムを教えてもらうことにした。





お読みいただきありがとうございます。


ななは頑張ってみるようです。

そりゃそうだ、こんないい仕事手放すな! と感じた方は応援お願いします。


明日からはまた2話更新の予定です。


引き続きお楽しみいただけましたら嬉しいです。



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